《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》71 全學年トーナメント 3

やっと聡史の出番か……

全學年トーナメントは初日に2回戦まで終了して、近接戦闘部門では明日香ちゃんとカレンは殘念ながら1回戦で姿を消したものの、聡史と桜の兄妹が力差を見せて勝ち上がっていた。

また魔法部門では、鈴が鉄壁の魔法シールドの防力をいかんなく発揮して安定の勝利を収めて勝ち殘っている。たとえ上級生といえども、鈴の魔法シールドを破るような威力のある魔法は扱えなかった。この流れが続く限りは、魔法部門の優勝は鈴で確実と大方の外野は見ている。

そしていよいよ迎えた模擬戦週間最終日、ついに今年の學院全生徒の頂點が決まる。

ベスト4に殘っているのはシードされていた4選手で、準決勝は〔桜対3年生準優勝者〕と〔聡史対近藤勇人〕という組み合わせとなっている。

第1試合は、桜が開始30秒で相手の腹にブローを叩き込んで決著がついている。そして第2試合では、スタンドの生徒全員がが注目する対戦となった。

聡史はここまで、派手さはないが一切付けるスキを與えない萬全の勝ち方で相手を下してきた。対して勇人は、1回戦で明日香ちゃんとの対戦こそ引き分けたものの、続く2回戦は2年生のトーナメント優勝者を一方的に破って準決勝にコマを進めている。

「準決勝に出場する選手が場します」

アナウンスが流れると場が走る。これまで學院最強の名をしい侭にしていた勇人と、突然編してきて各方面に反響を及ぼしている特待生のどちらが強いのか、ついのこの場ではっきりとするのだ。

だが中には、聡史の力は學院生の範疇に収まらないと知っている人間もいる。それは、大山ダンジョンで発生したゴブリンの異常発生に直接巻き込まれた生徒たちであった。

「あの時の特待生の活躍を考えたら、近藤といえども太刀打ちできないだろうな」

「あいつはバケモノだ! ゴブリンを剣で斬りながら、反対の手で頭を摑んで壁に投げて叩き潰していたからな」

「一刀でゴブリンを10まとめて斬っていたぞ!」

通常では考えられない聡史の戦い方を直接目撃した彼らは、全員が聡史にベッドしているようだ。

會場の盛り上がりはともかくとして、場してきた聡史と勇人は、開始線上で向かい合う。

「楢崎、ゴブリン騒では世話になったな。だが、それとこれは別の話だ。あの時に目の前で恐るべき力を見せつけられて、俺も歯を食いしばって腕を磨いてきた。こうして対戦する日を楽しみにしていたぞ」

「お手らかにお願いします。対人戦はあまり得意ではないので」

聡史の返事には省略されている部分がある。『対人戦で手加減するのがあまり得意でない』というのが、より正確な表現であった。桜も同様であるが、異世界では命の値段が安すぎたのだ。敵対者は基本的に後腐れなく殺しておくのが基本であった。

だがこの場では、殺し合いをするために対戦するのではない。あくまでも學院生として模擬戦に臨んでいる。その証拠に聡史の瞳には敵対者に向ける殺意ではなくて、落ち著いた穏やかなが宿っているのであった。

「両者とも準備はいいか?」

審判が注意を行ってから、雙方に最後の確認をしている。聡史と勇人が頷くと、審判は右手を上に掲げる。

「試合開始ぃぃ!」

勇人が手にするのは格に合わせた大振りの両手剣、対する聡史は細の片手剣を右手に持っている。もちろん學院が用意した刃を潰してある模擬剣だ。

聡史は普段から片手剣を使用している。用の魔剣オルバースは片手持ちも両手持ちも可能な中間サイズの剣だ。元々聡史は魔法剣士であったため、剣で戦いながらもう一方の手から魔法を放つ戦法を得意としている。もちろん剣自の強度で比較すれば刀が厚い両手剣のほうが上であるが、魔法使用が前提の聡史は敢えて片手剣を用いているのであった。

勇人はドッシリと正面を向いた構えで聡史の出方を窺う。対する聡史は半に構えてこちらも不の姿勢だ。様子見の時間が過ぎると、勇人のほうからき出す。その目がキラリとって、巨とは思えぬらかなきで聡史との距離をめて正眼から振り上げた剣を聡史に向かって振り下ろす。

ガキーン!

だが聡史が片手で軽く差し上げた剣は、あっさりと勇人の剛腕から繰り出された一撃をけ止めている。予想通り聡史に軽くいなされた勇人は、素早く剣を引いて角度をつけた袈裟斬りを放ってくるが、それも聡史に止められる。聡史は軽く右手をかしているだけで、開始から一歩もいてはいなかった。

最初の攻勢がまったく効果がないと見るや、勇人は素早く距離を取って聡史の隙を探る。

「こうして実際に剣を打ち合ってみると、想像以上の腕前だな。とても俺の剣が通用するとは思えないぞ!」

「謙遜しなくてもいいですよ! どうせ何か策を用意しているんでしょうから」

「バレていたか! それでは、遠慮なく使わせてもらうぞ! 強化ぁぁ!」

勇人のから魔力が溢れると、そのを包み込むようにして魔力の皮が覆っていく。勇人は対聡史戦のためのこれまで溫存していた切り札を発した。明日香ちゃんにあれだけ手を焼いても、この聡史との一戦のために殘しておいた、彼にとってはまさに乾坤一擲のスキルであった。近接戦闘戦で魔法の使用は基本的にじられているが、この強化だけは例外として認められている。

「さすがですね。力と防力が5割増しといったところですか? 普通の生徒では、ここまで能が高い強化は扱えないでしょう」

「冷靜だな。まあ言葉で説明してもわからないだろうから、一撃食ってみろ。いくぞ!」

先程とは比べにならない勢いで勇人が踏み込んでくる。聡史はそのきに合わせて一歩だけ右足を前に出して迎え撃つ。

グワッキーーン!

耳をつんざくような金屬音がフィールドに響いた。スタンドの生徒たち全員がその高音によって耳の奧に軽い異常をじている。

上から大剣を振り下ろした勇人と、斜め下から剣を振り上げた聡史の力が一瞬だけ拮抗する。上から押し潰そうと力を込める勇人に対して、聡史は相変わらず片手でその圧力に抗している。

「ここからが始まりだ!」

どうやら聡史を力盡くで打ち破るのは困難と判斷した勇人は、再び剣を引いて橫薙ぎからの連続攻撃を開始する。

袈裟斬り、下段からの足払い、突き、再び上段からの振り下ろしと、勇人のパワーにスピードが加わった攻撃は、一たび食らってしまえば明らかに勝敗を決める威力がある。

右から勇人の剣が迫る。風を切り裂きながら唸りを上げて飛んでくる一撃を、聡史の片手剣が打ち返す。火花が飛び散る剣と剣のぶつかり合い、その攻防はさながら畫を早送りするかのよう。フィールドから離れたスタンドの生徒たちの眼には、両者の剣の先端がブレて見えるのであった。

正面からの突きに対して聡史は、人間の限界を超えた反応を見せる。素早くを開くと正面からに向かってくる剣を避けて、さらに上から剣を落としていく。避けられたと悟った勇人は、素早く剣を引いて半になっている聡史の背後に剣を振り向けて斜めに振り下ろす。剣を下に向けている聡史の背中側から勇人の大剣が迫る…

だがここでも聡史の反応が勇人を上回る。下に向けた剣を一瞬で反転させると、その勢いを生かして腕の振りだけで勇人の剣を弾き返していく。仕留めたと思ったのに聡史からの反撃をけた勇人は、やや驚いた表をしながらもさらに弾かれた剣を強引に押さえ付けて、そのまま首を一閃する軌道で橫に振っていく。それは仮に真剣であれば、易々と聡史の首を切り落とせる危険な軌道を描いている。

ガキーン!

だが聡史も予期はしていた。上に向けて振り上げた剣をの正面に戻して対処する。聡史は軽く右手をかすだけで、勇人の攻撃を全て撥ね返していく。そのきの正確さは、奇を用いているかのような恐るべき反応速度であった。

あまりに正確な聡史の剣捌きに勇人は舌を巻いて、攻勢を一旦中斷して數歩下がっていく。聡史はそのまま追撃はせずに、勇人が下がるままに任せた。

「これは參ったな! 俺の攻撃がここまで簡単に撥ね返されるとは思わなかった。もうちょっと通用すると考えていたんだが… まるでガキの頃に師匠を相手にして剣の稽古をしていたあの時のような気分だ」

「近藤先輩! でも楽しいでしょう? 俺は今、心から楽しんでいますよ!」

「ああ、俺も楽しんでいる! できればこの時間はもっと長続きするといいな」

「制限時間がありますから、そういうわけにもいかないでしょう! さあ、続きを始めましょう!」

聡史にしては、珍しく言葉數が多い。久しぶりにこうしてまともに打ち合える相手に出會って、聡史は模擬戦であるのを忘れたかのようにこの打ち合いを楽しんでいる。

勇人の剣の腕は、異世界に例えるとC~Dランクの冒険者に相當する。もちろん本気を出した聡史に対して、この程度の腕では秒殺されるのがオチだろう。だがこうして模擬戦という形で用意された舞臺の上で、聡史は勇人という相手に対して敬意を持って相対している。勇人がに著けている剣技を全てけ切ろうと考えているのであった。

「よし、俺も思いっ切り楽しんでやるぞ! 覚悟しろ!」

再び勇人の踏み込みで、新たな打ち合いが再開する。両者とも真剣な中にも晴れ晴れとした表で剣をえている。

そのまましばらく打ち合っていると、勇人の剣がこれまでよりもより正確に素早く聡史を捉えに掛かるようになった。

(どうやら近藤先輩の剣スキルが上がったようだな)

スキルレベルは何かのきっかけで稀に上昇するケースがある。格上の相手と対戦する機會でも場合によっては今回のように上昇するのであった。

勇人本人はまだ気づいていないようだが、繰り出してくる剣の切っ先のきが鋭くなったのを見て取った聡史は、心の中でニンマリしている。この対戦の楽しみがしだけ大きくなった手応えをじているせいであった。

そのまま聡史と勇人の攻防は続いていく。スタンドの生徒たちは、まるで剣のお手本をこの場で目にしているかのように、二人のきを一瞬でも見逃さないように聲も出さずに集中している。それほどスピード、パワー、技が、存分に生かされた両者の立ち合いであった。心・技・の全てを盡くして限界まで絞り出した技の數々をその目にしている生徒は、恐らくいずれは自らの剣に生かしていくことであろう。是非ともそうあってもらいたいと教員一同が願うほど、見學している生徒のためにもなる試合であった。

長らく続いた熱い試合は、殘り時間2分を切ってこれまでとは全く違う様相を呈し始める。勇人の剣をけて捌き続けていた聡史が、一転して攻勢に出始めたのだ。

10分以上積極的な攻撃を封印して、ひたすら勇人の剣をけていた聡史…… だが一たび攻勢に出ると決めたその剣は、まさに圧倒的であった。

一切の反撃を許さずに確実に急所を狙って放たれる剣は、あたかも詰め將棋のように著実に勇人を追い込んでいく。

「クソォォォ!」

勇人が苦し紛れに剣を振り上げる。だがそれこそ聡史が待っていた瞬間であった。勇人が反応できない速度で聡史は踏み込んでいくと、ガラ空きのに向かって橫薙ぎの剣を一閃!

「ガアァァァァ!」

たまらずに勇人が膝を付くと、審判が高らかに宣言する。

「そこまでぇぇ! 勝者、赤!」

時計は14分50秒を指している。殘り時間10秒という際どいタイミングであったが、この勝負は聡史がものにした。

もちろん聡史が手加減したので、勇人は痛みを堪えつつも何とか立ち上がる。

「最後は楢崎に格負けした。本當に大した男だ!」

「ありがとうございました。近藤先輩とは、今後とも時々打ち合いをしたいと考えていますが、いかがでしょうか?」

「俺のほうから頼みたいくらいだ! ぜひとも頼む!」

こうして両者が握手をすると、初めてスタンドが沸き上がる。熱戦に呆気に取られて、拍手するのも忘れていて見っていたようだ。

こうして久しぶりの手応えをじる対戦を終えた聡史は、スタンドで観戦している桜やカレン、ブルーホライズンに手を振りながら控室へと戻っていくのだった。

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