《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》泣かないで

よく似た顔立ちの姉弟だな、と結は思った。

人質に取られた藤江周の姉だというは、藤江咲と名乗った。

しかし今は顔からすっかりの気を失い、青白くなってしまっている。

に寄り添っている金髪の白人は確か、詐欺師の元フィアンセだったっけ。二人は友達同士らしい。

それから周の兄で、咲の夫。藤江賢司と名乗った。

端整な顔立ちと、どこか謎めいた雰囲気が、和泉を思い出させる。

今、結は被害者家族に狀況を説明するため、応接室にいた。とは言っても、たいした報はまだっていない。

咲に関しては今にも倒れてしまうのではないか、そんな不安があった。

刑事さん、と結に話しかけてきたのは、藤江賢司である。

「いったいどうして、何があったんですか? ……進一君はいったい……」

どこまで話していいのか。

が悩んでいると、

「あなたの方がよく知っているんじゃないの?」

突然、咲がそう言い出した。

「……どういう意味だ?」

妻の言葉に、夫は怪訝そうに問い返す。

「初めから、こうなることがわかっていて、それで周君の家庭教師だって、あの人を連れて來たんでしょう?!」

驚いた。

それは結だけではなかったようで、ビアンカと呼ばれていた白人も驚きの表をしている。

「バカなことを言わないでくれ」

賢司はあくまで冷靜に返す。しかし、

「そうに違いないわ!! ねぇ、周君を返して!! 私の弟なの、この世でたった一人の家族なのよ!? これ以上、私に、私達にどうしろっていうのよ!!」

咲は賢司に向かってそうんだ。

彼の上著の襟を摑んで、引きちぎらんばかりの勢いであった。

咲、落ち著いて!!」

「お姉さん!!」

細い肩だ。それでも渾の力を込めなければ、彼を抑えることができなかった。

それから結はちらり、と藤江賢司を見た。

彼はひどく困している。

訳がわからない、そんな表である。

反応がないことに虛しさを覚えたのか、彼は夫から手を離し、そうしてぺたんと床に座り込んでしまう。

弟の名前を呼びながら、両手で顔を覆う。

は聲を押し殺して泣き出してしまった。

咲、とビアンカは彼の肩を抱き、彼もまた青い瞳に涙を溜めた。

は努めて冷靜さを裝い、賢司に問いかける。

「……西島進一とお知り合いなんですか?」

彼はし驚いた表でこちらを向く。

「ええ。家同士の流があって。けど……最近の彼のことはほとんど何も知りません。先月、久しぶりに彼の方から連絡があって、アルバイトを探していると言われたものですから。弟の勉強を見てやってしいとお願いした次第です。それだけですよ」

噓をついているようには見えない。

仮に噓をついたところで、彼にメリットはないだろう。

「彼は真実を言っているわ。咲、お願いだから落ち著いて」

ビアンカの言葉に結は驚いた。

どうして彼が真実を言っている、と言い切れるのだろう?

「何とか、私も進一を説得してみるから」

ああ、そうだ。彼も西島進一の知り合いだった。

すると。

人質の姉はものすごい形相で友人を見た。綺麗な顔をしているだけに迫力がある。そんなことを言っている場合ではないのだが。

「どうしてこんなことになったの? あなたのせいなの? 犯人と知り合いなのよね?!」

「そう、私のせいよ。私が、隠していたから……」

苦しそうにビアンカは答える。

「周君を返して! お願い!!」

悲痛なびが部屋中に広がる。

は思わず、耳を塞いでしまいたかった。

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