《ハッピーエンド以外は認めないっ!! ~死に戻り姫と最強王子は極甘溺ルートをご所です~》新たな始まり
あれからし遅れて、教師たちが焦った様子で走ってきた。
放課後という時間で、何人かは帰っていたみたいだが、それでも殘っていた全ての教師が駆けつけた。
來るのが遅れたのは、魔王が現れてすぐ、カーネリアンが結界を張っていたかららしい。
魔王を逃がすわけには行かなかったからと、なんでもないことのように言ったカーネリアンだったが、私や魔王に気づかれないレベルの結界を張りながら、魔王を圧倒していたとか、彼の実力が異次元過ぎて開いた口がふさがらないとはまさにこういうことを言うのだろうなと思った。
そうしてようやく解けた結界の中に教師が突。彼らが見たのは、魔王を下し、使い魔にしたカーネリアンの姿だったというわけだ。
そもそも魔王ヘリオトロープとは、五百年前、強すぎてどうしようもなく、その當時優秀な魔法師數十人がかりでなんとか封印したという存在。
それが目覚めたとなれば、間違いなく世界問題となるわけなのだけれど、何か起こる前にカーネリアンが実にあっさり倒してしまったからさあ大変。
カーネリアンは一躍、勇者や、スターライトの最強王子として祭り上げられたが、彼はあまり本意ではないようで、面倒がっていた。
その姿は、前回と違って心が病んでいるようなものではなく、本當にただ面倒臭いだけにしか見えなくて、私は心底ホッとしたのだけれど。
魔王復活と退治。その顛末に後処理と、とにかくあれから忙しく、結局私もカーネリアンも、二週間ほど學校を休むことになってしまった。
そうして今日、二週間ぶりの登校となるのだけれど。
◇◇◇
「……」
々張した面持ちで、自席に腰掛ける。
魔科のクラス。
二週間ぶりに姿を見せた私に、クラスメイトたちはどう接していいのか分からない様子だった。
あの時のことは、ある程度、皆にも周知されている。
何の目的で復活した魔王が真っ先に學園にやってきたのか。
莫大な魔力を持つ私を利用するため拐しようとしたのだと、そんなじで説明されていた。
時戻りの魔法については私とカーネリアンと――あと、不本意ながらもブラッドとの三人だけの。
最初、先生たちに素直に話そうとした私をカーネリアンが止め、ブラッドも止めておいた方がいいと同意した。
「時戻りは人間にとっては未知の魔法だぞ。それを知られて、今のままの生活を送らせてもらえると本気で思うのか? 王とはいえ、いや、王だからこそ利用される可能がある」
それにはカーネリアンも完全に同意で、絶対に時戻りの話はしないことと固く約束させられた。
「もし、君が利用されるなんてことになったら、私は何をしでかすか分からないよ?」
そう言ったカーネリアンが本気の顔をしていたのが、黙っていることを決めた理由だったのだけど……うん、カーネリアンならやりかねない。
私も彼をしているけど、彼も私をとても思ってくれているので、私のためなら々やらかす可能は十分過ぎるほどあるのだ。
そうして上手く教師たちの事聴取を躱したが、後日、スターライト王家からも話を聞きたいと呼ばれているので、そこが一番の難関だろうなと思っている。
何せあそこにはアレクサンダー王子がいるから。彼の目を誤魔化せるか、それが勝負だろうなと察していた。
皆がじっと私を観察している気配をじ、苦笑する。
魔王に狙われるなんて不幸だったと言えば良いのか、それとも無事で良かったと言えば良いのか。そんな雰囲気が伝わってくる。
本當は々聞きたいのだろうが、私はリリステリアの王で、気軽には話し掛けられない。
結果、遠巻きにして様子を窺う……ということになっているのだ。
その中にあのカーネリアンに刃向かっていたジュリーの姿はない。
彼はどうやらこの二週間の間に退學手続きを済ませ、自國に帰ってしまったようなのだ。
何があって國に帰るなんてことになったのかは分からないが、今となってはその方が良かったと思う。
だって――。
がらり、と教室の扉が開く。
ってきたのは擔任のルチル・クォーツ先生だ。
魔科の擔任なだけあり、などの指導もけ持っている、筋骨隆々とした先生。
きは遅いがその一撃は重く、かなりの実力者でもある。
そのルチル先生の後ろから、もうひとり男子生徒がってくる。さらにもう一匹。
如何にも不満ですと言わんばかりの黒貓も一緒についてくる。
彼は教壇の前に立つと、ゆっくりと顔を上げた。細い銀細工のような髪がさらりと揺れる。
しい顔。そこに嵌まるふたつの寶石は青と緑だ。
彼――カーネリアンは教室中を見回すと、口を開いた。
「魔法科から魔科に転科してきた、スターライト王國第二王子、カーネリアン・スターライトだ。ここにいるのは使い魔のブラッド。今日からこちらのクラスで學ぶことになったので、宜しくね」
挨拶を済ませ、カーネリアンがもう一度、皆を見る。彼は最後に私に目を向けると、にっこりと笑みを浮かべてこう言った。
「――そういうことで、今日からクラスメイトとして宜しく。ね、私のフローライト」
――まだ、問題は山積みだ。
時戻りという、珍しすぎる魔法とその後癥。
しかもその後癥には現狀、対癥療法しかないという厳しい事実。
カーネリアンに使い魔に下された魔王ヘリオトロープ――いや、ブラッドに、最強王子としてとうとう世界中に認知されてしまったカーネリアンとの今後など、悩むことはいくらでも。
だけど、実のところ私はあまり気にしていなかったりする。
だって私たちは相変わらずラブラブで、毎日幸せだし、何かあっても彼となら乗り越えられると信じているから。
それにとりあえず、魔王撃退という目標は乗り越えたわけだし。
思っていた方法ではなかったし、結局カーネリアンは最強王子として立ってしまったわけだけれど、前回の彼とは違うから。
その時點ですでにハッピーエンドは確約されているのではないかと、ようやくの重責から解放された私なんかはそう思ってしまうのである。
とりあえず、ここで完結とさせていただきます。また機會があればこの続きもお屆けできれば。
お付き合いいただき、ありがとうございました!
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