《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》ネゴシエーション

ビアンカは首を橫に振る。

「ダメです。応答してくれません……それに」

「それに?」

「ちゃんと番號を見ていないようです。先ほども警察からの電話だと思ったようで、すぐに切られてしまいました」

現場マンションのすぐ傍にある道路。

既に何臺ものパトカーが集まっている。野次馬も集まり始めた。今のところ報道規制は敷かれているようだ。

しかし、それらが破られるのも時間の問題だろう。

聡介は焦りと不安をどうにかして抑えつつ、人質となっている周の家族である咲と賢司、そして犯人の友人であるビアンカと一緒に車の中で待機していた。

なんとか西島進一を説得するため、聡介はビアンカに電話をかけてもらうよう頼んだ。

人質立てこもり事件の際、犯人はたいてい興している。まずは落ち著かせるため説得役が必要となる。

警察の中には訓練をけた渉人がいる。しかし、今はまず友人であるビアンカが説得することが一番だと、特殊捜査班隊長の判斷であった。

は即座に応じてくれた。

ビアンカは電話をかけながらも、片手でしっかりと咲の手を握っていた。

すっかりの気を失い、青ざめている咲は、まるですべてのを失っているようだ。

それにしてもし驚いたのが、藤江賢司の存在だ。

彼はやや苛立った様子で妻と、その友人の様子を無言のまま見守っている。

そう言えば彼は西島進一とは顔見知り……。

聡介は何か、そのことに恣意的な意味があるのかと一瞬だけ考えた。

「高岡さん」

賢司が聲をかけてきた。

「なぜ、こんなことになったのか説明していいただけますね? 私には……我々にはそれを知る権利がある、そうでしょう?」

今はそんなことを言っている場合か?!

自分の息子なら迷いなく、そう怒鳴りつけているところだ。

「……必ず、ご説明します……」

どうにか絞り出すようにして聡介が答えると、彼は満足したようだった。

「周君……周君は?」

咲が呟く。

「しっかりして、咲!」

「あま……周君が……」

咲!!」

耳の無線機を通して、和泉の聲が流れ込んでくる。

『聡さん』

いつもと変わらない冷靜な聲に、ふっと気が緩んでしまう。

ダメだ。

聡介はわざと、低く重い聲で応答した。

「彰彥か、そっちの様子はどうだ?」

『……咲さんの様子は?』

「……良くはない」

他に表現のしようがなかった。

弟に萬が一のことがあれば、何をし出すかわからない。

そんな危険をはらんだ不安定な狀況である。

『こちらは準備完了です』

そうか、と聡介は答えたが、今度は別の心配が頭をもたげてくるのを覚えた。

『彼に何度でも繰り返し伝えてください。周君は必ず助ける、と』

「わかった……彰彥」

『なんです?』

「お前も、無事に帰ってこい」

唐突に無線機の通信が切れた。

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