《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》44 秩父ダンジョン5
秩父の話は、今回で最後です。
カレンが開示したステータスは、次の通りであった。
【神崎 カレン】 16歳
職業 ……
レベル 12
力 51
魔力 150
敏捷 29
神力 120
知力 75
所持スキル 回復魔法レベル3 狀態異常回復レベル1 解毒レベル1 神力上昇レベル1 理防上昇レベル1 魔法防上昇レベル1 魔力回復レベル1 神聖魔法レベルMAX
カレンは、このパーティーに加わってからレベルが5段階上昇している。それに伴って各數値も上昇しているが、この度世界樹の杖を裝備したことで神聖魔法がスキルに加わっていた。
どのような原理か正確には斷定できないが、世界樹に蓄積された膨大な英知の一部が杖に保存されており、それが杖の所持者に影響をもたらしたものと考えられる。
ともあれ、日本で神聖魔法を使用可能であったのは勇者一人であったが、カレンは魔法界においてその勇者に匹敵する重要な人と見做されるようになっていくことであろう。
「カレンさん! 急に偉くなっちゃいましたね!」
「偉いなんて、そんな…… 今までと変わらないです!」
明日香ちゃんから尊敬の目で見られているが、カレンは首をブルンブルン振って否定する。スキルが増えたところで今までと変わらない自であると訴えているが、底辺Eクラスの明日香ちゃんから見れば、雲の上の人に見えてしまうのも仕方がないかもしれない。
なにしろ明日香ちゃんは、ついこの間までEクラスでも実技の評価で斷トツのビリであった。桜に鍛えられてさすがにビリからは出したが、今でも総合的な評価ではやはりEクラスというのは厳然たる事実だ。
「神聖魔法なんて、すごく興味が湧くわね!」
明日香ちゃんとは対照的に、鈴は神聖魔法の式がどのように構されているのかという點に、興味をひかれている。解析結果次第では、もしかしたら自分も使用可能なのではと、純粋な期待を向けている。
カレンと鈴は、Aクラスの実技試験で勇者のホーリーアローを目撃していた。あのような強力な攻撃魔法をに著ければ、それは自にとってもパーティーにとっても大いに役立つと考えるのは當然であろう。
「聡史さん! 早速この魔法を使用してもいいでしょうか?」
「いや、まだテストも何もしていない魔法をダンジョンでいきなり使用するのは、止めておいたほうがいいだろう。學院に戻ってから試し撃ちをして、取り扱い方を自分のものにしてからだな。今日は今まで通りで我慢してもらいたい」
「はい、わかりました。ちょっと殘念ですが……」
申し出を卻下されたカレンは、心なしかシュンとしている。せっかく魔の討伐に參加できると思ったのがお預けとなって、ご飯を待たされる子犬のような顔になっているのだった。元が人目を惹く人なので、こうして落ち込む表もしい。
だが、そんなガッカリ顔のカレンに対して希をもたらす使者が現れる。
「カレンさん! スキルの欄にある〔理防上昇〕とか〔魔法防上昇〕っていうのは、どんな効果があるんですか?」
質問した明日香ちゃんは、スキルについてほとんど知識がなかった。無知ゆえの素樸な疑問であるが、カレンがハッとした表に変わる。
「このスキルは、誰かの防力を20パーセント引き上げるスキルなんです。このパーティーの皆さんには必要ないかなと思っていたんですが、よかったら明日香ちゃんに掛けてみましょうか!」
「そうなんですか! ぜひお願いします!」
トライデントを手にする明日香ちゃんは、本人が全く気付かないうちに、槍自が保有するスキルで攻撃力を自的に3倍に増やされていた。それと比較して、防力に関しては相変わらず段ボールよりちょっとだけマシ程度の紙裝甲であった。もちろん、學院支給のプロテクターとヘルメットを裝著してはいるものの、防力が上昇するのは大歓迎だ。なぜなら明日香ちゃんは、痛い目に遭うのが大嫌いなのだ。
ということで、魔とのバトル開始の前にカレンが明日香ちゃんに理防上昇の式を使用して、午前中よりもより安全にグレーウルフを討伐していくのだった。
もちろん役割を得たカレンも大喜びで、何回も明日香ちゃんに防力上昇を掛けていた。本來ならば回復魔法を用いるために魔力を節約するべきなのだが、聡史から『いざとなったら、魔力ポーションがある』と聞かされて、柄にもない大盤振る舞いをしていた。
◇◇◇◇◇
晝食後、パーティーは3時近くまで4階層を回っては通路に出現する魔を次々に狩っていった。
途中で桜が、この日2目のホワイトパールミンクを仕留めて、再び明日香ちゃんのセレブ祭りが開催される。3萬円で大はしゃぎとは、ずいぶん安いセレブであった。
こうしてパーティーは、當初の予定通りに午後4時前にはダンジョンを出て管理事務所へ戻ってくる。
いよいよ明日香ちゃん最大のお楽しみである、ドロップアイテムを買い取ってもらう時間がやってきたのだ。桜のアイテムボックスからは、昨日と今日の分の収穫が次々に取り出されて、買い取りカウンターに並べられていく。
「桜ちゃん! こうして見るとかなりの量なんですね!」
「2日分ですからねぇ。それなりにまとまった量になりますわ!」
果たしていくらになるのか、ドキドキワクワクの明日香ちゃん! 何しろ金欠でデザートをゲットするためにわざわざ秩父まで遠征してきたのだから、その果に大きな期待を寄せている。
買い取りの係員は、手慣れた手付きで次々にドロップアイテムを鑑定していく。皮等はその品質をチェックして、魔石は魔力測定機で計測されていく。
「お待たせしました。ホワイトパールミンクの皮2枚で6萬2千円、グレーリザードの皮が4枚で2萬4千円、魔石が34個で2萬4百円…… 合計で10萬6千4百円ですね。源泉徴収10パーセントで、95760円になります」
「さ、桜ちゃん! どうしましょうか? 本當にセレブになっちゃいましたよ!」
「まあまあの金額ですね。セレブにはずいぶん足りない気がしますが」
5人で分配しても、明日香ちゃんにとってはこれから先1か月間、毎日デザートを食べられる金額であった。だが桜にとっては、5日程度で食べ切ってしまう額なので、明日香ちゃんほどの喜びはじていない。
「お兄様! これだけの金額になりました!」
「そうか、一人2萬にはちょっと足りなかったな…… 今回は一人1萬5千円でどうだろう? 殘りはパーティー共有財産としてキープしておきたいんだが」
「「「「賛!」」」」
全員から了解を得たので、リーダーの聡史から今回の報酬が分配される。冒険者を本業としている人間からするとやや足りない金額ではあるが、食住に恵まれている學院生のからすればこれで十分であった。
こうして帰途に就こうとする聡史たちだが、管理事務所の係員が呼び止める。
「楢崎君、ちょっと話したいことがあるんだ。あっちの部屋に寄ってもらえるかい?」
「はい、わかりました。ちょっと待ってもらえるか」
聡史は、メンバーに斷ってから別室へっていく。そこにはもう一人別の係員も待機していた。
「帰り際で申し訳なかったね。実はダンジョン管理事務所で、行方不明になっていたパーティーに関する報提供に対して、報奨金を用意していたんだ。金額は50萬。け取ってもらえるかね?」
「いえ、辭退します。不幸な目に遭われた方へのお見舞いにしてください」
「そうか…… 了解したよ。君の意向通りに、被害者の家族にお見舞いとして支給することにしよう」
「よろしくお願いします」
聡史は、この申し出をきっぱりと斷っていた。人の不幸に乗じて金儲けをするような真似をしたくなかったからだ。亡くなった人たちと面識があるわけではないが、せめてものめとしてもらいたいという聡史の気持であった。
「おまたせした! それじゃあ、學院に戻ろうか!」
「はい、お兄様!」
管理事務所の係員と聡史との間にどんな話し合いがあったのか知る由もないメンバーたちは、こうして學院へと戻っていく。おそらく彼たちに相談したところで、全員がけ取れないという結論を下すであろうと、聡史は考えている。このパーティーは、そういう意味でお人好しの集まりなのだ。だからこそ、仲間として信じ合える。
そんな慨を抱きながら、聡史もメンバーのに加わってバスに乗り込むのであった。
◇◇◇◇◇
時間はし巻き戻って、この日の晝食時。
魔法學院の學生食堂は、休日でも寮生活をしている生徒でにぎわいを見せている。
「近藤先輩! 隣は空いていますか?」
「ああ、浜川か! 空いているからいいぞ!」
晝食のトレーを持った〔勇者〕浜川茂樹が聲を掛けたのは、すでに食事を終えかけている前生徒會長の近藤勇人であった。
両者は、実技実習の時間に何度か剣の打ち合いをわした間柄で、こうして顔を合わせれば何かしら話をする関係であった。
剣においては、勇者は近藤に連戦連敗を重ねている。もちろん魔法を使用しない純粋な剣だけの打ち合いなので、それがそのまま勇者の実力ではない。だが茂樹を軽く一蹴する近藤の剣の腕は、學院生の中では飛び抜けたものであった。勇者でさえ何合か打ち合っては、あっという間に地面に転がされてしまう。
唯一この近藤に勝てるのは、おそらく聡史ただ一人であろう。それほど剣の腕においては、彼は際立っているのだった。
現に近藤勇人は、先日ゴブリンに取り囲まれた危機の際にも、たった一人で群れ集まってくるゴブリンたちの頭を叩き割って戦していた。
さすがに我の強い勇者であっても、近藤には一目も二目も置かざるを得ないのだ。
「近藤先輩! この前のゴブリン騒ぎは、先輩も巻き込まれたんですか?」
「ああ、3階層の通路のド真ん中辺りにいて立ち往生していたぞ。お前はどうしていたんだ?」
「自分たちは、1階層から下に降りようかというタイミングで退避しろという勧告をけましたが、無視して2階層に降りていきました。結果的には何も問題はなかったので、普段通りにゴブリンを討伐して回りました」
勇者の話を黙って聞いていた近藤の表が一変する。食事をしている勇者のぐらを摑み上げながら、その巨が立ち上がった。いきなりのことであったので、勇者はぐらを摑まれたままで目を白黒している。
「浜川! 退避勧告を無視するとは、ずいぶんな思い上がりだな! お前はパーティーリーダーの最大の務めは何だかわかっているのか?!」
野太い怒聲が、學生食堂に響く。普段は溫厚な人柄として知られている近藤の怒鳴り聲に、周囲で食事をしている関係のない生徒たちまでが、首をすくめてどう対処していいのか戸っている。
「リーダーの務めは、パーティーを率いて魔に打ち勝つことに決まっているじゃないですか!」
勇者も何とか立ち直って、逆に近藤に食って掛かる。だが……
「それが思い上がりだと言っているんだぁぁ! いいか、リーダーの務めとは、たとえ臆病者呼ばわりされてでも、メンバーを率いて來た時と同じ顔ぶれで無事にダンジョンの外に出ることだぁぁ! 貴様は、メンバーの命を預かっている責任を、なんだと心得ているのかぁぁ!」
これだけ言い放つと、近藤は勇者を突き放すように席に放り出して、食事を終えたトレーを手にして片付けカウンターへと去っていった。
その後には近藤の真剣な怒りにれて、を噛み締める勇者だけが取り殘されるのであった。
いつも読んでいただいて、ありがとうございます。皆様の応援に謝しております。次回の話は、學院に戻ります。どうぞお楽しみに!
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