《【書籍化・コミカライズ】竜神様に見初められまして~げられ令嬢は霊王國にて三食もふもふ溺付きの生活を送り幸せになる~》第5話 パーティ
本日は朝7時に更新しております。
まだ未読の方はそちらからお読みください。
パーティ當日。
領地から馬車を乗り継いで、ソフィアは王都までやってきた。
會場は王都の中でも一際存在を放つ王城の、一番広くて煌びやかなホール。
フェルミ王國の重鎮たちはもちろん、各國の要人たちも多く參加しており凄い活気であった。
そんな中ひとり、場の雰囲気に似つかわしくないテンションのソフィア。
「……はあ」
大きなため息がれるのも無理はなかった。
「ねえ、見てよエドモンド家の令嬢」
「ソフィア様でしょう? あの魔力ゼロの」
「そうそう! 無能のくせに衆前の前に顔を出せるなんて、恥ずかしくないのかしら」
「ドレスも地味だし、ほんと、何しにきたってじ」
歩くたびに、他の令嬢たちからそんな言葉が耳にってくる。
わざと聞こえるような聲で言っているのは明白だった。
當然、ソフィアに話しかける者は誰もいない。
由緒正しき魔法師家系のエドモンド家で、魔力ゼロを出した無能が誕生した事件は、社會ではあまりにも有名だ。
自分の敵味方を決めるべく、時には手をわし時には牽制しあう社會において、一族の落ちこぼれであるソフィアと仲良くしようなどと考える好きは存在しなかった。
それに比べ……。
「マリン様! そのドレスの刺繍、とっても可らしいです! どこでお買いに?」
「ふふふ、お目が高いですわね。こちらはシノルンのお店で仕立てて貰った、特注品ですわ」
「まあ、シノルンというと王都で一番と名高いブランドですよね! 流石マリン様です!」
自分とは違って、マリンの周りには人だかりが出來ていた。
豪華なドレス、自信に満ちた表、堂々とした振る舞い。
どれもソフィアが持っていないだ。
い頃から魔法の才があると証明され、魔法學校でも績はトップ。
將來的に國を背負う魔法師になるだろうと期待を一心にけて育ったマリンと仲良くなりたいと思う者が多いのは至極當然だった。
そのうちマリンの元には令嬢だけでなく、何人もの子息も集まってくる。
國の中でもトップクラスの容貌、地位、名譽を持つ丈夫たちがこぞってマリンにお近づきになろうとする景は、もう何度見たかわからない。
もはや羨ましさなんて無かった。
あるのはただただ虛な無力、絶。
そして、むなしさ。
母には結婚相手を……などと言われたが、この様子だと婚姻の話なぞ夢のまた夢だろう。
(早く帰りたい……)
帰ったら帰ったで、母にどやされるのは目に見えているけど。
この、居るだけで慘めな気持ちしか生まない、自分の居場所がない會場から一刻も早く立ち去りたかった。
だが、そういうわけにもいかない。
(終わるまで、隅っこでおとなしくしていよう)
ソフィアはそう決め、誰とも目を合わさぬよう俯きどこかへ行こうとした時。
「お、おい……見ろよ、あれ……!!」
「あれが、聖霊國の……」
そんな言葉が聞こえてきて、ふと顔を上げる。
ざわざわと皆が指さす方向に目線をやると──。
「わあ……」
思わずソフィアは聲をらした。
そして、瞬時に理解した。
あの二人が、霊王國からやって來た人なのだろうと。
あまりにも人間離れした容貌を持つ二人だったから。
(綺麗……)
そんな印象を抱いた一人は。
この世のものとは思えないほど整った顔立ち、優しそうなブルーの瞳。
背中までばした長髪はき通るような水できらきらと煌めいている。
スラリとした軀は國では見たことのない神服のようなドレスに包まれていた。
そんなの隣を付き添うように歩いているのは男。
(な、なんだか、怖そう……)
ソフィアはそんな印象を抱いた。
男の方も顔立ちは恐ろしいほど整っており、目元にかけた丸眼鏡も相まって知をじさせる雰囲気を纏っているが、頭の両側から生えた立派なツノと微かに鋭利な耳が同じ人族では無いことを語っている。
長めに切り揃えた髪は白い。
つきはがっしりしているが筋骨隆々というよりも引き締まっているように見えた。
とは対照的に強いが宿った瞳が、周囲を警戒するように見回している。
──その視線が、不意にソフィアを捉えた。
(……え)
目があった、というのが瞬時にわかるほどの眼力。
心臓を摑まれたようなじがして思わず、ソフィアはきょろきょろしてしまう。
その間に男は、に何かを耳打ちした。
するとの方もソフィアの方を見て、驚いたような表をする。
(な、なに……?)
何か、やらかしてしまっただろうか。
おろおろするソフィアの元に、ふたりは迷いのない足取りでやってきた。
「え、えっ……?」
ソフィアの周りから人が引いて、三人だけの空間ができる。
「お、おい、見ろよ……」
「なんで霊王國の人が、エドモンド家の落ちこぼれに……?」
どよめく周りに構わず、男の方が一歩踏み出してきた。
「あ、あの……?」
ソフィアよりも頭一個分は高い位置から、男はこんな問いを投げかけた。
「そのフェンリルは、君の霊か?」
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