《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》60 鬼畜再臨

本日2話目の投稿となります。

ダンジョンに鬼が現れた顛末は……

一般には非公開であるが、ダンジョン管理事務所は厳重な防犯設備に守られている。

一例を挙げると、職員が執務しているデスクの前には魔石を利用した魔法障壁が築かれており、警報裝置が魔力を知すると職員は一斉に機に伏せるという防犯マニュアルを徹底している。

本日早朝に大山ダンジョン管理事務所を訪れた一団が魔力を使用した件は、彼らがダンジョン部に姿を消した5分後には、市ヶ谷にある自衛隊ダンジョン対策室に報告としてもたらされていた。

を用いた集団はてっきり職員が眠っているものと思い込んでいたが、実は職員全員は無事で、逆に怒りに燃えた職員たちによって通報されてしまうとは間抜けにもほどがある。

道という々古臭い呪を信奉する彼らには、日々刻々と進化する日本の魔法工學に対して、理解が及ばなかったといえるだろう。ただしこの點は、彼らにとっては取り返しがつかない重大な失點であった。

管理事務所並びに管轄する自衛隊の対策室としては當然そのような犯罪行為を見逃せないので、ひそかに伊勢原駐屯地の特殊能力班が出して、彼らが乗ってきた車にGPS追跡裝置をこっそり取り付けたり、防犯カメラの映像を元に男たちの元を洗ったりと、逮捕の準備に余念がなかった。

もちろん県警も捜査に全面的に協力しており、ワゴン車のナンバーから所有者を洗い出して、その過程で東十條家の関與が濃厚という結論が導き出されるのは必然であった。

◇◇◇◇◇

「これは何だろうな?」

鬼を無事に討伐した聡史は、5階層へ上がる階段の途中で床に落ちている紙の切れ端を発見する。手に取ってみると和紙に文字が書き付けられており、どう考えても師が使用する呪符の切れ端であった。

有力な証拠を手にした聡史の瞳には、これ以上ないほどの騒なが輝く。これまで直接手を出すのを控えてきた敵に鉄槌を下す決斷が、この瞬間にされたのであった。しばらく眠っていた鬼畜の魂を、この証拠の品が呼び起こしてしまったのは東十條家にとってはまさに不幸な出來事であろう。

だが聡史が徹底的に追い込むと決意を固めた以上、理事長の存在など風前の燈火に相違ない。ご愁傷さまと、今から心の中で念じておこう。

立場を変えて考えると、東十條家としては手痛いミスの連続であった。これも伊豆で最鋭の暗殺部隊が崩壊したことが一因となっているのだった。

1時間半をかけてパーティーはようやくダンジョンの出口までやってくる。

「桜ちゃん! ドロップアイテムの買い取りなんかいつでもいいですから、早くデザートを食べに行きましょう!」

「明日香ちゃん! 私もそうしたいのは山々なんですが、今日の分をカウンターに提出しておかないと、ドンドン溜まる一方になりますから!」

一刻も早く學生食堂に向かいたい明日香ちゃんがジリジリしながら買い取りが終わるのを待っている。その間に、聡史はその場から離れてスマホを取り出すと、通話ボタンを押す。相手はもちろん學院長だった。

「もしもし、お忙しいところ失禮します。楢崎です」

「どうした?」

何やら學院長は忙しそうな様子で、聞こえてくる聲には々苛立った響きが混ざり込んでいる。

「今日ダンジョンで襲撃をけました。相手は秩父で俺が警察に引き渡した男の一人です。最初は人間の姿を保っていましたが、俺たちを見るなり鬼に変して襲ってきました」

「なるほど、生りに出會ったのか」

「生りですか?」

「ああ、人が鬼に変わることだ。それで、秩父で突き出した男というのは間違いないんだろうな?」

「はい、すでに死亡してダンジョンに吸収されました」

「そうか…… こちらは現在その件も含めて調査中だ」

「わかりました。ところで、これから理事長の元に乗り込んでいいですか?」

「なぜ急に理事長が出てくるんだ?」

「ダンジョンの階段に師が使用する呪符が落ちていました。俺たちに関わりがある師なんて理事長しかいませんから」

「強引な論法だな。まあいいだろう! 適當に締め上げてやれ!」

「本當にいいんですか?」

「このところ目に余る行が目立つからな。學で何かする分にはまだ大目に見るが、外で犯罪行為に手を出すようでは、こちらも甘い顔はできない」

「では、適當に締め上げます」

「ああ、それからお前の妹を貸してもらいたい。東十條家の拠點にガサれを行うから、手伝ってもらいたい」

「いいんですか? 証拠も殘さずに更地にしますよ!」

「それが目的だから、私としては構わない。後で學院長室に寄越してくれ」

「了解しました」

通話を終えた聡史は心の中で考える。今日という日は理事長一派最後の日ではないだろうかと。自分が理事長の元に押し掛けるのはまだいい。ある程度心のストッパーが掛かるから、理事長の命までは取らないであろう。

だが、妹の桜が拠點のガサれに加わるとなったら、話は全く別だ。限度を知らないあの妹にかかったら、拠點の一つや二つ簡単に更地になってしまうのだ。

學院長との通話を終える頃には、買い取りカウンターの前にいる桜が代金をけ取っているところであった。

「お兄様! 本日の収は3萬2千円でした! それからオークの納が2萬々になりますね!」

「そうなのか。それじゃあ一人5千円ずつ分配して、殘りはパーティー財産に殘しておけばいいだろう。それから桜は、デザートを食べ終わったら學院長室に顔を出してくれ。カレンはすまないが桜を連れて行ってもらえるか?」

「はい、わかりました」

こうしてパーティーは學院へと戻っていく。桜と明日香ちゃんは連れ立って食堂へと向かい、鈴とカレンもその後に続いた。聡史だけは彼たちと行を別にする。

子たちと別れた聡史は、その足で研究棟の最上階へ向かっていく。特待生寮がある階だけに、さすがに最も奧に理事長室があることくらいは知っていた。エレベーターを降りると、そのまま何ら躊躇うことなく理事長室へと足を向けていく。

コンコン

ドアをノックすると、室から『お待ちください』というの聲が聞こえてくる。細目に開いたドアから書が顔を覗かせて、その場に立っている聡史を見て一瞬固まった。

聡史はその隙を逃さずに、開いたドアの隙間に足先を突っ込んでから力任せに開いていく。

「斷りもなしに理事長室に學生が押しるのは無禮です! すぐに部屋から出ていきなさい!」

怒りに満ちた表書が金切り聲を挙げるが、聡史は一向に頓著する様子は見せない。それどころか、窓際のデスクに腰掛けている理事長の元にお構いなしに歩を進めていく。

「何をしているのですか! 早く出ていきなさい! 教員を呼びますよ!」

「うるせえバカだな! しはそのよく回る舌を引っ込めておけ!」

第一聲から、聡史はすでにケンカ腰であった。すでに2回も命を狙ってきた相手に対して、今更こちらが遜(へりくだ)る必要などじていない。なんだったら土下座させようかくらいに考えている。

そしてバカ呼ばわりされた書は、どこかへ電話しようとスマホを取り出した。

シュッ! ダーン!

の顔のスレスレを聡史が投擲したナイフが猛スピードで通り過ぎて、音を立てて壁に突き刺さっている。本人が気付かないうちに書の髪の數本がはらはらと床に落ちていく。これが覚悟を決めた鬼畜の怖さだ。

この時點で彼は理解した。聡史は話し合いに來たわけでも渉に來たわけでもない。力盡くでも己の意志を押し通しに來たのだと。すでに説得の言葉など何ら役には立たない。そこにあるのは、彼我の純粋な力関係だけであった。より力が強い者が自らの主張を押し通す弱強食の理論しか、今の聡史には通用しないのであった。

「さて、どうやら靜かになったから、自己紹介してやろうか。知っているだろうが、俺は楢崎聡史! この學院の1年生だ」

「そ、それで、一何用だ?!」

すでに理事長は、聡史が発散する軽い殺気に気圧されて、その聲には怯えた様子が混ざっている。

「用件は大したことではない。ここ最近俺や俺の周囲の人間の命を狙うやつがウロついて困っている。ほら、今日もダンジョンでこんなを拾ったぞ!」

聡史が理事長の目の前で指に挾んでヒラヒラさせているのは、例の階段で拾った呪符であった。

「これは自衛隊の特殊能力班に提出させてもらう。もしかしたらお前たちに事聴取をしたいという話が舞い込むかもしれないが、それは俺が知ったことではない。國家権力の要請に応じるもよし、歯向かうのもお前たちの勝手だ」

「な、何が言いたいのだ! ワシに何をしろと言っているのだ?!」

どうやらこの理事長は、はぐらかして知らぬ存ぜぬで通すつもりのようだと聡史は即座に理解した。このような手合いを追い詰める方法は簡単だ。聡史はアイテムボックスから魔剣オルバースを取り出す。

「ほれ!」

大した気合もれずに振り下ろされた剣は、理事長の目の前にある高級そうな黒檀製のデスクをど真ん中から真っ二つにした。一太刀で切られたデスクはバランスを失って斜めに引っ繰り返っている。

聡史は手前にある邪魔なデスクを蹴飛ばして退かすと、椅子に腰掛けている理事長の倉を摑んで床に引きずり倒す。

ズン!

「ひっ!」

ついでに倒れている理事長の顔の真橫にオルバースを突き刺しておく。その間わずか1秒の早業であった。顔の真橫に剣を突き刺された理事長は、じろぎ一つできずに聡史の顔を見上げている。

「よく覚えておくといいぞ! お前たちは何度手を下しても俺を殺せないが、俺はいつでもお前たちを殺せる! これはかしようのない事実だ!」

聡史は眼にいつにもまして凄みを加えている。理事長を屈服させるのが目的なので、あらゆる手段で圧力を加えているのだった。

「は、離れなさい! ご當主様から今すぐに離れなさい!」

聡史が聲のする方向にチラリと視線を送ると、書が呪符を取り出して何らかのを行使しようとしている。聡史的にはに暴力を行使するのは気が進まないが、それは時と場合による。このまま放置するのは々不味いと咄嗟に判斷すると、の方が勝手にき出した。

「一流というのは、警告する前に先に攻撃を仕掛けるんだよ!」

聡史のきは、書の視力ではとてもではないが追い切れなかった。突然目の前に出現した聡史に、彼は口をパクパクして何ら反応ができてはいない。

「三流は寢ていろ!」

當て1発で書はくたくたと床に崩れ落ちる。最強の暗殺部隊が兄妹を相手にして手も足も出なかったように、東十條家當主の懐刀といえども所詮は聡史の敵ではなかった。そのまま床に寢ている書を一瞥してから、再び理事長の元に戻る。相変わらず理事長は床に寢たままで、抵抗する素振りすら見せなかった。

「呆れたな! 目の前に剣があるんだから、床から引き抜いて戦うくらいの気概を見せろよ! いつまでそこに寢ているつもりなんだ? もしよかったら、そのまま永遠に寢かせてやろうか?」

意地の悪いフレーズを投げかける聡史に対して、理事長は小さく首を振って応えるだけであった。聡史の眼には、この男はどうにも小に映ってくる。こんな手合いにいつまでも構ってはいられない。聡史としても時間は惜しいのだ。

「そうだ! この場を丸く収めるいい案を思いついたぞ! ほれ! あそこのソファーで辭表を書け! お前がこの學院から出ていけば、お互いに顔を合わせることもなくなるだろう。それこそが、雙方にとっての幸せじゃないのか? どうする?」

聡史の目的は最初からこれであった。今急に思いついたフリをしているだけで、理事長自筆の辭表を握ることこそが、本日最大の目的であった。

床に突き刺さっているオルバースを引き抜いてから理事長の襟首を摑んで無理やり立たせると、顎で『早よう書け!』と合図する。聡史の態度は幾分らかくなっているが、相変わらずその目は一つも笑ってはいない。それだけに理事長は、聡史に対して髪の一筋分も逆らえないのであった。

「ふむふむ、理事會宛ての正式な辭表だな。裁は整っているからこれで良しと! それじゃあ、邪魔したな。くれぐれも命は大切にするんだぞ!」

こうして聡史は理事長室を後にしていった。その足で學院長室を訪れると、ちょうどそこには桜がやってきたタイミングであった。

「あら! お兄様はどちらに行ってらしたのですか?」

「ちょっと渉にな。學院長! 理事長から辭表を預かったから、好きなタイミングで使ってください」

「辭表だと! ちょっと見せてみろ…… うーむ、確かに裁は整っているな。わかった、これは私が預かっておく」

こうして聡史は、ガサれに意気揚々と出掛けていく桜を見送る。この夜の大掛かりなガサれで、東十條家の実働部隊は、はぼ壊滅するのであった。當然その裏には、學院の制服姿で気の向くままに荒れ狂う桜の姿があったのは言うまでもなかった。

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