『日本支部において、ＫｏＲＪ構員への降魔(デーモン)、及び協力者による直接接が発生、全支部は注意されたし』

ＫｏＲＪ日本支部、東京本部は現在大騒ぎになっていた。構員たる戰乙(ワルキューレ)こと新居　燈に対して、降魔(デーモン)の協力者とみられる、個名『荒野の魔(ウイッチ)』による直接接が発生したからだ。

過去直接接が行われたケースは三度ある。そのいずれもが構員が降魔(デーモン)への恭順、そして人類を敵として戦いを開始するケースが多かった。

例えば前大戦における歐州戦役について、歴史上において戦爭の発端を作った有名な獨裁者はＫｏＲの記録を紐解けば降魔(デーモン)との契約者(コントラクター)であったとされている。そのため直接接が発生した場合、その対象者への調査が行われるのが通例であった。

危険と判斷されれば、抹殺……それくらいの急事態なのである。しかし醫療フロアの監視部屋の中には現狀に飽きて普段では絶対に見せないような、だらけた姿をしている新居　燈の姿があった。

「……つまんなーい！　私は全然平気だって言ってるのに！」

私はＫｏＲＪのとあるフロアにある醫療區畫に閉じ込められて、検査服を著せられて二日ほど検査、質問攻めにされている。もちろんスマホも取り上げられ、家族との連絡すら遮斷されている。あまりに暇なのでベットの上にひっくり返ってぐるぐる回って怒りを表現する。

そしてその行の虛しさにため息をついて、枕を抱えて現狀を考える。

まずこの部屋には何もなさすぎる……そして監視制があるため、ずーっと視線をじて実に息苦しい。

著替えの時も視線をじるのだ。これはとして生きている私には実に苦痛だ。一応私は新居財閥の令嬢としてきちんとした貞観念で育てられているため、これは本當に辛かった。

シャワーは浴びれるが、その際もまた視線をじる。私の覚がカメラ越しでも監視されていることに拒絶をじているためだ。トイレも同様だ……とにかく二四時間視線をじて息苦しくて仕方がない。何度か堪えきれずに壁を破壊してしまいそうになったが、なんとか理で抑えている狀況だ。

「くそう……これはもう組織ぐるみのセクハラに違いない……ここから出たら絶対に八王子さんに文句言ってやろう」

私は頬を膨らませて乙のプライバシーを侵害しているKoRに対して一杯の抗議の意思を込めて、カメラに向かって拒絶のジェスチャーを繰り返す。……虛しい、実に虛しい。こんな無意味なことをしてなんになるのだろうか。ため息をついてベッドの上でひたすらゴロゴロ転がる私。この訳のわからない行も監視されてるんだろーなー、と考えると本當に虛しくなってくる。

「せめてお菓子を出してほしい……よしカメラに向かってお菓子がしい、と伝えてみよう……」

「戰乙(ワルキューレ)の様子はどうだ？」

集中監視室において、直接接のあった戰乙(ワルキューレ)に対する監視制が敷かれて2日目。カメラ越しに監視している戰乙(ワルキューレ)の狀況を報告する職員は、現狀の報告を上司へと行うことになった。

「はっ、対象は特に神汚染などの兆候は見られず……現在何かジェスチャーをしております。……お・か・し・が・ほ・し・い……はぁ？　お菓子がしい？」

「……お前は何を言っているのだ」

「い、いえ……監視対象がカメラに向かって何かを言っていたので……どうやらお菓子がしいそうで」

流石に馬鹿みたいな容で、職員が苦笑いを隠せない。その言葉にその場で監視を続ける全員がくすくす笑い始める。二日間監視を続けていたが、対象はどうにも張がなく……ベッドの上で転げ回ったり、枕を投げていたりとどうにも奇行が目立つだけだったのだ。

「……燈ちゃん、暇なんじゃないですかね」

職員の一人が流石に可哀想になったのか、そんな言葉を発する。そうなのだ、職員達は新居　燈という可憐なの姿を見ている。確かに戦闘力は抜群に高く、人間離れしているがまだ一七歳の子高生でしかない。そんなを監視するという任務は職員たちにとっても苦痛だ。彼はちょっと無想なこともあるが、基本的に優しく笑顔も見せてくれる普通の娘なのだ。上司もし苦笑いを浮かべて、ため息をつく。彼としてもこの狀況は本意ではない。

「……そんなことは分かってる……ただ規則でな……仕方ない、監視制を維持していればお菓子くらいは屆けても問題なかろう。誰か行ってくれ」

監視制を引いていた職員たちはほっと息を呑む。彼らとしても新居　燈から嫌われるのは本心としてとても嫌だったのだ。

「お疲れ様。監視の結果君は問題ないと判斷された……ってそのお菓子はどこから持ってきた」

八王子さんが一生懸命にお菓子を口に詰め込んでいる私を見て、し引いた顔をしている。

「職員さんからもらいまひた！」

ひたすら口にお菓子を詰め込みつつ私は答える。そう、八王子さんが來る前に職員の皆さんが『お詫び』と稱してたくさんお菓子を持ってきてくれたのだ。私としては不満は多かったが、職員さんたちの不安そうな顔を見て……本意ではなかったというのをじて何も言わずにお菓子をけ取ることにしたのだ。

「全く……みんな君には甘いのだな……」

八王子さんは苦笑いをすると、し姿勢をただして私に向かって頭を下げる。

「すまない、燈くん。これも規則でな……それと君が接した荒野の魔(ウイッチ)は元々KoRの構員でな……匿報ではあるが、君にはきちんと話すべきだと思う」

その言葉に私はお菓子を食べる手を休めて……八王子さんに向き直る。元々構員だった？　つまりは降魔(デーモン)との契約者(コントラクター)になったということだろうか？

「詳しく聞いてもいいですか？　確かに彼からは人間の匂いしかしませんでした」

「うむ……荒野の魔(ウイッチ)は連合王國(キングダム)、つまりイギリス支部の構員だ。彼の家系は代々荒野の魔(ウイッチ)という稱號をけ継いでいて……魔法能力に長けた一族なのだ」

確かにあのはこの世界では考えられないくらいの膨大な魔力を有していた。それこそ前世の大魔道に匹敵するくらいの……しかしそれではこの世界の理法則に反しているとしか思えない。

「でも魔法というものがこの世界では……その、大したものではない、ということだったと思うのですが……」

私は素直に思った疑問を八王子さんにぶつけてみる。前世ならいざ知らず……この世界の魔法使いと呼ばれる人種は、全て児戯に等しい、それこそ詐欺師のような連中しか見たことがないのだ。魔素の薄さ……この世界で自我が生まれた際に、私は恐ろしいくらいの魔素の薄さに驚いたのだ。

「それがな……荒野の魔(ウイッチ)の一族はちょっと特殊だ。世代を重ねるにつれて前世代の魔力をけ継ぎ、練度を上げ……イギリス支部でも有數の魔法使いとなった」

継承(インヘリタンス)……前世でもこの能力を見たことがある。その前の世代の能力を全てけ継ぎ、長させていく能力。人間ではこの能力を扱えるものは存在しなかった。

それこそ降魔(デーモン)の眷屬がひたすらにこの能力を行使し……そして私たち勇者(ヒーロー)パーティが戦った魔王(ハイロード)として覚醒したものだけが有する能力……。

「つまり……その荒野の魔(ウイッチ)は世代を重ねると強くなる……と？」

「そうだな、原理としてはそういうことになる。そして君が遭遇した荒野の魔(ウイッチ)……第三二代目荒野の魔(ウイッチ)であるアマラ・グランディは過去存在した荒野の魔(ウイッチ)の中で最強だ……」

確かにな……あれほどの魔力は前世でも一人しかじたことがない……大魔道として世界に知られたエリーゼ・ストローヴ、私の前世の友人でもあり、最強の魔法使いだけだ。

それと同等の魔法使いがこの世界でも存在する、これは実に恐ろしい事態だ。エリーゼは天空から隕石を降らせ、炎で城を焼き、核発に等しい魔法で敵軍を壊滅させる壊れ能(バランスブレイカー)だったのだから。

「荒野の魔(ウイッチ)はどういう魔法を使うのですか？」

私はし戦々恐々した気分で八王子さんに尋ねる。正直言えば、接近戦ならエリーゼに勝てると思っている自分がいたが、しでも距離が空いたら彼に勝てたのだろうか？　という疑問がし湧いている。

「アマラはあまり魔法の力を使いたがっていなかったからな……炎で敵を焼くとか、氷の雨を降らせるなどの現象を起こしたことは記録されているが……本気で魔法を使ったことはないと思うぞ」

さ、參考にならない……ただもしかしたらこの世界の原理原則である魔素の薄さは、魔法の行使にある程度影響を與えているかもしれない、と思った。前ででは魔素をいくらでも回復できただろうが……この世界は殘念ながら魔素が薄すぎて、自然回復は難しいのかもしれないしね。

考え込み始めた私を見て、八王子さんは私がＫｏＲＪへの不信をじてないと認識したのか……し安心したような表を見せる。

「とにかく……君への嫌疑は晴れた。家に帰っていいぞ、本當に疑ってすまなかった……」

_(:3 」∠)_ 案外されキャラのあかりん

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