《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫》19.拳法稽古 ②
「先生、A組は奇數ですヨン。相手がいない人はどうすればいいヨン?」
「そうか。奇數人なら、殘った者は助手の先輩と組め。まあ、俺が組んでやってもいいがな?」
「分かりましたヨン!」
整然と並んでいた隊列がバラバラにきはじめる。
ティフニーと組みたいと思ったのぞみだが、顔の広い彼はすでに他クラスの心苗とペアを作っていた。
周りでは次々に仲の良いもの同士、すぐに組手のペアが決まっていく。のぞみはきょろきょろと空いていそうな人を探すが見當たらず、し焦りはじめた。藍(ラン)なら組んでくれるかも、と思い、小柄な団子頭を見つけ、向かっていく。
「あの、藍さん」
藍が振り返り、のぞみの姿を見て応える。
「ああ、神崎さん」
藍のそばにいたもう一人の心苗も、のぞみの聲に振り向いた。
どうやら藍はすでにメリルとペアを組んでいるようで、のぞみは聲をかけたものの、組手の相手になってほしいとは言い出しづらい雰囲気になってしまった。
「あっ、いえ、なんでもありません……」
藍とメリルは互いに見合い、のぞみの気持ちを察する。そして、し困ったようにのぞみに向き直った。
「練習相手が見つからないんですか?」
「はい……」
「困りましたね。この辺りはもう、みんなペアができてしまったかもしれません」
藍はざっと辺りを見渡して、まだペアのいない人を探している。
離れたところにいたクリアたち三人組は、クリアと蛍(ほたる)が組み、マーヤは先輩と組むことにしたようだった。
メリルものぞみの練習相手を一緒に探そうと思い、問いかける。
「カンザキさん、男とペアじゃダメヨン?」
選り好みしていられないのぞみは、慌てて首を橫に振る。
「いえ!稽古の相手ですから、誰でも構いません!」
メリルは片手を口に添え、男子心苗(コディセミット)の群れに向かってぶ。
「オヨンヨン!!そこの男子たち!カンザキさんと組みたい人はいるかしらヨン?!」
メリルの大聲に、のぞみは頬を赤く染める。まるで、一面のローズガーデンに場違いに咲いた一のノースポールのような気分になった。
A組だけでなく、他のクラスの男子心苗たちも目線だけでのぞみを見た。その視線はためらいの空気を含んでいる。
相手が可い子心苗であれば、練習の相手として集中できないのではないかと多くの男子が逡巡した。あまり本気を出しても酷いと思われるし、手を抜けば下心があると思われる。ロム師範の授業で武道を侮辱するようなことは1ミリたりとも許されない。
基本の型もろくにできず、すでに師範に目を付けられているのぞみと組んで面倒にならないようにという保から、男子たちはのぞみやメリルと目が合わないように、周りの同同士、話すフリをした。
のぞみは自分がどのパズルにもはまらないピースみたいだと思った。昔から、どこへ行っても周りから浮いてしまう。俯きがちになっていたのぞみの後ろに、大きな影が立った。
「カンザキ、まだ余ってるなら、俺と組もうぜ」
のぞみが振り向くと、ヌティオスが完全に治った四本の腕を上げて立っている。のぞみは両手を合わせて元に置き、返事をする。
「ヌティオスさん。私で良いのでしょうか?拳法や格闘技の経験がない私が相手では、弱すぎて練習にならないかもしれません」
謙遜するという発想のないヌティオスは、のぞみの言葉をそのままけ止めて、爽快に笑った。
「ハッハ!やる前から自分の弱さを主張するなんて、お前、面白いな。俺は構わないぞ!自分より長の低いやつを相手取るのが苦手でなぁ。お前が相手してくれれば助かるぜ」
ヌティオスの言葉を聞き、のぞみは日差しのように澄んだ笑顔で喜んで言う。
「では、組手練習、よろしくお願いしますね、ヌティオスさん!」
「ああ、よろしくな!」
ようやくのぞみにも練習相手が見つかり、藍はほっとをでおろす。
のぞみが人外の心苗とでも純粋でらかな笑顔を向けて話しあう姿を見て、メリルは心地よくじた。
「カンザキさんは、気の優しい方だヨン」
「そうですね」
メリルに同意する藍は、和んだ表になった。
休憩時間が終わると、早速、組手形式の練習が始まった。
ワンペアで使える空間は石板16枚分。心苗たちはそれぞれ、自分のスペースを取っている。
各ペアの間にも石板1枚分の距離を取り、ロム師範がそこを通路にして歩きながら、大聲で指示を出す。
「それでは組手を始める!手足、どちらからでもいいし、技も自由に使っていい。ただし!型で學んだ技と、自分と相手の弱點を意識しろ。技は相手がけ止めきれる寸前の八分まででやめること!源(グラム)のコントロールも忘れないようにな!今日のところは5分間の練習後、3分の休憩を取る。これを1セットとしてリピートしていけ。わかったか!?」
「はい!」
「気配が弱い!そんな気勢では、ナマケロ蟲にも無視されるぞ!もっとだ!もっと気配を出すんだ!返事は?!」
ナマケロ蟲は、野外に潛む蟲型モンスターだ。地球界の芋蟲と比べ五倍ほどの大きさがあり、きが遅く、気が小さい。師範が納得するまでは何度でも返事をさせられると思った心苗たちは、ひときわ大きな聲で返事をする。
「はい!!!!」
「よ~し!心の準備ができたペアから始めろ!」
指示をけて、それぞれのペアが各自のペースに合わせて練習を開始する。
のぞみも気配を整えながら、ヌティオスを見上げる。背の高さだけでいえば、筋魔神に化けたロロタスも似たようなものだった。父が依頼をけた心霊のお祓いに同行したこともある。剣もある程度、心得はあるが、それでも、自分よりも60センチ以上も背の高いヌティオスを見ると、わずかにが震えだした。格闘技のような至近戦で、真っ正面から相手に立ち向かう経験がのぞみにはなかった。
なんとかして拳法らしい戦闘態勢を取らねばと、たどたどしく構える。待つばかりで攻撃を仕掛けてこないのぞみに、ヌティオスは困したように問いかける。
「カンザキ、お前、攻めてこないのか?」
「そうですね……」
「なら、俺の方からいくぞ!」
ヌティオスはトラップの橫打ち釘のように腕を飛び出させ、パンチを繰り出す。のぞみは間一髪、後ろに飛び退くと、顔を青くした。
「こ、怖い……」
剣の間の取り方とはまったく覚の異なる格闘技に、のぞみは目を白黒させる。良い反応の仕方がわからず、恐怖にが固まってしまう。
「お前、本當に格闘技やったことないんだな?」
「はい……。剣の距離とは違うので、どう反応して良いのかわかりません……」
「そこからか?!」
ホームルームでは剣で義毅を討ち取る姿を見ていたため、弾戦では想像を絶するド素人だということにヌティオスは驚かされた。自分の弱さをけなく思い、練習相手として役不足だとじたのぞみは顔を曇らせる。
ヌティオスは寛大な心でのぞみの弱さをけれ、アドバイスを送る。
「深く考えなくていいんだぞ。お前、さっきやった拳法の型をやってみろ、それで十分だ」
「う~ん、でも、この距離でヌティオスさんを相手にすると、圧迫がすごいです……」
闘士(ウォーリア)らしくないことを言うのぞみに、ヌティオスはし呆れた。
「それは克服するしかないぞ。きっと、俺よりもデカイ相手と闘競(バトル)することだってあるぜ」
「それはそうですけど……」
「じゃあ、俺は拳のスピードと力を抑えるから、防技でけてみろ」
「分かりました、やってみます」
のぞみは気持ちを切り替えようと深呼吸し、きっと目に力をこめると、もう一度、構えた。
先ほどよりも遅いパンチが繰り出される。のぞみは腕で押し返して威力を逃がす。反撃のために拳を打ち出すが、恐怖から無意識にステップを引いてしまう。パンチはヌティオスに屆かず、50センチほど前方で空振りとなった。
「ステップだぞ!もっと前に攻めこむんだ!」
「はい……」
のぞみはさらに集中し、攻撃をけることに全霊を盡くす。パンチが飛び出し、のぞみはをひねって両手の掌でそれをけ止める。今度は反対側の足が蹴り出され、のぞみは旋回するようにしてそのダメージをけ流す。
「いいぞ!」
上段、中段と位置を変え、拳、手刀、腕の振り打ち、蹴り技など、それぞれの攻撃に対する防と、連する反撃技の覚を一つずつに覚えこませていく。
(なるほど……。これが拳法の作法なのね。まだタイミングが摑めないけど、何度も繰り返していくうちに慣れていけば、防技を刀のようにできるかも……。それなら、相手にダメージを與えられる……?)
防と反撃を30ヒット連続で行ううち、のぞみはだんだんと正面から攻撃が繰り出される威圧にも慣れてきた。そこで、ヌティオスに頼みごとを持ちかける。
つづく
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ストーリーの展開が遅いと思いますが、心苗のウォーリアはどんな環境で鍛えされる描寫を深く書きたいです。
つまり、主人公の語は最初から野遼介、主人公の個人オリジナルストーリーのような、いきなり俺がTUEE、または高いスキルを心得でいる。直ぐに敵や事件を綺麗に解決するヒロインではありません。例え、ライトノベから言うと、本當の主人公と巡り合うまで、その前ヒロインの長する語です。アメリカのヒーロー漫畫、映畫のように、のぞみの個人のオリジナル語は、その宇宙を描く、數多ジグソーパズル、その中の一枚です。他のキャラオリジナルストーリーの描寫は心苗の日常の鍛錬の描寫は割合的に減らす、もしくは、別の表現方法を描くつもりです。
また、この作品に群像劇のように、キャラを多めに登場させた。もちろんモブキャラも居たが、それぞれキャラが存在する意味があり、味方やライバルか、協力者、またはストーリーをかせる鍵キャラもいます。キャラを覚えるまでし時間かかると思いますが、ストーリーの展開によって、メインキャラの個、その関する報も増える。印象が濃くになります。
ここまでお読んでいただきまして、嬉もしです。お気にれば、ブック、評価、想をおよろしく願いします。
作者として引き続き進いたします。そして、ウィルターが存在する宇宙の語や世界が広がって行きます。
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