《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》のおもむくままに

し落ち著け、お前ら」

和泉達は西島進一のマンションを管轄する、広島北署の一角に待機していた。

「指示があるまではじっとしていろ」

そう言われても、苛立ちと不安は隠し切れない。

それは和泉だけではない。

駿河も同様、めずらしく落ち著かなそうに部屋の中をウロウロと歩き回っている。

「じゃあ、友永さんは人質になったのが智哉君だったら、そんなに冷靜でいられるんですか?!」

和泉は思わずのおもむくまま、大きな聲を出してしまった。

「……すみません」

友永はいつもと変わらない様子で答える。

「謝ることはない。もし人質が智哉なら、今のお前と俺の臺詞はれ換わってた」

日頃は自分と同じく、どこまで本気なのかイマイチつかめないでいる、元年課の刑事は真剣な顔でそう言った。

「ただ、焦るな。俺達に今できるのは、班長からの指示を待つ、それだけだ」

わかっている。

自分の考え、のままにくことがどれほど危険か理解している。

それでも平靜でなどいられない。

「……それより、家族の方は?」

「先ほど、北署に到著したらしいです。今、うさこちゃんが……」

咲の元に連絡が行き、彼がすぐに出かけたらしいことは和泉も聞いている。

今、どんな気持ちでいるだろう?

そう考えたら気が気ではなかった。

「おい、葵。間違ってもお前は出ていくなよ……?」

友永は相棒にそう警告した。

恐らくだが彼の夫も一緒に來ているだろう。

まさか、弟の命の危機に知らんぷりをして仕事をしていたりはすまい。

友永の言うことはいちいちもっともだ。

今、自分以上に駿河は冷靜さを欠いているはずである。

彼は一瞬弾かれたような反応を見せたが、すぐに何ごともなかったかのようにいつもの無表へと変化した。

「上はいったい、どういう遣り取りをしてるんだろうな……?」

日下部がぽつりと言った。

は大きいくせに小心な刑事だが、実はいざという時、誰よりもどっしりと構えていられて、冷靜であることを和泉は知っている。

実は刑事よりも自衛隊か消防の方が向いていたんじゃないか、なんて時々かに思ってしまうけれど、決して口には出すまい。彼も今は大切な仲間の1人なのだから。

「期待だけは、してはダメです」

和泉がそう言い放つと、全員がぎょっとした顔を見せた。

構わず続ける。

「僕達が信じていいのは聡さん……高岡聡介警部、ただ一人です」

幹部達など信じてはいけない。

父ならきっと間違いなく、正しい判斷を下してくれる。

その時、扉が開いた。

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