「味しいっ……」

がさくりと音を立てたかと思うと、カニクリームが口の中をとろりと彩る。

クラリスが運んできた夕食は、今日も今日とてとても豪勢なラインナップだった。

今しがた食べたカニクリームコロッケを筆頭に、鶏のコンフィや明太子パスタ。

毎度お馴染みキャベツサラダもバッチリメニューにっている。

今日はアランとではなく一人なためか、全的にボリュームはなめだった。

「無理に完食なさらないで大丈夫ですからね、今日はお疲れだと思うので」

「ありがとう、クラリス」

とはいえ先程の睡眠と、ハナコからの謎のパワーチャージのおかげでコンディションは萬全だ。

メニューをひとつひとつ、至福満面の笑顔でソフィアは平らげていった。

しかしその一方で、ソフィアは考え事をしていた。

ベッドの上ですぴーすぴーと寢息を立てるハナコを、ちらりと見やる。

（私がんだから……ハナコは來てくれた）

先程ハナコが言っていた言葉が、妙にひっかかっていた。

「ソフィア様、如何なさいました？」

「え？」

「パスタにフォークを差し込んだまま、ピクリともおきにならないので、どうしたのかと」

「あ……ああっ、ごめんなさい、し考え事をしていたわ」

くるくるとフォークを回し、たらこパスタを口に運ぶ。

ピリリとした辛味と、たらこのプチプチ。

濃厚なバターソースがパスタと絡み合って、これも本當に味しい。

…………。

「……ねえクラリス」

「はい」

「霊、って一なんなの？」

自分の中の気になるが抑えきれなくなって、ソフィアは尋ねた。

「……難しい質問ですね」

顎に手を添え、クラリスはしばし黙考したあと、言葉を口にする。

「私にとって霊は……生まれた時から近にいる、隣人のような存在です。々な格の子がいますが、基本的には気分屋で、のんびりしてて、だけど力を貸してしいときには貸してくれる、そんな存在……ですかね」

「ふむふむ……」

「……申し訳ございません。おそらく、んでいる答えではありませんよね」

鋭い言葉にドキッとするが、揺を悟られぬよう平靜を裝う。

「う……ううん、ありがとう。參考になったわ」

ソフィアが言うと、クラリスはまたし考えてから言葉を並べる。

「霊とはどういう存在なのか……いつからこの世界にいて、どのような質を持っていて、どんなことができる存在なのか……といった學的な部分は、未だに解明されていない部分も多々あるのですが……図書の間に、詳しく記載されている本があるかもしれません」

「なるほど……」

それは良いことを聞いた。

暇を見つけて、探してみようとソフィアは思った。

「何故、霊に興味を？」

「興味、というか、気になったというか……」

ハナコの方を見やって、ソフィアは言う。

「ハナコが言ってたの。ハナコが現れたのは、私自がんだからって」

「ソフィア様自が、ハナコ様が現れるのをんだと？」

「そうらしいわ」

「ふむ……」

また暫し考え込んでから、クラリスは尋ねる。

「失禮な事をお聞きするかもしれませんが……ハナコ様が現れる前、ソフィア様は、困った狀況だったりしませんでしたか？　誰かに助けてしいとか、孤獨で寂しい、とか……」

「あ……」

思い當たる節はあった。

ハナコは、ソフィアが孤獨で部屋で一人泣いている時に、突然部屋に現れた。

「……あの時の私は……一人で、寂しくて……誰かにそばにいてしいって……そう思っていた……」

「……そういう事ですか」

クラリスの表が一瞬、歪む。

次いでよしよしと、ソフィアの頭をでる。

「あの……クラリス？」

「ああ、失禮しました」

こほんと咳払いしてから、クラリスは説明を続ける。

「霊は、“願い”や”想い”に呼応します。特に霊力が尋常では無い、ソフィア様の願いは相當なものだったのかと。それでハナコ様が姿を表した、というのは納得がいきます。霊がいないはずのフェルミに出現した、というのだけは、気になる部分ではありますが……どこかの地域から迷い込んだ、という可能は全然あり得ることかと思います」

「なるほど……」

ソフィアの不安や孤獨といった悲痛のびに呼応した、と考えると筋が通る話だった。

……そういえば。

霊王國エルメルに來て、初めて大浴場にった際。

これからどうなるんだろう、という不安と孤獨のを抱いた時、小さくて可らしい妖ちゃんが目の前に現れたような……。

「なんにせよ、ハナコ様はただの霊では無い事は確かですね」

「ハナコが？」

こくりと、クラリスが頷く。

「そもそも霊がどのくらい見れるかは、個々人が持っている霊力と、その霊自の力に比例します。力の弱い霊は基本、霊魔法を使う際に存在をじるくらいで、一般人には見る事すら出來ません。ですが、私程度の霊力でも常にくっきりと見えるハナコ様は、相當な力を持った霊かと……」

くああ〜っと欠をして、ごろりんと寢返りを打つハナコを見ていたら、決してそんなふうには見えないが……。

怪しい目つきのソフィアに、クラリスは優しい聲で言う。

「なにはともあれ……良き友を、お持ちになりましたね」

「うん……それは本當に、そう」

ハナコのおかげで、今まで々な辛い事、悲しい事を乗り越えてこれた。

自分にずっと寄り添ってきてくれた、大切な親友。

それだけは紛れもない、事実だった。

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