《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》79 深部攻略開始
9月の半ばになって、千里は安定して魔法が使用可能となってきた。レベルが大幅に上昇したことによって魔力の數値もほぼ2倍となっている。彼は現在ブルーホライズンに合流しており、ただ一人の魔法使いとして活躍している。
千里の加でブルーホライズンは魔法を用いる魔に対する対抗策を得て、すでに3階層のゴブリンを相手に彼たちだけで戦うまでに長していた。ここまで育て上げれば、すでに獨り立ちも同然と考えてもよいであろう。
ということで聡史たちのパーティーは、現在特待生寮で今後の攻略の方向について會議を開催している。この會議は桜の提案によって開催されたものだ。
「それでは第36回パーティー會議を開催いたします!」
「會議の大半はただのお茶會だよな?」
勝手に司會役を務めている桜の宣言に兄のツッコミが冴え渡る。現実問題として本日の會議の席上でも桜と明日香ちゃんの前には、食堂でテークアウトしたチョコレートパフェが堂々と存在を主張している。
「お兄様! パーティーは一心同! 常に同じものを口にして結束を強める必要があります!」
「そうですよ、お兄さん! 甘いものを食べると人間はリラックスしていい考えが浮かんでくるんです!」
「いや、毎度毎度デザートを食べているのは二人だけだろう! 今回もただのお茶會に墮落しているから!」
桜に続いて明日香ちゃんまで乗っかってくるが、ちょっと待ってもらいたい! 明日香ちゃんの場合は、常日頃からリラックスしすぎではないだろうか? その辺の自覚をもうちょっと促していく必要があるような気がするのだが……
まあ、その話はいいとして…
いつものお約束の遣り取りが始まってから、鈴とカレンは生暖かい目をしながら紅茶を口にしている。どうでもいいじゃないの… という表がありありだ。その中で、微妙な流れを斷ち切るように桜が司會役の責任を思い出す。
「ゴホン! えー、今回の會議の大きな議題ですが、このところ6~7階層でダンジョン攻略が停滯しています! この現狀を打破するために私たちはどうすればよいのか意見を求めたいと思います!」
「はい!」
「明日香ちゃん、どうぞ!」
「もっと下の階層に行けないのは、時間が足りないためです! 午後からダンジョンにると、どうしても6階層あたりで引き返さないといけなくなります!」
珍しく明日香ちゃんが正論を述べている。その論の通り、時間的な制約のため引き返さなければならない事があった。その他に挙げるとしたら、學生食堂に納するオークの確保にもある程度時間がとられてる。
「素晴らしい明日香ちゃんの意見でした! 皆さん、この時間が足りないという現狀を打破するためには、私たちはどうすればいいのでしょうか?」
「はい!」
「明日香ちゃん、どうぞ!」
「土日に泊まり掛けでダンジョンにると、時間がタップリ取れて下の階層に行けると思います!」
「またまた素晴らしい意見でした! 明日香ちゃんの意見を採用して、次の土日は泊まり掛けでダンジョンにろうと思います!」
「出來レースかぁぁぁぁぁ!」
聡史のツッコミがまたまた炸裂する。二人の茶番劇に、聡史自これ以上辛抱堪らなかった。
すると、ここでこれまで沈黙を守っていた鈴がはじめて口を開く。
「明日香ちゃん! 桜ちゃんとどういう約束をしたのかしら?」
「はい! 泊まり掛けでダンジョンに潛っている間のデザートは、全部桜ちゃんが用意するという約束です!」
「明日香ちゃんは何でバラしちゃうんですかぁぁぁぁ!」
やはり裏では買収工作が行われていた。ただし桜は相手を完全に間違えている。なんでもペロッと喋ってしまう明日香ちゃんでは、の保持など100パーセントめないのであった。泊りの間のデザートで買収される明日香ちゃんも明日香ちゃんだが……
しばらく沈黙が流れる。だが重たくなりかかった空気を破るように、ここでカレンが意見を述べる。
「でも泊まり掛けでダンジョンにれば、往復の時間が節約できますね」
「確かにその通りね。買収はともかくとして、往復の時間を節約できるメリットは考慮するべきよね!」
どうやらカレンの意見に鈴も乗り気の様子で、買収がバレて旗が悪くなりかかった桜が息を吹き返す。
「そうですよ! 往復の時間の分が節約できればそれだけ深い階層に潛れるんですから、絶対に泊まり掛けでダンジョンにるべきです!」
「桜ちゃん! ちゃんと私のデザートを用意してくださいね!」
買収がバレても、明日香ちゃんはデザートを桜に要求するつもりだ。この娘は中々しっかりしている。というよりも、デザートに懸ける執念をじる。単なる甘いもの好きとは一線を畫しているのが明日香ちゃんだ!
「さあ、お兄様! リーダーとしてご決斷を!」
桜はこれまでの自分に都合が悪い経過をまるっきり無視して聡史の判斷を迫る。全の空気は泊まり掛け已む無しというとなっている。この空気をバックにして、桜はかなり強気な態度で押している。
「確かにこのまま日帰りでダンジョンにってもタカが知れているのは事実だ。泊まり掛けで潛るからには中途半端にはしないぞ。金曜の午後からって、日曜の夕方に戻ってくる計畫を立てよう!」
「さすがはお兄様です! 2泊3日のダンジョン攻略なんて、考えるだけでもワクワクしてきます! どうせでしたら20階層まで到達可能な計畫を立てましょう!」
聡史が提案を認めたおかげで、さくらの瞳には10個以上の星がキラッキラに煌めいている。一気に深部まで到達できる千載一遇のチャンスが到來だ! だが……
「桜ちゃん! ちょっと待ちましょうか! 現在大山ダンジョンで最も深部まで到達した記録は11階層なのよ! それをいきなり20階層だなんて、いくらなんでも無茶じゃないのかしら?」
鈴が桜にブレーキを掛けようと立ちはだかる。だがいかなる鈴バリアーといえども、桜を止めるには力不足であった。
「鈴ちゃん! 記録など破れられるために存在するのです! 私たちの手で一気に記録更新! ゆくゆくはは最深部まで攻略します!」
「桜ちゃん! その時はデザートの大判振る舞いをお願いしますよ!」
桜が桜なら、明日香ちゃんは明日香ちゃんであった。雙方とも1ミリもブレない。
「それでは今週は、必需品の調達と食料の準備、それから學院に提出する外泊関係の書類の用意などを進めてください! お兄様、パーティーの共有財産はどのくらいになりますか?」
「すでに30萬円を超えているから、必要品は全額賄えるだろう」
「それでは早速明日にでも、キャンプ用品などを購しに行きましょう!」
このような流れで、次の週末には2泊3日のダンジョン攻略が決定するのであった。
◇◇◇◇◇
あっという間に金曜日の午後となる。
聡史たちのパーティーは、必要裝備を萬端整えて管理事務所のカウンターに並んでいる。
「パーティーで2泊の予定でダンジョンにります。未踏破の階層を目指しますので、手続きをお願いします」
「學院生の皆さんが未踏破の階層を目指すんですか?」
カウンターで聡史の対応をしている付嬢は、最近この事務所に配屬されたばかりであった。學院生が泊まり掛けでしかも未踏破の階層を目指すなど、にわかには信用できない表をして目をパチクリしている。彼は一旦席を外して、奧の上席の事務と何やら話をしている。
「どうもお待たせいたしました。皆さんのこれまでの活躍であれば大丈夫であろうという結論が出ました。どうか気を付けていってらしてください」
聡史たちの実力を認知している事務所の上役は、あっさりと許可を出したようだ。7月以降これまでの期間、大量のドロップアイテムを持ち込んでいるこのパーティーの能力を高く評価しているのだった。
手続きを終えた聡史たちは、ブルーホライズンを伴ってダンジョンに場していく。彼たちとは3階層まで同行する予定だ。もちろんブルーホライズンは、3階層でゴブリンを相手にして日帰りで學院に戻る予定だ。
「師匠たちはスケールがデカいよな! 2泊3日で未踏破の階層を目指すなんて信じられない話だぜ!」
「師匠たちなら、必ずやり遂げてくれますよ!」
「私たちも師匠に負けないように、もっと実力を付けないとダメですよね!」
聡史たちに尊敬の目を向けるブルーホライズンたち、だが現在彼たちは同級生のトップを切って3階層に挑んでいるだけではなくて、そろそろ4階層へ向かおうかという話も取り沙汰されている。パーティーの実力的には、実質1年生のトップを突っ走っているのであった。だがそれでも彼たちが満足していないのは、聡史たちという高い目標が目の前に存在するからであろう。
「師匠! どうかご武運を!」
「皆さんも気を付けてください!」
「元気な姿で帰ってくるのを待っていますよ~!」
ブルーホライズンに見送られて、聡史たちはダンジョンの下の階層に降りていく。ここから7階層まではほとんど毎日のように通っている道なので、安定して魔を片付けながら進んでいく。
5階層のボスを瞬殺して6階層に降りて、しばらくオークの相手をして食堂に納するを確保を開始する。ある程度のを確保してから、その後は7階層を経ていよいよ8階層まで降りる。
「ここも大して変化がないですねぇ~!」
桜の発言通り、この階層もオークやブラックウルフ、ブラッディーバッドに加えて、ブラックリザードの亜種などがたまに顔を出してくる。違いがあるとすれば一度に出現する數が増えたり、違う種類の魔がミックスで登場する程度で、大半は鈴の魔法と明日香ちゃんのトライデントの組み合わせで片付いていく相手ばかりであった。
パーティーは順調に歩を進めて9階層を突破したのちに、あっという間に10階層のボス部屋まで到達する。
「注意しろよ!」
聡史は敢えて慎重な言葉を選んではいるが、その態度に危機は全くない。ここまで登場してきた魔を見る限りは注意すべき強敵が出現していないので、その延長の相手が出てくるであろうと、聡史には予想がついていた。
「中にりますよ!」
桜が重たい扉を開くと、中に待ちけていたのはオークキングに率いられた合計10のオーク軍団であった。
「鈴! 左側に魔法をお見舞いしてくれ! 俺が右側を片付ける!」
「任せて!」
鈴と聡史の手からファイアーボールが飛び出すと、下っ端のオークは次々に吹き飛ばされていく。2発の魔法が炸裂した結果、何とか生き殘ったのはオークキングだけであった。手下をあっという間に排除されたオークキングは、怒りにを震わせている。
「ブモオォォォォォ!」
雄びを上げて突進しようとするが、その3メートル近い巨に向かって聡史の魔法が飛び出していく。
「アイスアロー!」
氷で出來た2メートルの槍が、鎧に覆われていないオークの首元に突き刺さる。首からを流すオークキングのきは、わずか1発の魔法で完全に止められた。
「明日香ちゃん!」
「いきますよ~!」
トライデントを構えた明日香ちゃんがオークキングに向かって走り出す。レベルが上昇したおかげでいつの間にか踏み出す足が速くなっており、あっという間にトライデントの程距離に達する。
「えいっ!」
トライデントはオークキングの革鎧を突き破って、心臓の間近に3本の刃を立てる。
バチバチバチ!
いつものように電流が流れて、オークキングは絶命した。凄いぞ、明日香ちゃん!
ドロップアイテムを拾ってから、ボス部屋の奧にある階段を降りていく。いよいよ大山ダンジョン踏破記録に並ぶ11階層だ。この階層でなぜ攻略が止まっているかというと、足を踏みれた聡史たちにはその理由は一目瞭然であった。
階層全が墓場のように薄暗くて重苦しい雰囲気を湛えている。吸蝙蝠が飛びう中で現れるのは、アンデッドばかりという忌まわしい階層であった。過去にこの階層に足を踏みれたパーティーは、この狀況を見てあっという間に引き返したという記録が殘されている。
「コウモリは俺が片付ける。アンデッドはカレンに任せて大丈夫か?」
「はい、全て神聖魔法で浄化していきます!」
頼もしいカレンの言葉が返ってくるが、一つ大きな問題が発生している。
「さ、桜ちゃん! ダメです! お化けは一番苦手なんですよ~!」
完全に腰が引けて、桜の背中にヒシとしがみ付いている明日香ちゃん。手にするトライデントが、そのあまりのけなさに號泣しているかのようだ。
「えーと… 明日香ちゃんは鈴に任せるから、手を引いて連れて歩いてくれ。桜は引き続き先頭に立って索敵を続けるんだ」
「お兄様! お任せください!」
こうしてフォーメーションを組み替えて11階層のフロアーを歩き始めていくと、前方からさっそくアンデッドが登場してくる。ヨロヨロした足取りで向かってくるのは、ボロボロの服の殘骸をにまとって腐敗したでき回るゾンビであった。
「カレンさん! ゾンビが向かってきました!」
「大丈夫です! 聖(ホーリーライト)!」
カレンが手にする世界樹の杖から白いが飛び出しては、ゾンビのを包み込んでいく。そのが止むと、そこにいたはずのゾンビの姿を消え失せている。聖なるに包まれてごと浄化されていったのだった。
「カレン! 見事だぞ! この調子で頼む!」
こうして聡史たちは11階層を進んでいく。次に現れたのは、骸骨だけになってもき回るスケルトンであった。
「カレンさんが出るまでもありません! 私の拳で十分です!」
桜がダッシュしてオリハルコンに包まれた拳を一閃!
パッカーン!
スケルトンが々になって砕け散る。倒されたスケルトンは、そのままダンジョンに吸収されて消えていく。
「まったく、アンデッドはほとんどドロップアイテムを落とさないんですよね! せっかく倒しても、経験値しか得られないのはどうも納得できません!」
桜は憤慨しているが、魔に文句を言っても仕方がない。ましてや相手は一度死んでいるだけに、大したを持っていないのは當然であろう。もっとも高位のアンデッドであれば、何がしかを落とすであろうが、下級のアンデッドにドロップアイテムを求めても仕方がない。
続いて現れたのは、ブラッディバッドの巣窟であった。天井にコウモリがビッシリと張り付いており、今にも一斉に羽ばたきつつある。
「俺が相手をしようか。ウインドカッター!」
聡史の右手から螺旋を描く風の渦が飛び出して、天井に張り付いている吸コウモリを切り刻んでいく。風の渦が通り抜けた跡には、天井の魔の姿はすっかり消えていた。
こうして聡史たちはアンデッドが出現するフロアーを順調に進んで、12階層に降りていく階段を発見する。
「やっとアンデッドから解放されますよ! 明日香ちゃん、もうちょっとの辛抱ですからね!」
「うぅぅ… 怖いですぅぅ」
相変わらず明日香ちゃんは目を閉じたままで、鈴の背中にしがみ付いている。だが階段を降りていくと、今度は全く別の景が広がっていた。
そこは森林と草原が広がるフィールドエリアとなっている。鬱なアンデッドだらけの空間で滅った気持ちをリフレッシュするにはピッタリの場所であった。
「そろそろいい時間ですから、適當な場所を見つけてキャンプにりましょう!」
「そうだな、桜は安全そうな場所を探してもらえるか?」
「わかりました!」
こうして平坦で見晴らしがいい草原にテントを張って、聡史が周囲に結界を展開して一夜を明かすのであった。
次回の投稿は日曜日を予定しています。聡史たちは目標の20階層まで到達できるのか… どうぞお楽しみに!
昨日投稿を休んだ影響か、本日はランク外に落ちている…… とっても悲しい( ノД`)シクシク…
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