「とは言ったものの……さてどうするかな……」

狛江　アーネスト　志狼は博館の一階フロアでし困っていた。目の前には呪人(マミー)が二メートル近い巨軀でこちらの様子を伺っている。狛江の長は公稱一七〇センチメートル……まあ実は一六九センチメートルしかない。

プロフィール上の一センチメートル程度のサバ読みは問題にならないだろうが、三〇センチメートル近い長差は接近戦においては途轍もなく不利だろう。

「初仕事でいきなりこれはねえ……人使い荒いね日本支部は」

狛江は神を集中させて、自らの奧にある魂へとれる……心臓が一度大きく鼓すると、仮初の姿が変化していく。

を震わせながら、全に銀のが生え揃い頭は狼の頭部に似た形狀へと変化し、メリメリと全の筋が盛り上がり、手や足は鋭い爪を持つ力強い腕へと変化していく。

その神々しさすらじる異形の姿を見て、呪人(マミー)がたじろいだ様に後退する。

「フゥゥトゥプムス……エィスイティジィ……フィスプ……」

「あ、僕日本語か英語しかわからないんだよね、ごめんね」

もともと日本に住んでいた狛江は、高校生の時にイギリスへと両親の仕事の都合で住むことになり……現地でとある降魔(デーモン)事件に巻き込まれた時に自の能力に気がついた。

両親は狛江が獲得した能力には気が付かなかったが、事件後異様な髪のと目のへと変化した息子に驚き……病気ではないのか？　と醫療機関へと相談を持ちかけた。

そこからＫｏＲＧＢへ連絡がり……イギリス支部はすぐに狛江の能力を特定し、即日スカウトすることとなった。

『狼獣人(ウェアウルフ)』

先日新居とペアを組んだ青梅を追い詰めた、虎獣人(ウェアタイガー)と同じ獣人化能力。それが狛江の武だ。通常の狼獣人(ウェアウルフ)は黒や茶など自然界に存在する狼と同じをしているのだが、狛江は特殊な個……銀狼(シルバーウルフ)へと変化することができる。

この個は今まで存在していなかったため、半分実験のような扱いをけた時期もあったが、ＫｏＲＧＢの仕事で抜群の戦績を上げていた彼は両親が都合で帰國することになり、日本に帰りたいと思っていた彼はこの帰國に合わせてＫｏＲＪへの移籍を希し、日本へと帰國したのだ。

ただ、彼と両親の中は決して良好ではない……それは彼の異様な外見によるものだった。

「ではでは、日本初仕事で君を倒してしまおう、っと！」

狛江は床を大きく蹴ると、呪人(マミー)が反応できないレベルのスピードで一気に距離を詰め……頭に鋭い爪の一撃を見舞う……が燈が対峙する呪人(マミー)と同じように、攻撃が表面で音を立ててり、狛江は呪人(マミー)の肩を蹴って、後方へと著地する。

「ほー、荒野の魔(ウイッチ)みたいな魔法が使えるのか、驚いたな」

「アィフフォピス……ジィスドムフ！」

呪人(マミー)は狛江へとを向けると素手で襲いかかる、剛腕が避ける狛江を捉えられず、床へと食い込み大きくヒビをれる。

パワーはかなりあるな……きは自分ほどではないけど、と狛江は冷靜に相手の報を観察していく。その時上層階でも戦闘が起きているらしく、建全に地響きのような音が鳴り響く。

どうやらあの綺麗な子高生……新居さんは他の個と戦闘をしているようだ。

「初仕事での子にけないところは見せられないね、じゃあいくぞ！」

狛江は榛の目を輝かせて、大きな咆哮をあげた。その聲に呪人(マミー)が一瞬たじろぐ……彼の咆哮(ハウリング)はいくつかの効果を載せることができる……今回使ったのは呪縛(バインド)だ。人間なら丸一日何もできないくらいの効果を発揮するが、こういった特殊攻撃への耐も高いのだろう。呪人(マミー)はかなりきが緩慢になっているが、いている。

一気に距離を詰めて、背中側に回ると無理矢理呪人(マミー)の顔を摑んで捻じ曲げていく。

魔法で攻撃が當たらないとはいえ、普通にれることができる……これはＫｏＲＧＢにいたときに、荒野の魔(ウイッチ)から教えてもらった知識だ。

『結界とは言っても攻撃……斬撃や撃対象を認識して防ぐものなので、直接摑まれると弱いのよね……』

『そうなの？　じゃあ僕がれようと思えば君にれられるってこと？』

『だからってれちゃダメよ？　仕事中なんだから……あとでね』

荒野の魔(ウイッチ)のしい顔が脳裏に浮かぶ……どうして君は居なくなった。しだけ狛江の目に悲しいが宿るが、すぐにその気持ちを切り替えて猛る魂にを任せるように力を込める。

メリメリと音を立てて、乾燥したが立てる破砕音とともに呪人(マミー)の首が捩じ切れる。

狛江は頭を投げ捨てるとそのまま四肢を破壊していく……破壊衝のままに爪で、牙で呪人(マミー)のをバラバラにすると、呪人(マミー)は流石にかなくなる。

「おっと、久々なんでやりすぎたかな」

まだピクピクいてはいるものの、ほとんどバラバラに破壊され、引き裂かれた呪人(マミー)を見てまずは一を破壊したことを理解する。

報では三いたはずだが、ここには一しかいないようだ……すると二階の新居さんが危ないかもしれないな。狛江はすぐに一階の捜索もほどほどにり口へと向かう、新居　燈の援護をするのだ。

「はぁっ……はぁっ……」

今私は……結構ピンチだった。呪人(マミー)が使う切斷(ウーンズ)の魔法に戦闘服が切り刻まれ、中が傷だらけだ。乙のに何てことしてくれてんだ！　と思うものの、相手にしてみれば殺すことなく嬲るのが目的なのだから仕方ないかもしれない。刻まれた戦闘服からお気にりの白い下著と白い、そしてそこに刻まれた傷から流れるが見えている……このまま行くと完全に剝かれてしまうのでそれは避けたいところだ。

さらに切斷(ウーンズ)が効果的と見るや、この呪人(マミー)は完全にアウトレンジでの攻撃に終始するようになってしまった。

いや、正直に言えばミカガミ流には絶技『空蟬(ウツセミ)』……アウトレンジの敵に対して衝撃波を飛ばす技があるのだが、私がこの空蟬(ウツセミ)を撃とうとすると切斷(ウーンズ)が飛んできて、私が防して空蟬(ウツセミ)を撃とうとすると切斷(ウーンズ)が飛んできてというのを何度か繰り返している。

いわゆる格闘ゲームで言うところの直時間を狙われているような狀態だ。

今の私が空蟬(ウツセミ)を放つには、力の溜(・)め(・)が必要なので、そこを狙い撃たれている狀況なのだ。明らかにこの呪人(マミー)はミカガミ流の対処法をわかっている気がする。

「フィプディヒス……ドロフィプテリオモストレヌ……レセソフィイェールストクスィロ」

呪人(マミー)がニタニタと笑い……また理解できない言葉で話してくる。

ええい、どうせロクでもない丸出しの卑猥な言葉でも投げかけてるんだろう、こいつの顔はそんな下心丸出しの顔だ。

このエロゲスドグサレ乾燥坊主が！　そんなことばっかり考えてるから、死んだ後に呪人(マミー)なんかになるんだ。

打開策を考えるも、あの防結界を打ち破るには……超強力な技が必要だ。

私の型では一〇〇パーセントの威力を出せない技もあって……それを活かすにはノエルの力が必要なのかもしれない。私がそう考えると、心の奧底に潛んでいた猛る魂の脈が起きる。

ーードクン。

心の奧底へと手をばし……獰猛に猛る魂にれていく……私のか細いが、全の筋がメリメリと軋み音を上げていく。私から俺へ魂が塗りかわるような、背筋を貫くような快を伴うが、それと同時にか細いが悲鳴をあげている。

「クフッ……萎びたが隨分と調子に乗って……」

俺の顔に獰猛な笑みが自然と溢れる……俺は刀を鞘にしまい、閃(センコウ)の構えをとり限界まで前傾姿勢をとる。

俺の雰囲気が一気に変わり不気味なくらいの殺気を放つようになったのをじたのか、呪人(マミー)がし困するが……傷だらけの俺を見て、まだ優位と見ているのか切斷(ウーンズ)を発しようとする。

そうそう、脳みそまで乾燥してるヤツの思考はそんなものだろうな。俺が取る一手は決まっている……そのか弱い防結界を切り裂いて、乾燥し切ったそのを日本刀で切り裂くだけ。

「ミカガミ流、閃(センコウ)」

一瞬で間合いを詰めた俺の、まさに閃のような一撃が呪人(マミー)を捉える。

あまりに呆気なく防結界を通り抜けて、日本刀は呪人(マミー)の左腕を切り飛ばす……手には全く抵抗をじない。剣聖(ソードマスター)ノエルの超絶技巧が防結界を無効化した。

彼は切り落とされた自分の左腕をポカンとした顔で見つめている。それまで何度も斬りつけられても結界を超えることがなかった斬撃がたった一撃で変わったことが、乾燥しきった脳みそでは理解できない。

「クフフッ……分からないか？　燈の言葉で表現するなら、レベルを上げて理で切り裂いたんだ」

そのまま返す刀で斬撃を右腳に叩き込むと、まるでバターを切るかのように、すんなりと呪人(マミー)の足が斬り飛ばされ、驚いた顔のまま呪人(マミー)は呆然とした表で餅をつく。さらに三撃目で首を叩き落とすと、俺はそのままに何度も日本刀を突き刺す。

俺は相手がかなくなるまで執拗に、笑顔を浮かべたまま何度も何度も日本刀を突き刺す。ああ、実にいい気分だ。

呪人(マミー)が完全にかなくなったのを確認すると、足で頭をスイカでも割るかのように叩き潰し、俺は深くため息をつく。

「しかし……呪人(マミー)を持ち込んだのはどこの何奴なんだ……」

まあいい、當面の危機は去ったと判斷して、二度、三度……冷靜に、深呼吸をして新居　燈の魂へと心を塗り替えていく。

便利なようにも見えるが、ノエルと新居　燈の能力、回復能力には大きな差がある。當分休まないと回復できないだろうな。

私はもう一度深く深呼吸をすると、目をゆっくりと開ける。

「あうっ……」

私は……その瞬間、全に鋭い痛みが走る。久々の全力でに負荷がかかってしまったのと、切斷(ウーンズ)の切り傷の痛みが一気に襲いかかってきて私は痛みにを震わせる……。

「全がい、痛い……早く撤収しないと……」

私が痛みにを震わせたその瞬間を狙って、背後から包帯だらけの太い腕がびる……私は驚いてを翻そうとするものの、全に走る痛みで反応が遅れてしまい……その包帯だらけの新たな呪人(マミー)は難なく私の首を両手でがっちりと締め上げる。

私は首を締め上げる腕をなんとか振り解こうと、必死に抵抗するが……あまりに強い腕力に首の骨を折られる危険をじて、両手でその包帯だらけの手を握ってしまい、武を取り落としてしまう。

音を立てて日本刀が地面へと落下し、私は唯一の攻撃手段を失った。

「えっ……？　あ、ぐうッ……し、しまった……」

_(:3 」∠)_ 直狙うの必須だよねー

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