《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》そして騎士様はお姫様の救出に向かう

「どうして?! なんで私ばかり、こんな辛い思いをしなければいけないの?! 誰か助けて、周君……!!」

「わかったわ、命に替えてもあなたの弟は取り返すから」

落ち著いた聲でビアンカは言った。

「ど、どうするつもりですか?!」

驚きに、こっちの方が聲を上らせてしまう。

「私が人質になるよう、渉します。刑事さん、現場に連れて行ってください」

本気だ。

伊達や酔狂、思いつきなどではない。

どうしよう? 自分の判斷で勝手にく訳にはいかない。

「ビアンカ……! 私も、私も一緒に行く!!」

咲がぶ。

「ダメですよ、そんな!!」

思わず結んだ。

すると、

「わかった、僕も一緒に行こう」今度は賢司がそう言いだした。

「な、何言ってるんですか!? ご主人!!」

彼はこちらを見つめてきた。

冷たい目だった。

「失禮ですが私は警察を、警察を一切信用していません。弟は必ず助ける、などという口約束など信じられない。この場でじっと救いを待つような真似はしません……そうであれば、自分で現場に出向いて、進一君を説得するなり……自分にできることをします」

その時だった。

応接室のドアが開き、アサルトスーツにを包んだ和泉がってきた。

「和泉さん……!!」

その格好は? と訊きかけて、結は口をつぐんだ。

彼が真っ直ぐに視線を向けている先は、どうやら藤江賢司のようだ。

「あなたが我々を信頼しようがしまいが、そんなことは関係ありません。我々は全力で周君を助け出す。もっとも、危険のない場所に近づくぐらいは止めませんがね……くれぐれも邪魔だけはしないでください。我々は非常時における適切な対応方法を知っている、訓練をけたプロなんです」

「……」

「和泉さん!! 周君を、周君を助けて!!」

咲は彼に駆け寄り、そうびながら縋りつく。

「もちろんです。必ず……助けると約束します」

和泉はそう答え、彼の肩にれる。

その眼差しはとても優しかった。

しかし、

「藤江賢司さん。大人しくしておいてください。下手な真似をすると、今度はあなたが公務執行妨害で逮捕されますよ?」

の夫に対して向けた臺詞はとても冷たく、どこか皮にも聞こえた。

そんな結の頭の中を知ってか知らずか和泉は、

「うさこちゃん、三村亜沙子の方を頼むよ」

「は、はい!」

そうだった。彼からも『事』を聞かなければ。

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