《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》32 逆襲の明日香ちゃん!
ようやくダンジョンへ……
晝食を手早く済ました…… いや、実際には桜の大食漢ぶりと、明日香ちゃんのデザート選びに時間がかかって、他の生徒たちに比べて大幅に後れを取った聡史たち5人は、午後1時を15分以上回ってからダンジョン管理事務所へと顔を出す。
すでに1年生の大半の生徒は、カウンターで手続きを終えてダンジョンにり込んでおり、まだ列に並んでいるのは數えるほどのパーティーであった。
「まったく、明日香ちゃんがデザート選びで散々迷っていたせいで、私たちが出遅れてしまったではありませんか!」
「桜ちゃん! よく人のせいにできますね! 食べ終わったのは、桜ちゃんのほうが遅かったじゃないですか!」
「20秒の差など、気にしてはいけませんわ!」
「それでも、桜ちゃんのほうが遅かったんですからね!」
どちらにしても五十歩百歩! たかが20秒の差など、この場で議論してもどうなる話でもない。だが、ついつい明日香ちゃんをイジりたくなってしまう桜は、こうして構ってしまうのだ。明日香ちゃんもそれがわかっているから、逆に桜をイジり返している。この二人は、赤い糸で結ばれているのではないかと疑ってしまうほど、本當に仲がいい。子ネコ同士でじゃれ合いをしているような微笑ましいこのやり取りに、聡史と鈴は暖かい視線を送っている。
「遅れたついでだから、中にる前に打ち合わせをしておこう」
「聡史君、何の打ち合わせかしら?」
「鈴ともあろうものが大丈夫か? 今日からカレンが一緒なんだから、各自の能力特や役割分擔をしっかり確認しておかないと、いざという場面で困るだろう」
聡史は、こんなの當然だろう! という表で鈴に説明するが、逆にこんなわかりきっている容をわざわざ説明された鈴のほうが當している。
「聡史君と桜ちゃんがいて、役割分擔なんか必要があるのかしら?」
「私としては、全部桜ちゃんに任せて、楽がしたいです!」
明日香ちゃんもここぞとばかりに、堂々と手抜き宣言をする始末。
このパーティーって本當に大丈夫? と、カレンの中には何度目かのさざ波が湧き立つ。初めてこのメンバーとパーティーを組むだけに、聡史と桜のやり方を理解していない分だけ、カレンは最初から多不安を抱えてはいるのだ。
「ほら、見てみろ! カレンが不安そうな顔をしているぞ!」
「そうですわね! ここはお兄様が言う通りにしましょう! ステータスの確認などもしておきたいですし!」
普段は真っ先にダンジョン部へと突撃する桜までが兄に賛票を投じたので、意見の流れは大きく傾く。一行はカウンターで手続きを終えると、待合スペースの奧に設置されているミーティングルームへとるのだった。この部屋は、事前打ち合わせが必要なパーティーのために無料で貸し出しされている、冒険者にとっては実にありがたい施設なのだ。
ミーティングルームの部は、テーブルと10人ほどが座れるイスが置かれているだけの、シンプルで飾り気がない部屋だ。白い壁に囲まれたさほど広くないスペースはカウンター周辺と同質の白いリノリュームのタイルが敷かれて、青と白で統一されたテーブルとイスのコントラストと相まって、無機質な印象を與える。
「それじゃあ、互いの戦闘力を確認しておくために、順番にステータスを開こうか。まずは、俺と桜からだ。ステータスオープン!」
「はい、お兄様! ステータスオープン!」
【楢崎 聡史】 15歳 男
職業 魔法剣士
レベル 32
力 412
魔力 356
敏捷 321
神力 127
知力 50
所持スキル 強化レベル5 剣レベル7 無詠唱魔法技能レベル3 神速レベル3 神足レベル3 気配察知レベル3 暗視レベル3 全屬初級魔法レベル5
【楢崎 桜】 15歳
職業 拳聖
レベル 34
力 485
魔力 156
敏捷 683
神力 198
知力 43
所持スキル 強化レベル7 拳闘レベル8 神速レベル5 神足レベル5 気配察知レベル7 広域索敵レベル2 暗視レベル3 視覚強化レベル3 聴覚強化レベル3 嗅覚強化レベル3 神耐レベルMAX
聡史と桜が開示したステータスを見て、カレンが一瞬、おや? という表に変わるが、すぐに元の顔に戻っている。彼は、母親のカンストした數字が並ぶステータスを知っているだけに、異世界からの帰還者であるはずの二人の數値を、足りなくじているのだ。
対して、鈴と明日香ちゃんは……
「何回見ても、信じられない數字が並んでいるわよねぇ! 桜ちゃんの本當のステータスを初めて見たけど、聡史君すら上回っているのね!」
「本當手すよ! 桜ちゃんはこの前、9がいっぱい並んだステータスで笑いを取ろうとしましたけど、これが本なんですね!」
この二人は相変わらずの勘違いぶりだ。実際には、先日桜が開示したステータスが本で、今見せているのは異世界で上昇した分をクリアしたデータなのだ。聡史から注意をけていたため、桜も畫面を初期化したステータスを披している。
「俺たちのはこんなもんだな。次は鈴と明日香ちゃんの番だ」
「「はい! ステータスオープン!」」
【西川 鈴】 16歳
職業 ……
レベル 16
力 97
魔力 504
敏捷 64
神力 180
知力 91
所持スキル 火屬魔法 闇屬魔法 無屬魔法 魔力ブーストレベル2 魔力回復レベル2 式解析レベル6 言語理解レベル1
【二宮 明日香】 16歳
職業 魔法・・・・・・ だったらいいな
レベル 15
力 64
魔力 67
敏捷 35
神力 37
知力 37
所持スキル 魔法への願 神耐レベル5 槍レベル2
「鈴さんは、ずいぶん數値が上昇しましたね!」
「明日香ちゃんだって、すごく長しているじゃないの! スキルも獲得しているし! 神耐が特に高いわね」
「あー(遠い目)」
明日香ちゃんの脳裏には、來る日も來る日も繰り返される桜との筆舌に盡くしがたい訓練景が浮かび上がっている。あれだけの目に遭っているんだから、スキルの一つもオマケしてもらわないと、やってられないだろう。もし明日香ちゃんがオッさんだったら、ブラック企業に嫌気がさして、浴びるほどヤケ酒を飲んでいるかもしれない。
明日香ちゃんのステータスを見ているカレンが、どうやら何か言いたそうだ。
「あの、明日香ちゃんの職業は……」
「カレンさん、どうかそこは聞かないであげてください」
カレンの質問を、桜が遮った。本人すら返答に困る質問をこの場でブッ込むのは酷な話だという、桜の親友としての思いやりである。カレンも、なんとなくその辺の事を察した模様だ。
「それじゃあ、最後にカレンだな」
「はい、ステータスオープン!」
【神崎 カレン】 16歳
職業 ……
レベル 7
力 35
魔力 102
敏捷 20
神力 82
知力 73
所持スキル 回復魔法レベル3 狀態異常回復レベル1 解毒レベル1 神力上昇レベル1 理防上昇レベル1 魔法防上昇レベル1 魔力回復レベル1
「お兄様! これは!」
「うーん…… どこからどう見ても、回復系、それも単純なヒーラーではなくて、僧系のスキルが並んでいるな。職業はまだ不明だけど、いずれレベルが上昇したらそっち系統の職業が表示されるんじゃないかな」
聡史と桜は、納得顔でカレンのステータスを眺めている。一方の、鈴と明日香ちゃんは……
「鈴さん! ステータスって、人によって全然違うんですね!」
「そうね、こんなステータスがあるなんて、全然知らなかったわ!」
二人とも、カレンの極めて特殊なステータスに、驚きを隠せなかった。これまで目にしたステータスは戦闘職か魔法職ばかりで、このような回復職のパーソナルデータは初めてであった。
実は、生徒會にデータベースとして送られていたカレンの報は、何者かが手を加えた偽であった。これは、カレンの特殊を匿しておきたい學院上層部が、偽報を流していたと考えられる。一番怪しいのは、當然カレンのの人間であろう。自分の娘には意外と過保護なのかもしれない。
一通り各自のステータスの公開を終えると、カレンが口を開く。
「皆さん、レベルが高くて驚きました! 私が足を引っ張りそうで、ちょっと不安です!」
「桜ちゃん! カレンさんが不安がっていますから、やっぱり今日は桜ちゃんが全部片づけてください!」
相変わらず人任せにしたがる明日香ちゃん、だが、聡史にあえなく卻下される。
「今日は、3階層で鈴と明日香ちゃんに戦ってもらうぞ! 桜と俺は補助役だから、どうか頑張ってもらいたい。カレンは、このパーティーのやり方に早く慣れてくれ」
「えーと…… 聡史さん? 今、3階層と聞こえた気がしますが?」
「そうだぞ。何か問題はあるか?」
「どうにも問題だらけのような気がしますが、仕方がありません。私、頑張ります!」
魔法學院の一般生徒の常識から抜け切れないカレンにとっては、前途多難なスタートであった。
こうして、その他の細々した話は適當に済ませて、一行はゲートをくぐってダンジョンへと足を踏み込む。
「打ち合わせ通り、3階層までは桜に任せる」
「お兄様! 最短距離で進みますわ!」
すでに他の生徒パーティーは1階層の各方面に散っており、り口付近に人の姿は見當たらなかった。桜は、歩く足を速めて通路をグングン進んでいく。時折姿を現すゴブリンを次々に蹴散らしながら、約20分で2階層へと降りていく階段へ到著する。
「はあ、歩くだけでキツかったです!」
カレン一人だけが息を切らしている。鈴と明日香ちゃんは桜のペースにだいぶ慣れてきたので、この程度はどこ吹く風の様子だ。だがカレンは知らない! このパーティーの本領は、この階段を下りてからスタートするのだ。
「カレン、遠慮しないで水分を取っておくんだ」
聡史が、アイテムボックスから取り出したペットボトルを差し出すと、カレンは右手でけ取る。
「ありがとうございます!」
「回復役が一番先にバテていたら、シャレにならないからな」
よく冷えている水でを潤すと、カレンは生き返ったような心地をじる。その橫では明日香ちゃんが……
「お兄さん! 私も冷たい水が飲みたいです!」
だが、桜は……
「明日香ちゃんには、これをお勧めしますよ!」
「ヒィィィィィィ! 絶対に飲みませんからぁぁぁぁぁ!」
その手に握られているのは、ポーションがっている小瓶であった。桜がビンを仕舞うと、ようやく明日香ちゃんが落ち著きを取り戻す。
「はあ、壽命がみました! うーん、安心したらなんだか腹が立ってきましたよ! こうなったら晩ご飯の時に、桜ちゃんのお皿にピーマンを放り込んであげましょう!」
「ヒィィィィィィ! 明日香ちゃん! それだけはどうか止めてくださいぃぃぃ!」
一見怖いものなしの桜ではあるが、ピーマンだけは大の苦手であった。あの苦さが、どうにも口に合わないのだ。ピーマンが一切れでも皿に乗っているだけで、食を失ってしまう。明日香ちゃんは、桜の弱點もしっかりと把握しており、この場で切り札を切った。
そして、思わぬ逆襲にあって、今度は桜が涙目になる番であった。
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