《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》37 3階層の爭
再會した兄妹は……
想をお寄せいただいて、ありがとうございました。
通路でゴブリンの駆除をしている聡史の目の前に、一旦ダンジョンの外に出た桜が戻ってきた。1階層からここまで、通常の人間には有り得ない短時間で駆け抜けてきたが、息が切れたり疲弊している様子は全く見られない。
「桜、わざわざ戻ってきてくれたのか」
「お兄さまお一人に、ご苦労をお掛けさせるわけにはまいりませんから」
口ではそういうものの、桜もゴブリンの大量発生の原因について興味があった。自分の目でその原因を確認したいという気持ちがなかったと言ったら、噓になるであろう。
「それでお兄様! あそこから足元が見える怪が、大量発生の原因ですか?」
兄妹が再會した通路からは、天井が邪魔になって空間の全像が見渡せなかった。わずかにその場にいるゴブリン・ロードの大木のような足だけが目視可能だ。たった今この場に來たばかりの桜がこのような疑問を抱くのは、當然であろう。
「直接大量発生の原因になったのは、別口の魔だった。あのゴブリン・ロードは、最後のあだ花みたいなものだ」
「ゴブリン・ロードですか?」
「聞いていないのか? 大賢者が以前に語っていたぞ。異世界では千年単位の期間を経て生まれる災厄級の魔だ」
「そんなものが突然現れたのですか!」
聡史の話を聞いて、さすがに桜も驚きを隠せなかった。異世界でこのような災厄級の魔が出現したら、街の2つや3つ、時には國そのものが滅びかねない恐ろしい敵といえるのだった。
「それではお兄様! 私が倒してまいりましょうか?」
「いや、乗り掛かった舟だから、俺がケリをつける! 桜は、ゴブリンが近付かないようにこのり口を守ってもらえるか?」
「わかりました。1も通しません!」
本來の役割分擔だと、魔法を用いる聡史は一撃で大量の敵を殲滅可能であるからして、主(ロード)の下に集まろうとする大量のゴブリンを相手にするのであれば、彼がり口を守る役割に就くのが適任だといえる。しかも、今回のような超大型の魔を討伐した経験は、桜のほうが圧倒的に富であった。
だが聡史は、敢えてそのフォーメーションを採用しようとはしない。その理由は、ゴブリンと戦っている間に彼がじた、口では説明しにくい奇妙な違和であった。
(桜を危険な目に遭わせられないからな)
聡史が危懼しているのは、ゴブリン・ロードそのものではない。あの怪がいる空間自が、この場所に割り込んで出現したばっかりで、周囲の空間と同調しないままで非常に不安定な印象をけるのだ。
そもそもが、隠し通路が現れた狹い場所に、馬鹿デカい空間が割り込むようにして現れたのだから、周囲の空間としては大迷であろう。自らの本來の安定を保つために、邪魔者を異空間に押し戻そうという作用が働いてもおかしくはなかった。
「お兄様! またゴブリンの群れがやってきました! この場は私に任せて、早く中へ!」
「わかった。行ってくる」
「お任せください! 太極波ぁぁ!」
ドッパァァァン! という発音を背にけながら、再び聡史はゴブリン・ロードが待っている空間へと戻っていく。
部で待ち構えている巨大な魔は、再びってきた聡史を警戒する目で見ている。ゴブリン・ロードからすれば、この人間が放った魔法によって一度死に掛けているだけに、警戒の目を向けるのは當然かもしれない。眼に知はじないものの、生命が持ち得る生存本能が聡史の危険を訴えているのであろう。
「グガグガグガガァァ!」
その目に危険なを宿しながら、ゴブリン・ロードが雄びを上げる。手にする大剣を振り上げながら、聡史を威嚇するかのように牙を剝き出しにした獰猛な表を浮かべている。
「今すぐに楽にしてやる! もうちょっと待っていろ!」
魔剣オルバースを手にして、不敵な笑みを浮かべる聡史。すでにこの怪の攻略法が頭にっているだけに、表には余裕が読み取れる。
「いくぞ!」
再び激突しようという両者、今度は聡史がオルバースを肩の高さに構えて突進していく。敵に向かって前進しながら、聡史は〔神足〕と〔強化〕のスキルを同時に発する。一旦魔法は封じて、剣で相手をしようという腹積もりのようだ。
聡史の速度が上がる。空間の床を足が蹴るごとに一歩ずつ加速して、あっという間にゴブリン・ロードの足元にり込んだ。
「ガァァァァ!」
遅れてゴブリン・ロードの剣が、聡史が通り過ぎた床に叩き付けられる。威力だけは十分すぎる一撃が床の敷石をかち割って石の礫を飛ばすが、もうその時には聡史はゴブリンの右膝に向けて剣を橫薙ぎに振るっている。
ガキーン!
強化された聡史が振るう魔剣は、左膝の魔法障壁を壊した衝撃の3倍以上に高められていた。頑丈な金屬鎧の防力をもってしてもその一撃に耐え切るのは不可能といえる、あまりにも強烈かつ無慈悲な斬撃であった。
「ギヤァァァァ!」
ゴブリン・ロードの右膝を覆う鎧が、ベッコリとへこむ。金屬鎧の部では、膝が押し挾まれて骨が変形していそうな、見るも無殘な窪みが出來上がっている。
「足1本で済むと思うなよ!」
瞬時にを翻した聡史の目は、床に振り下ろされて未だ引き戻されていない剣を持つ右手に向けられている。その場で床を踏みつけると、ジャンプ一閃!
「ウギャアァァァ!」
ゴブリン・ロードの右手に向かって床を踏みつけた聡史のは、怪の目の高さまで飛び上がってから重力に引かれて加速を得て落下する。そして引力を味方につけた聡史は、魔剣をゴブリン・ロードの右肘に振り下ろす。
悲鳴を上げるゴブリン・ロードの肘は、叩き込まれた魔剣の衝撃によって変な方向に曲がっている。金屬鎧のおかげで切斷こそされなかったものの、魔剣を叩き込んだ衝撃がこれまたブッとい腕の骨を破壊しているようだ。
怪の右手と右足を破壊した聡史は、ゴブリン・ロードの懐から一旦離を図る。距離をとって相手の様子を観察すると、聡史の予想通り大剣は左手1本で持ち、右足は辛うじて引き摺りながらかすのが限界らしい。
片足が壊されて機力をほとんど失った上に、両手で剣を保持できないおかげで攻撃にも彩を欠くゴブリン・ロードは、すでに聡史に狩られる時を待つばかりの存在にり果てた。もしかしたら配下のを飲めば復活の目があるのかもしれないが、そこは桜ががっちりとガードして空間部には1も通さない。
怒りに満ちた目で聡史を見下ろすゴブリン・ロードではあるが、眼前の敵に一方的にダメージを與えられて、どう見てもこの先苦戦は免れないであろう。
その時……
「お兄様! お急ぎください! 空間の出り口が閉じ始めようとしています!」
通路でゴブリンの駆除をする桜の切迫した聲が飛ぶ。聡史はその聲の方向にチラリと視線を向けると、確かにその警告通りに、空間の出り口が両端から壁を新たに作り直すかのように、徐々に狹くなっていく様子が目に飛び込む。
「どうやら急がないと、不味いな」
そう呟いた聡史は、魔剣を握り直すと一気に畳み掛けていく。左手一本で振るわれる大剣を弾き返して、今度は左足に剣を叩き込む。ガシンという金屬がぶつかり合う音を立てて、ゴブリン・ロードの左足にはオルバースが大きく食い込んでいる。
両足を破壊されたゴブリン・ロードは、その巨が仇となった。重量となった軀を支えきれずに、ドウという音を立てて床に倒れこんでいく。
「止めだ!」
腹這いとなって倒れているゴブリン・ロードは、大剣を手放して無事な左手一本で何とかを起こそうとするが、聡史は抵抗する手段を失ったその背中に飛び上がっていく。
そして、著地と同時に魔剣を鎧と兜の間にあるわずかな隙間に突き立てる。延髄に深々と剣を差し込まれたゴブリン・ロードは、聲も上げられずにを痙攣させて事切れていった。
聡史によって倒された巨が床に吸収された跡には、大ぶりの魔石と大剣が殘されている。
「お兄様! どうか早く!」
出り口の外からは、桜が呼び掛ける焦った聲が響く。聡史は素早く魔石と大剣をアイテムボックスに放り込むと、すでに人が一人通れるかどうかというところまで閉じている出口へとダッシュする。
「桜ぁぁ! そこから離れろぉぉ!」
「わかりました!」
外にいる桜を退避させる聡史、だが彼の目の前ではみるみる空間の出口が閉じていき、今は腕一本が辛うじて出せる程度の隙間しか殘ってはいなかった。このままでは、聡史が外に出るのは絶的! 彼は空間に閉じ込められてしまうのか?
その時……
「はぁぁぁぁ!」
ダッシュする足を止めた聡史は、鞘に戻した魔剣に右手を掛けて、裂帛の気合を漲らせて魔力を込める。
「斷震破(だんしんは)ぁぁ!」
居合のごとくに鞘から引き抜かれた魔剣オルバースが、一呼吸の間に目に見えない速度で縦橫に振られていく。聡史が放っている斷震破は、次元さえも切り裂く斬撃。目に見えている出口が閉じられている現象だけではなくて、閉じようとする空間そのものを切り裂いている。
「今だ!」
再びダッシュを開始した聡史は、自らの手で切り裂いた空間の境界を突き進む。だが、あと一歩で外に出ようかという所で、再びピッタリと出口が閉じる。
「斷震撃!」
今度は魔剣に魔力を込めて、極限の速度で前方の閉じてしまった出口に突き込んでいく。オルバースは、聡史の期待に応えるかのように不可視の衝撃を壁に向かって発現する。
ズガガガーン!
ダンジョン自が崩壊するのではないかという衝撃が階層を激しく揺らす。閉じていた壁が突き崩されて、その一瞬出來上がった隙間から転がり出るようにして、聡史はようやく空間の外に飛び出した。
「桜! 可能な限りここから離れるんだ!」
「はい! お兄様!」
兄妹は、極限まで強化を発すると通路を疾走し始める。その背後では本格的な空間転移が始まって、つい今しがたまで聡史とゴブリン・ロードの戦いが行われていた場所は転移の際に発生する大規模なの渦に取り囲まれて、もうその姿ははっきりと視認できない。
だが、聡史が壁にを開けて飛び出したせいで、3階層の通路にあるや未だに湧き上がってくるゴブリンは、その場に一端を垣間見せている転移の渦に次々に吸い込まれていく。渦の吸引力に抗うがないゴブリンたちは、宙を飛んでの渦に巻き込まれていくのだった。
階層にあるを全て吸い込もうかという猛烈な渦は、留まる所を知らぬ様子で通路をひた走る聡史たち兄妹にも迫ってくる。
「桜! 振り返るな! とにかく走るんだ!」
「はい、お兄様!」
とはいうものの、空間転移の渦の吸引力は二人にとってけっして楽に振り切れる生易しいものではなかった。前に進もうとして足を高速で回転させる二人と、取り込んでやるとばかりに後ろに引きずり込もうとする渦の力のせめぎ合いが続く。
どれだけの時間、前だけを見続けて走っていたのかもわからない。ただただ自らを吸い込もうとする力に逆らって前に走る二人。もう今は、自分たちが何処にいるのかすら全く理解していない。時折吸い込まれていくゴブリンが空を飛んで二人の前に手足をバタつかせながら姿を現すが、兄妹は打ち合わせでもしていたかのような巧みなステップで迫りくるゴブリンを躱して、ひたすら前に進んでいく。
やがて、転移のの渦は徐々にその明るさを弱めて、ふと見るといつの間にか消え去っている。3階層に猛威を振るっていた萬を吸い込もうとする風の流れは治まって、ようやく周囲は平靜を取り戻す。
「お兄様! どうやらもう大丈夫なようです!」
「ああ、かなりヤバかったな!」
「まさか、お兄様が強引に壁を壊して出てきた結果がこのような大騒ぎに繋がるとは、さすがに予想外でした」
「俺も予想外だった」
普段は事あるごとにやらかしてしまう桜ではあるが、今回はむしろ兄が盛大に仕出かしたので、いつもの2割増しのジトっとした目を向けている。さすがに妹にこのような視線を向けられている聡史は不本意そうではあるが、自分の失敗なので素直に認めるしかない。
「桜、迷をかけたな」
「この程度の出來事は、私の辭書では迷の範疇にはりません! むしろ、通路に湧き出るゴブリンが減ってよかったのかもしれないです!」
「そうだな…… 言われてみれば、ゴブリンの數が減っているようだな」
桜の指摘通り、空間を転移させた際に発生したの渦は、3階層の通路中に撒き散らされていたラフレイアの花の相當な量を吸い込んでいた。おかげで大量発生していたゴブリンの発生元が失われて、この3階層が先程までと比べて格段に平和となっている。
「とにかく原因がなくなったのですから、私たちも外に出ましょう!」
「そうするか…… ああ! 忘れるところだったぞ! 避難している上級生たちを回収しないと!」
こうして兄妹は、ひとまず4階層に降りていく階段を目指して通路を歩きだすのであった。
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