《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》72 全學年トーナメント決勝戦
ついに模擬戦週間の最終決著が……
午後になると、いよいよ決勝戦が開始される時刻が迫ってくる。魔法部門の決勝開始が1時半で、近接戦闘部門は3時からとなっている。
魔法部門では當然のように鈴が決勝まで進んでいた。相手の魔法を寄せ付けない魔法シールドを生かして、ここまで萬全の戦いをして勝ち進んでいる。
聡史と桜は、自分たちの決勝まで時間の余裕があるので、第1屋演習場に鈴の応援に駆け付けている。もちろんカレンとブルーホライズンのメンバーたちも一緒だ。
だが一人だけ、明日香ちゃんは晝食後晝寢がしたいといって自室に戻っていった。トーナメントで敗退してからずっとグダグダした生活を送っているので、他のメンバーは敢えて止めないようしている。そのほうがヤサグレた明日香ちゃんの神をリフレッシュしてくれるだろうという願いを込めて……
「試合開始ぃぃ!」
鈴の決勝戦が始まる。相手は3年生のトーナメント優勝者だ。
「ファイアーボール!」
「魔法シールド!」
3年生といえども、鈴のシールドの前ではその魔法は無力であった。だが、相手はまだ諦めていない。
「アイスボール!」
「理シールド!」
今度は氷の塊を放ってくる。質量を伴う氷の塊は魔法シールドでは撥ね返せない。これはすでに、聡史と鈴の間で何度か実験を繰り返して検証済みであった。重ね掛けされた2枚目のシールドが氷の塊を防ぐ。
こうなると、対戦相手は打つ手がなくなってしまう。2つの屬をれる優秀な魔法使いではあっても、シールドを破るような強力な魔法を持ち合わせてはいなかった。
「ファイアーボール!」
今度は鈴からの反撃が始まる。
ドカーン!
半徑5メートルを吹き飛ばす発の余波で、3年生はこれまでの対戦相手と同様に床に叩き付けられた。
「そこまでぇぇ! 勝者、赤!」
會場が拍手に包まれる。魔法學院初の1年生による全學年トーナメントの優勝者が誕生した瞬間であった。
聡史たちも歓聲に応える鈴に拍手を送っている。カレンやブルーホライズン、それからずっと鈴の付き添い役を務めた千里も一緒になって心からの拍手を送った。
◇◇◇◇◇
魔法部門の決勝が終了すると、生徒たちは一斉に第1訓練場へと向かう。しでも前の席で近接戦闘部門の決勝を見るためだ。聡史たちもその流れに従って歩いていく。
「お兄様! いよいよ決勝戦ですわね」
「そうだな」
「まさか私の最大の敵として、実のお兄様が立ちはだかるとは!」
「いまさらが満載! あのメンバーで俺たち以外の決勝の組み合わせがあるのか?」
「お兄様! お言葉ですが、私はどうしても一度言ってみたかったんです! を分けた兄妹の戦いなんて、ちょっとしたロマンじゃないですか!」
「ロマンでの雨が降りそうだぁぁぁ! いやいや、それよりもお前とだけは戦いたくないのが俺の本音だ! まだ死にたくない」
こうして、どうでもいい會話をしながら兄妹はそれぞれの控室にってく。
◇◇◇◇◇
スタンドに固まって座っているカレンやブルーホライズンのいる場所に、決勝戦を終えた鈴と千里がやってくる。鈴はこれで肩の荷が下りという表をしている。
「鈴さん! 優勝おめでとうございます!」
「「「「「おめでとうございま~す!」」」」」
カレンとブルーホライズンが祝福の言葉を掛けると、鈴はニッコリと微笑んでいる。
「ありがとう! 先輩方には申し訳ないけれど、今年は1年生でタイトルを獨占したわね」
「凄い快挙ですよね! それよりも鈴さん! この決勝戦はどちらが勝つのか予想は付きますか?」
「全然わからないわね。あの二人が正面切って戦ったことなんて見てないし、そもそも聡史君と桜ちゃんは私たちが考える以上の能力を持っているから、どちらが強いなんてこの場で言えないわ」
「ですよねぇ。でも、なんだかとっても楽しみです!」
こうしてカレンと鈴はこれから主役が登場しようというフィールドに目を向けるのであった。ちなみに明日香ちゃんが相変わらずこの場に姿を現していない。引き分けで敗退というルールを誰も教えてくれなかったことに、心を荒ませているのだった。そんなことは自分で調べておけ! と突っ撥ねてもいいのだが、どうせ甘いものが食べたくなったら姿を現すからと、完全に放置されている。面倒な格だ!
明日香ちゃんはこの際どうでもいいとして、スタンドを埋める生徒たちの間では、特待生の話題でもちきりになっている。
「今年は両方のタイトルを1年生に持っていかれるのかぁ…」
「まあしょうがないだろう。俺たち3年生は面目丸潰れだけど、あの近藤すらも敵わないんじゃ仕方がないさ」
「特待生の二人はともかくとして、魔法部門で優勝した子はどうなっているんだ? 裂魔法なんて、ついこの間まで実現不可能と言われていたんだろう」
「ああ、生徒會副會長か! おまけに魔法シールドは展開するし、もう俺たちが理解可能な次元を超えているよな」
「それよりも聞いた話だと、副會長の子は特待生と同じパーティーらしいじゃないか。もしかして、特待生と一緒に訓練すると能力が上がっていくのか?」
「それは有り得るかもしれないな。ほら、1回戦で近藤と引き分けたの子もどうやら特待生のパーティーみたいだし、何か驚くようながあるんだろうな」
確かには存在する。それは命を危険に曬すような過酷な訓練だったり、解析に一月掛かるような膨大な魔法文字のデータ処理だったりと、彼らが想像する奇跡のようなではなくて、地道な日々の積み重ねであった。
こうしているうちに、刻一刻と開始時間が迫ってくる。
「ただいまから近接戦闘部門の決勝戦を開始いたします。選手場」
アナウンスに合わせて赤い扉から聡史が、青い扉からは桜が登場してくる。驚いたことに両者は防をに著けずに、演習用のジャージ姿であった。
聡史が審判に何か用件を告げている。その話に頷いた審判は、本部席に向かってマイクでその容を場にアナウンスしていく。
「ただいま両選手から申しれがありまして、防の著用はなしで模擬戦を行います。それからスタンドで観戦している生徒に注意があります。ただいまからフィールド全が結界に包まれますから、絶対に手をれないようにして下さい」
それだけ伝えると、審判はそのまま本部席に座り込む。フィールドにいると危険なのでこの場所からジャッジを行うように聡史から伝えられていた。もちろん彼らは教員なので、桜が第3室演習場を破壊した件なども耳にしている。この模擬戦に間に合うように夏休み中の突貫工事でようやく復舊しただけに、あのような施設が破壊される慘事は是が非でも回避したかった。だからこそ、こうして聡史の申しれに従っているのだ。
聡史が右手に魔力を込めると、フィールドをぐるりと取り囲む結界が出來上がる。相當量の魔力を込めてあるので、ギリギリ二人の戦闘に耐えられる仕様となっている。いくら聡史でも、これ以上強固な結界は築けなかったから仕方がない。
もちろんこの景を目の當たりにしたスタンドの生徒たちは、全員がポカーンとしている。
聡史が本部席に向かってオーケーを出したので、審判は準備が整ったと判斷してマイクを手にいつもの合図を宣する。
「試合開始ぃぃ!」
その瞬間、第3訓練場は猛烈な音響と地響きに包まれた。
開始の合図とともに、桜が先制攻撃とばかりにその拳から合計20発の衝撃波を放つ。
キーン、キーン、キーン、キーン、キーン、キーン、……
ズガガーン! ズガガーン! ズガガーン! ズガガーン!
聡史は迫りくる衝撃波を剣で斬って捨てながら、その合間に空斬刃を放つ。
キーン、キーン、キーン……
ズガガーン! ズガガーン! ズガガーン!
衝撃波と空斬刃が飛びう戦場さながらの濛々とした土煙の中を、二つの影が錯する。
ガン! ガシッ! ズガン! ドカドカドカ! バキッ! ダダダダダン!
土煙の中で二つの影が高速で衝突したり、離れては再び衝撃波と空斬刃を打ち出したりしながら、激しいバトルが続く。時折々なものがフィールドを包む結界にぶち當たっては、激しい発音を奏でる。
それはもう百人単位の軍隊がこの場で戦爭をおっぱじめたかのような、息もつかない大音響の連続であった。それをたった二人で繰り広げているのだから、見ているほうとしては開いた口が塞がらない心境だ。というよりも、聞こえてくる音だけで生きた心地がしない。中には真っ青になってスタンドから避難していく子生徒の姿もある。あまりの衝撃に心臓が耐えられなかったのだろう。
やや土煙が薄れてくると、今度はフィールドの中央付近を超高速でき回りながらの拳と剣の応酬が開始されている。
桜が衝撃波付きの連打を聡史に向けて放つと、聡史は剣で衝撃波を切り裂きながら巧みに連打を躱していく。さらにそこから反転してカウンターの空斬刃を放つと、桜が拳で叩き落すわずかな時間を利用して剣で斬りかかる。
だが、そんな分かり切った戦法は桜には全く通用しない。ヒョイとを躱して剣の軌道の外に出ると、再び衝撃波を打ち出していく。
再び聡史が守勢に回って剣で衝撃波を切り裂いては、隙を見て桜に斬撃を見舞う。
このような攻防が1秒ごとに攻守をれ替えて果てしなく繰り返されていく。マシンガンのように繰り出される衝撃波と、大砲のように地面を抉ってを開ける斬撃が飛びう中で、二人は平然とした表で淡々と攻撃を繰り出していくのだ。それはもう、攻撃と防を自でこなしていく機械のごとく……
スタンドで見守る生徒たちは、挙って顔面蒼白になっている。1対1の対戦を見に來ているのに、なんでこの場で局地戦が発生しているのかと、まったく理解が追い付かない。中には席に座ったままで意識が飛んでいる生徒の姿も見けられる。あまりに刺激が強すぎる戦いを目の當たりにして、ほとんどの生徒は記憶そのものが吹っ飛んでいる狀態であった。
やがて果てしない攻防は、束の間の靜寂に包まれる。兄妹が距離を取って互いにきを止めた。
「お兄様! いよいよ次の一手で決著をつけてみせますわ!」
「いいだろう、妹よ! 俺の究極の奧義を披してやろう!」
一瞬睨み合う二人、凜とした音ひとつない空気にフィールド全が包まれる。
やがて、桜は決意をめた表で宣言する。
「いきます!」
聡史も大きく頷く。
「行くぞ!」
張が訓練場全を支配する。
「「うおおぉぉぉぉ!」」
鬨の聲を上げながら二人は最後の決著をつけようと、フィールドの中央に走り出す。そして……
「「ジャ~ンケ~ンポ~ン!」」
「勝ちましたわ! 私の勝利です!」
「クソォォォ! また負けたぁぁぁ! これで3連敗じゃないかぁぁぁ!」
両手を突き上げる桜と、芝生に崩れ落ちる聡史の姿がそこにはある。
局地戦と思わせる激しい戦闘は、単なるジャンケンの前フリであった。これ以上激しくなると結界が持たないし、兄妹は最初から打ち合わせ通りにプロレスをして、最後の決著はジャンケンで決めると談合していたのだ。
さもないと、本當に學院を更地にしかねないための、やむを得ぬ措置であったと、どうか理解してもらいたい。
桜が本部席にいる審判にオーケーの合図を出す。審判は『えっ! 本當にこれでいいの?』みたいな顔をしてるが、これより他に決めようがないので、今回は桜の勝利と決定する。
「そこまで…… 勝者、青?」
なぜか疑問形の審判の裁定が下って、なんだか締まらない形で決勝戦が終了した。
だがしかし、観客席で反応する者は一人もいない。あまりに壯大な前フリと最後の締まりがない決著のせいで、全員が口から白いモノを吐き出して、燃え盡きた真っ白な灰になっているのだった。
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