《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》解放されました

「私は可奈子が亡くなった後も留學期間を全うして……それから帰國しました。でもあのことがあってから、私と進一君の間には連帯が生まれました。書の通りにすべきか否かで2人で何度も話し合いました。いいえ、彼の気持ちは既に固まっていたんです」

西島進一が逮捕されたという報せが結の元にった。

人質は無事とのことだ。

ホッとしたら力が抜けたが、まだ仕事は殘っている。

そのことを聞いた三村亜沙子は安心した表を見せた。

「アレックスを殺す、と彼はそう決めていました。でも私は……彼に罪を犯させるぐらいならいっそ、私がこの手で……」

「それから……?」

「帰國してから私は、名古屋シティフィル楽団にりました。そこにいればもしかしたらアレックスと再び會えるかもしれないと思ったからです」

どういうことだろう?

「お話し、していませんでしたっけ? アレックスの元フィアンセ、ビアンカのお父様は名古屋フィルのスポンサーなんです。彼が時々父親と一緒に、練習やリハーサルを見に來ていることを私も知っていて、彼のつてで、もしかしたらアレックスもやってくるのではないか。その読みは當たっていました」

その話は確か、結も聞いている。

に寄り添って青い顔をしているピアニストから。

「アレックスは私のことを覚えていました。ドイツにいた時からそうでしたが、相変わらずしつこく言い寄られて……私はいいチャンスだと思いました。彼の寢首をかいてやるもりで、いに乗ったフリをしました」

ゾッとした。

亜沙子の話は続く。

「當時、彼は既に何人もの日本人と関係して事実上の詐欺を働いていました。可奈子のことで、どうやったらからお金を引き出すことができるのか學習していたようです。そして私は……どのタイミングで殺害を実行するか……図っていました」

つまり彼は意図的にアレックスに近づき、そうして金銭を支払ったのだ。

騙されたフリをしていた。

はふと、宏樹さんと呼ばれていたピアニストの顔が優れないことに気付いた。

「あの、もしご気分が悪いのなら……醫務室もありますから」

大丈夫です、と彼は答える。

宏樹さん、と亜沙子は聲をかけた。

「私はね……あなたが思うようなじゃないの。すごく汚れてるのよ。そう、目的のためなら手段を選ばない……」

※※※※※※※※※

涙が止まらなかった。

弟の無事な姿を見た瞬間、咲は他のことなど何も考えられなかった。

ぺたん、と腰を抜かして地面に座り込んでしまう。

「姉さん、心配かけてごめん」

いつもと変わらない聲を聞いたら、張り詰めていたものがすっかり緩んだ。

「周君……あまねくん……っ!!」

ごめんな、と彼は何度も口にする。

それから手を差しべて、立ち上がらせてくれた。

咲は首を橫に振った。

良かった、生きている。

咲はひたすら周に縋りついて、涙を流した。

抱き返してくれる腕はこんなにも溫かい。

弟が無事だった。

それだけでいい。

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