《星の家族:シャルダンによるΩ點―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困する外科醫の愉快な日々ー》蓼科文學
翼の葬儀が終わり、焼き場で待っている間、俺は一之瀬夫人に呼ばれた。
「先生、いろいろとありがとうございました」
「力不足で申し訳ありませんでした」
俺たちは焼卻爐に近いベンチに腰掛けていた。
「主人には話せないのですが、翼は毎日先生の話を私にしました。先生から力づけてもらって、自分はもう大丈夫だと喜んでいました」
「……」
「本當に先生のお蔭で、翼は素晴らしい最期を迎えられたと思います。もうこれ以上のことは、私には考えられません」
「そうですか。大したことはできませんでしたが、翼くんがそう言ってくれたのなら、私もこれ以上は」
「あの子は最期に「ありがとうございました」と言いました。もう呼吸も満足にできなかったのに、確かにそう言ったんです」
一之瀬夫人は、そう言って泣き崩れた。
お前はすごい奴だよ、翼。
その後、一之瀬夫妻は離婚をした。
翼の件が理由だろうが、どうにも夫婦生活がダメになったらしい。
一之瀬夫人は俺のアドバイスもあり、家事代行の會社に就職した。
俺はというと、自覚が無いまま、どうにも不味いことになっていたらしい。
自分では割り切っていたと考えていたのだが、初めての患者の死に、深いところで変調を來たしていた。
それを指摘してきたのが、學會で偶然に出會った蓼科文學という男だった。
40代の力的な顔、100キロはあるだろう巨漢。
指が恐ろしく太い。
一流の外科醫と見けられた。
學會の発表を聞きに來ていたらしい蓼科醫師は、俺の発表の後で近づいて來た。
「お前、死ぬぞ?」
突然そう告げられた。
理由も何も分からず、俺は外に連れ出され
「引っ張られている」
と言われた。
不思議なことに、蓼科醫師は最近俺が患者の死に立ち會ったことを言い當て、その患者を大事に思っていたのだろうと言った。
俺は驚いて、翼のことを詳細に話す。
話しているうちに、俺は號泣していた。
悲しみのも湧かないまま、號泣する自分に、俺は驚いていた。
「石神といったか。お前はなぁ、心が分解していたんだよ。若い醫師にはときどきあることだ。真面目な奴に限るけどな。でも、分解したままでいると、そいつは必ずダメになる。俺はそういう醫者をたくさん見てきた」
背中をでかい手でバンバン毆られたが、俺は逆に楽になっていった。
不思議だった。
蓼科文學の手が俺にれて、俺は自分が如何に調を崩していたかが分かった。
それが解されていた。
「おい、お前! 気にったぞ。俺の病院へ來い。俺が鍛え上げてやるぞ」
「いえ、今の病院を勤め上げるつもりなので、折角の……」
「ダメだダメだ! お前は俺の下につかなければ、必ず死ぬ。お前はそういう男だ」
はっきり言って、不思議なことは確かに起きたのだが、一方的に俺に言い聞かせようとする蓼科醫師に従うつもりはなかった。
しかし俺の居場所を知った蓼科醫師は、何度も押しかけてきた。
俺だけではなく、俺の上司や同僚にも接近し、俺の転職をしつこくねじり込んできた。
半年後、俺は蓼科醫師の病院へ移っていた。
負けしたと言うよりも、蓼科醫師と話すうちに、彼の魅力のほだされたのだ。
蓼科醫師は若くして理事に就任していた。
超一流の病院だ。
大學病院ではないにも関わらず、俺が勤めていた醫大よりも格上だ。
40代でそういう病院の役職に就くのは異例のはずだ。
「俺はな、お前にはもっと若くして理事に就いてもらうつもりだからな」
俺が勤め始めて間もなくして、彼はそう言った。
その通りになった。
蓼科醫師は病院で有名だった。
世界的、と言って差し支えない。
彼が執刀した手はことごとく功していた。
そして、その多くは非常に困難なものだった。
誰もが諦めて當然、というオペも、蓼科は功させている。
また、人間的な魅力に溢れてもいた。
豪快な見た目や言だけではなく、繊細な格も併せ持ち、なおかつ教養が高かった。
そして、何よりも優しい人間だった。
俺が魅された大きな理由は、彼の優しさと教養にあったと言ってもいい。
蓼科醫師は俺と話すのを好み、俺たちは公私ともによく一緒にいた。
自宅にもしょっちゅう呼んでくれ、奧様がまた優しい方だった。
まあ、俺がこんな人間なので、蓼科醫師には多大な迷をかけたのも事実だ。
一度や二度ではもちろんない。
そのたびに怒鳴られ、毆られ、処罰され、懲戒免職も二度ほど喰らいかけた。
蓼科文學は、ほどなく院長に就任した。
俺は理事に任命された。
四十代を前にしての理事就任は、初めてのことだった。
読んでくださって、ありがとうございます。
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