《星の家族:シャルダンによるΩ點―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困する外科醫の愉快な日々ー》響子
響子は集中治療室にれられ、人工呼吸の他、多くのチューブに繋がれた。
みんな知っていた。
だからロックハート參事は、俺に無理に頼んだのだ。
親友の駐日大使も來たのだ。
院長も俺に命じたのだ。
小児科長も何も言わずに、俺のところへ毎日遊びに來させたのだ。
俺も毎日可がってやり、一緒に風呂までったのだ。
響子の病気のスキルスガンは、非常に進行が早い。
新陳代謝の盛んな子どものは、みるみる蝕まれていった。
肺の腫瘍は摘出されたが、ガン細胞は別な場所でも見つかっていた。
抗癌治療も、子どもには副作用が強すぎてなかなか踏み切れなかった。
副作用でがもたないのだ。
同様に、力的に、もう手もできなかった。
冬になる前に。
それがみんなの結論だった。
もう、打つべき手はない。
せめてペイン治療くらいしか殘されていない。
小さなが、必死にガンと戦っている。
俺をしてくれた、小さな魂が消えようとしている。
數日後、俺は院長室に行った。
「響子ちゃんのオペをさせてください」
俺は頼み込んだ。
院長はうなずき、俺に何も言わず、電話をかける。
英語での取次ぎを何度か経て、院長は話しだした。
「ミスター・ロックハート、やっぱりね、バカが來ましたよ」
「……」
「ええ、オペをしたいんだそうです」
「分かりました」
「おい、代われとよ!」
院長は俺に話を渡す。
「はい」
「ゲヒン・サムライ!」
「お聞きになったとおりです。響子ちゃんのオペを承認ください!」
「お前は、あの綺麗なをまだ切り刻むのか? どうして靜かに死なせてやらないのか?」
「切り刻んで、一生殘る醜い傷だらけにしてやりますよ」
「ふざけるなよお前、ぶち殺すぞ!」
「響子ちゃんと一緒に死ぬのなら、構いません」
「ふん、もう一度ミスター・タテシナに代われ、若造!」
しばらく話し込んでいた院長は電話を置いた。
「なんとか了解を得たぞ。まあ、「絶対に許さないが、若造が響子を殺したら一緒に焼いてやる」ということだったがな」
「……」
「お前にオペをさせてくれる、ということだ。まあ、焼かれるときには俺も付き合ってやる」
「いえ、響子ちゃんと二人きりがいいです」
「お前! ぶち殺すぞ!」
「ありがとうございました」
一江、大森、斉木という俺の部下のトップ3を呼び、響子のカルテを検討した。
「部長、これは無茶苦茶ですよ。主な転移は三箇所ですが、全部切除しなきゃまた始まるのが目に見えてますし」
「そうですね、でも問題は患者の力です。切開していけば絶対に途中で力盡きます」
こいつらの意見は正しい。
だが、それがどうした。
俺は言った。
「80%は穿孔式で行なう。一江、機材を手配してくれ。斉木は念のためもう一度データの詳細と免疫系の數値を確認してくれ。大森は一江が集めた機材チェックだ。オペ看に任せるな、自分でやれ。明朝から始めるぞ!」
俺は第二外科にも応援を頼み、俺たちの控えに待機してもらう。
○○は真剣な顔で
「頑張れ」
と言ってくれた。
60時間が経過した。
まだ響子は頑張っている。
オペは既に穿孔式から切開に移っている。
なるべく出と臓の負擔を抑えて行なったが、もうこれ以上は手を広げられない。
顕微鏡を覗いている俺たちの目も限界だった。
俺のには、點滴が打たれている。
力もそろそろ限界だ。
一江と大森は代で休み、斉木はまだ俺の隣に立っている。
第二外科の連中は部屋の外まで來て、いつでも代できるように待っていてくれている。
81時間43分。
オペは終わった。
合は第二外科に任せた。
「傷はなるべく殘さないでくれ」
俺はそう言うと意識を喪った。
らしい。
まったく覚えていないからだ。
三日間、響子は生死の境を彷徨った。
協力してくれた第二外科が、主に後を引きけてくれていた。
俺たちは限界を超えすぎていた。
三日後、集中治療室で俺は響子に再會した。
「普通なら、助からん。だが奇跡だ。まだ生きようとしている」
無茶な手だったことは、俺が一番知っている。
翌日、無菌室の響子が俺を見ていることに気付いた。
いてはいないが、確かに意識のある目だ。
俺が手を振ると、涙を零した。
俺も、自分の頬を伝うものに気付いた。
一週間後、響子は會話ができるようになった。
一日に短時間だが、俺たちは話ができた。
まだ予斷は許さないが、経過は順調だった。
ロックハート參事は、毎日俺のところへ來た。
來るたびに俺を抱きしめて帰っていった。
それだけのために彼は來た。
土日の休みには家にまで來た。キャデラックの後部座席から、彼は大聲で俺を呼んだ。
子どもたちに大量のおもちゃやゲーム、そして服をプレゼントしてくれた。
一緒に遊んでくれた禮なのだと。
そして一人一人抱きしめて帰っていった。
あがれよ、と言う俺の言葉に陳謝して去っていった。
俺と子どもたちの時間を邪魔しないと言った。
アメリカ大使館に、プレゼントの禮に行くと、ロックハート參事は響子を日本へ連れて來た理由を聞かせてくれた。
「あの子の母親は、いキョウコに、故郷の話をたくさん聞かせていた。アメリカ人だから英語だけで十分だと言ったが、キョウコがせがんで日本語も使えるようにしていた」
俺は黙って聞いていた。
「だからだろう。キョウコは日本へ來たがっていた。憧れの夢の國だったんだよ」
「もちろん、理由はそれだけではない。我々は、日本人のある外科醫に期待したのだ」
恐らく院長のことだろう。
「キョウコは元気一杯の子どもだった。しかし昨年突然倒れ、検査の結果スキルスのガンだと知った。手遅れなのは分かったが、私は日本の醫療技の高さに僅かな希をかけたんだ」
「そこからは君の知ってのとおりだ。日本でもキョウコは治せなかった。余命を幾許かばすことはできたがそこまでだった。キョウコは自分の運命を悟っていたように思う。頭のいい子だったからね」
ロックハート參事は立ち上がって窓を向く。夕日が差し込んで、床に長い影を映す。
「私が會いに行っても、滅多に笑わなくなったよ。でも、ある日君の病院から、信じられないデータをもらった。君がキョウコと話しただけで、緩和傾向の數値が現われた、と。私の喜びと謝は、とても言葉に表わせない」
參事は俺に振り返って言った。
「でも、キョウコの運命までは変えられなかった。しかし君はキョウコの最後の日々をしいものへ変えてくれると分かった。だから君にお願いして、無理を言った」
俺は抱き締められた。
「それがどうだ、君は何をした? 私は君に何をすればいい? さあ、なんでも言ってくれ。何でも君の言うままに、私はしよう」
彼は涙を迸らせた。
「まだまだ、安心するのは早いですよ。それに私は自分の仕事をしただけですから。結構な給料をもらってますから、當然のことをしたまでです」
「……」
「じゃあ、響子ちゃんを私にください。結婚します」
「それはダメだぁー!」
ロックハート參事がんだ。警備の人間が飛んでくる。
MP5の銃口が二つ、俺に向けられた。
ちゃんと線は參事を外している。
本気、ということだ。
「撃て!」
「おい、待て待てっ!」
床に這いつくばった俺に向ける銃口を、參事が手で制しているのを見た。
「お前! 絶対にキョウコは渡さんぞ」
笑っていた。
何が起きていたのか分からない警備兵たちも、笑った。
「まざー・ふぁっかー……」
俺が立ち上がると、參事は握手を求めてきた。
振り払おうかとも思ったが、思い直して握り返した。
「キョウコを頼む」
ロックハート參事は力強く俺の手を握った。
俺はフルパワーで握り、彼の笑った顔を歪めてやった。
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