《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》これから取調べです。

とりあえず、お禮は言います。

と、藤江賢司はいかにも言いそうなことを口にした。

「別にいりません。稅金分、働いただけですから」

次に彼が言うであろう臺詞を予測し、先回りして和泉はそう答えておいた。

ひどく暑い。

いますぐこのアサルトスーツをいでしまいたい。

「それよりも、お仕事はいいんですか?」

和泉がそう聲をかけると、彼は顔をしかめた。

「私も弟の危機に……仕事をしているほど非ではありませんのでね。あなた方刑事さんは、そうではないのかもしれませんが」

いちいち神経にることを言う。

和泉はいらだったが、この男とやりとりをするのもたいがい面倒なので、とっとと背を向けてしまった。

彰彥、と向こうから父が呼びかけてくる。

ものすごく嬉しそうだ。それは犯人を逮捕できた喜びというより、和泉の無事な姿を見て安心した様子に見えた。

正直言って、どんな顔をしていいのかわからない。

和泉は普段こそあんな調子だが、実を言うと先ほどのような、命のやりとりがかかるような場面で真面目に心配されると、し調子が狂ってしまうのである。

「聡さん、西島進一は確保できたんでしょう? 急ぎましょう。奴からは聞きたいことが山のようにあります」

早く、と急かしても無駄だった。

「よくやってくれた! 全員無事で……何よりだ」

「……はい」

「おい、手柄を挙げた褒に何でも好きなもの、食わせてやるからな」

背中にれる父の手が溫かい。

生きているんだな、と和泉は改めてじた。

向かい合って座った西島進一は、どこか放心したような顔をしていた。

いわば抜け殻のような。

小さな窓が一つだけある、取調室と言う名の四角い部屋。

最初に住所と氏名、職業などの個人報を確認する。しかし進一は黙って頷くだけで、言葉を発することはほとんどなかった。

聡介はじっと彼の目を見つめた。

綺麗なをしている。犯罪者の瞳は濁っている、と思う人が多いかもしれないが、実際のところそれはただ単に健康上の話である。どんな極悪犯でも、が健康なら瞳は澄んでいるものだ。

むしろ瞳にあらわれるのは心の側。

目は口ほどに語る、というが、それは真実だと聡介も思う。

今の西島進一は人生を賭けた一大プロジェクトが失敗に終わって放心している、そんな目をしていた。

「アレックス・ディックハウトを殺害しましたね?」

「……」

「なぜですか?」

「……それが、可奈子の志だからです」

書か何か、のこっていたんですか?」

「そうです」

「可奈子さんについて、詳しくお話してください……」

    人が読んでいる<ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~美人ヴァイオリニストの橫顔、その陰翳が隠す衝撃の真実>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください