《【書籍化・コミカライズ】竜神様に見初められまして~げられ令嬢は霊王國にて三食もふもふ溺付きの生活を送り幸せになる~》第31話 謝ることは何もない
「大変申し訳ございませんでした……」
地上に降りてくるなり、ソフィアはびしょ濡れの地面に手足頭をつけ誠心誠意の謝罪を敢行した。
「……何に対しての謝罪だ?」
訝しげに眉を顰めたアランが尋ねる。
「私のミスで、お庭を……そしてアラン様をびしょ濡れにしてしまいました……」
ソフィアが発生させた大量の水は庭の隅々まで行き渡り、あらゆる箇所を水浸しにしていた。
幸いにも庭が広大なおで浸水している場所は見當たらなかったが、綺麗に植えている花などには明らかに水分過多な狀態である。
加えて、自分なんかを助けるためにアランすらもびしょびしょにさせてしまった。
明らかに自分の失態だ。
ソフィアは反的に怒られる思い怯えながら頭を下げた次第だった。
「なんだ、そんな事か」
しかしアランには怒る素振りなど一切ない。
それどころか膝をついて、ソフィアに手を差し出した。
おもてを上げたソフィアは、恐る恐るその手を取る。
ゴツゴツとした力強いが伝わってくると同時に、優しく立たされた。
「何も気にする事はない。そもそも好きにやってみろと言ったのは俺なのだ。君がどのような結果をもたらそうと、君に非は一切ない」
アランの言葉に、ソフィアは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。
「……何をそんなに驚いているのだ?」
「あっ……いえ……その……意外でした」
「意外?」
「絶対に怒られると……思っていたので」
ソフィアは微かに、肩を震わせていた。
しかし同時に、そこはかとなく安堵しているようにも見えた。
アランは思考を巡らせる。
ソフィアのこれまでの境遇をアランは報として把握している。
しかし実の所、実家でどのような扱いをけて、何をされていたのか、的なところは知らない。
だがこの……ソフィアの怯えようと安堵を見た限り、容易に想像が出來る。
アランの拳に思わず、力が籠る。
同時に、ソフィアに対し庇護にも似たを抱いた。
「そう怯えなくていい」
ぽんぽんと、アランは優しくソフィアの頭をでる。
「君のいた場所が、おかしかったんだ。ここには、君に対し危害を加える者も、悪意を持って接する者もいない。だから安心しろ」
アランの言葉に、優しいに。
ソフィアの心の強張りがしずつ和らいでいく。
「……はい、ありがとうございます。それから、お気を遣わせてしまい申し訳ございません」
「気にするな。それから……」
真面目な表で、アランは続ける。
「昨晩の繰り返しになるが、まずはその謝り癖を直さねばな。反的になんでもかんでも自分が悪いと思い込むのは、自分にとって大事な自信も、勇気も、主張も奪い去ってしまう」
その言葉に、ソフィアはハッとする。
確かに自分は、何かあったら全部自分のせいにして、すぐに謝罪の言葉を口にしていた。
そうする事が一番、相手の機嫌をそれ以上損ねず、痛い目も最小限に抑えられるだと思っていたから……。
だけどその癖はアランの言うように、自分にとって大事な……特に自己肯定をゴリゴリと削っていってしまう。
その事に、気づいた。
「はい、申し訳……なんでもありません」
「しずつ、な」
クルル、とアランがを鳴らす。
竜人モードのためどんな表かはわからないが、どこか上機嫌のようにじた。
それにしても……。
「そのお姿を見るのは、久しぶりですね」
ソフィアの言葉に、アランがハッとする。
「すまない、怖がらせてしまったな。すぐに人間の姿に戻る」
「ええっ、今のままでも大丈夫ですよ」
「……怖くないのか?」
「怖くなんかないです、かっこいいです!」
むふー!
との前で両拳を握りしめ目を輝かせるソフィアを見て、アランは目を丸める。
「君は……変わってるな」
「そう、でしょうか?」
ちょっぴり好きな部分はあると思うけど、変わり者という自覚のないソフィアが首を傾げていると。
「アラン様、ソフィア様、これを」
いつの間にか二人分のバスタオルを手に、クラリスがやってきた。
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