《【書籍化・コミカライズ】竜神様に見初められまして~げられ令嬢は霊王國にて三食もふもふ溺付きの生活を送り幸せになる~》第22話 どうだった? アランside
「どうだった?」
夜、王城。
軍務大臣に充てがわれた部屋で書類仕事をしていたアランに、どこからともなく聲が降ってきた。
「どう、とは」
アランは書類にペンを走らせたまま、部屋のどこかにいるであろうシエルに返答する。
「ソフィアちゃんのことに決まってるじゃない」
「危険ですね」
「危険?」
アランのペンがしだけ速度を落とした。
「はい。まず、自我が乏しく不安定です。おそらく、自分を出すことを許されず、抑圧されてきたのでしょう。あと、謝り癖。ほんの些細なことでも、彼はすぐに謝罪を口にします。これも、周りの環境がそうさせたのかと。このままだと、どこかのタイミングで彼は壊れてしまう恐れがあると考えてます。そうなると……」
その先は言うまでもないと、アランは言葉を止める。
ペンを走らせるスピードが元に戻った。
「なるほどねえ」
大きく頷くシエルの表には複數のが浮かんでいた。
悲しみ、同、そして、怒り。
ソフィアの経歴や境遇は報として知っている。
だからこそ、アランの言葉には強い説得力をじた。
まあ、そうなるよね、という。
「でも、その點に関してはそこまで心配していないわ」
「それは、何故です?」
「あなたと結婚するんだもの」
その返答は予想外だったのか、アランのペンが一瞬だけ止まる。
見なくてもわかった。
シエルは今、それはもう嬉しそうな笑顔を浮かべているのだろうと。
ため息をつき、ペンを再びかすアランはシエルに問いかける。
「俺は乙の繊細な心がわからない、のでは?」
「乙心以前の問題よ。きっと、貴方と一緒にいるだけで、ソフィアちゃんは良い方向に変化すると思うわ」
「それは、時間が経ってみないとわかりません」
「そこは建前でもそうですね、って言うところよ」
「何百年の付き合いですか。今更建前を言う仲でもないでしょう」
淡々と言いながらも凄いスピードで書類を捌いていくアランに、シエルは「それもそっか」と、一人ののように笑った。
「それはそうとして……」
スッと、シエルの影がアランの機に差す。
聲のトーンが僅かに、真面目な方向に変化した事にアランは気づいた。
「どうしてあの時、噓をついたの?」
「噓、とは」
「──此度の婚約は俺がパーティで君に一目惚れをして、熱的な心が芽生え國境をいだ結婚をなどというロマンティックなでは無い」
ぴたりと、アランのペンが止まる。
そこで初めて、アランは顔を上げた。
「やっぱり」
シエルは、得意げな笑みを浮かべていた。
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