《【書籍化&コミカライズ】創魔法の再現者 ~『魔法が使えない』と実家を追放された天才年、魔の弟子となり正しい方法で全ての魔法を極めます。貴方の魔法は、こうやって使うんですよ?~》126話 圧倒
どうやら、エルメスたちの奇襲は功を奏したようだ。
そのことを、別箇所で魔に攻撃を仕掛けていたカティアは魔の雑さからじ取った。
「行けるぞ! このまま押し切れ!」
「相手は所詮魔だ、怯むな!」
兵士たちの士気も上々、ローズの助けもあり、このまま押し切れれば魔たちを全滅することも視野にってくる。
……このまま何事も起こらなければ、だが。
「……」
だが、カティアは直している──というより、ここまでの経験から確信している。
こういう狀況において、何もかもが自分たちの思い通りに進む……そういう容易い戦場など、自分たちはとうの昔に通り過ぎてしまっていることを。
「……頼んだわよ、エル」
それでも、と。これまで乗り越えてきた自分たちの力、そして彼の力を信頼して。
カティアは一言呟くと、自らも戦場へと飛び込んで行くのだった。
◆
「式再演──『火天審判(アフラ・マズダ)』」
「!」
出し惜しみはしない。
そう決めた以上、文字通りの全てを懸ける。
「ッ、これは──!」
まずは単獨の魔法としての最大火力でもって、容赦なくカルマを焼き盡くす。
範囲攻撃であった最初の複合魔法と違って今回は集中火力、直撃させた際の威力だけで言うなら遙かに上。王家相伝クラスの統魔法の凄まじい火力があっという間に対象を灰塵へと帰す──
「でも……いいねぇ……!」
とは、行かない。
最も効果を得られたのは最初の一瞬のみ。そこからカルマは、焼かれ(・・・)ながらも(・・・・)耐を(・・・)獲得(・・)して(・・)瞬時に回復、みるみるうちに修復速度が負傷速度を上回り始める。
……それこそが、奴の最も得意な部分。
桁外れの適応能力と進化能力。けた魔法の耐を瞬く間に獲得してより強靭にと魔力を進化させ、極め付けはその過程で魔法そのものを學習して自分のものにする。
──魔法使い同士の戦いには、質上の相というものがある。
その點において、エルメスとカルマの相は最悪。タイプが同じであり、その上で全てのスペックにおいて向こうが上回っている。普通に戦っていれば、どう足掻いても勝ちの要素は無い。
……だが、それでも。
向こうに無くてこちらにあるものだって、確かに存在する。
そこから導き出されるカルマの『弱點』も──既に解析済みだ。
間も無く、向こうが炎の渦から出する。
その彼は既に『火天審判(アフラ・マズダ)』への極めて高い耐を獲得し、もう二度と同じ魔法が通用することはない。更には──
「んーっと……」
復活したカルマが、己の魔力をね回す。
そうして理不盡に、不條理に。こちらの無數の年月に渡る研鑽の果てに手にれたものを全て容易く、一目見ただけで再現する──
「こんなじか……あれ?」
──前に。
橫合いから鋼鉄の一閃。たった今『火天審判(アフラ・マズダ)』を再現しようとしていたカルマの右腕を、靜かに足音と気配を消して忍び寄っていたルキウスの剣閃が斬り飛ばす。
すぐに腕の方は再生するが、魔法の起は強制的にキャンセル。同時に意識と殺意を向けたカルマの威圧に一切怯むことなく、ルキウスは淡々と告げる。
「悪いが──」
それと、同時に。
「式再演──『天魔の四風(アイオロス)』」
続けざまの、エルメスの魔法。
烈風と共に風の刃が縦橫無盡に跳ね回り、カルマを徹底的に切り刻む。
それに合わせて、ルキウスが続きの言葉を──こう、告げた。
「──真似する時間は與えない」
「わざわざそちらの進化を許すほど暇でも余裕があるわけでもないので。……反撃の機會は與えませんので、そのままやられていただけると」
それが、まず最初に考えたエルメスによるカルマ対策。
向こうの能力は圧倒的だ。一度見せた魔法はまず通じず、どんな魔法でも即座に対応され學習し自分のものにされる。それはまさしく、エルメスの完全上位互換と稱するに相応しい。
だが。そうであるならば、エルメスの欠點自も引き継いでいるはず。
端的に言えば、『自分を倒すための対策』がそのまま使えるのだ。
そして、エルメスの弱點──初見の魔法に弱い。
どんな魔法でも學習する、裏を返せばどんな魔法も學習するために最初は見に回ってしまう。
カルマ相手でも、それは同様。
そのため、最も有用なのは量作戦──端的に言えば、初見の(・・・)魔法を(・・・)無限に(・・・)叩き(・・)込み(・・)続けて(・・・)叩き(・・)潰す(・・)のが有効。
まずはそれを為すために、ここまで溫存しておいた魔法を一気に解放する。
「式再演──『煌の守護聖(セントエルモ)』」
無論、一つでは學習される。あっという間に対応される。
それでも、學習するためには一度食らう必要がある──否、その必要だけを強制する。回避は許さず、観察も許さない。そのための導と魔法の合間の隙作りはルキウスに擔ってもらう。
「式再演──『霹の廻天(キィ・レイカーラ)』」
エルメスが魔法を叩き込み、ルキウスが追撃。そこから更にエルメスが別の魔法で追撃。
第三王派閥の最強二人による絶え間ない攻撃。抜け出すことは當然許すはずもなく、一方的な展開を強制する。無論、カルマの方も元來の再生能力に加えて治癒の魔法を最大限利用して抵抗するが──
これも、解析は済んでいる。
いくら向こうが魔由來の凄まじい修復能力を持っていようと、無限であることはあり得ない。観測される魔力の総量を考慮にれると……これまで手にれてきた自分の魔法を全て使えば、きっちり倒し切れる算段だ。
「『流星の玉座(フリズスキャルヴ)』」「『外典:炎龍の息吹《ドラゴンブレス・オルタ》』」
「ちょっ、待って、っ、これ、は──!」
カルマの聲に焦りが滲み始める。
しかし、手は緩めない。そもそも──ここまで念に準備をしてきたエルメスとルキウス、王國最強格二人を同時にして。
『先制を許した』時點で、もはや敗著。そこからどうとでもひっくり返せるなど、それこそ致命的な驕り以外の何でもない。
これは戦爭だ。互いの手のを完璧に曬し切る學など何処にも無く、何一つ抵抗を許さず倒し切ることこそ理想。
その理想を、徹底的に現するべく。エルメスは次々と、己の全ての魔法を開示して。
叩き込み、叩き込み、追い詰め追い詰め追い詰め切って──
その、果てに。
──カルマが、しい顔を。邪悪に歪ませた。
次回は10月29日(土)更新予定。
ここから先は一週間更新が続くかもです、申し訳ない……!
その分クオリティは維持できるように頑張るので、ぜひ次回以降も読んでいただけると!
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