「ィ……ヲヨコセェ」

またこの夢だ、僕は軽い恐怖を覚えながら夢を見ている……視界は相変わらず赤い。

僕の荒い息遣い、そして手にじる得の重さ……ふと右手を見ると、僕の手には西洋の騎士が使うような直剣が握られている。

だかしかし、僕の意思とは関係なく僕のはゆっくりと道を歩いている……何かを探すように、そうらかいのを切り裂くために。を浴びるために……僕がじる衝が強くなる。

目の前に一人のが歩いている、こちらには気が付いていないのか振り返ろうとすらしない。黒髪は長く腰までび、サラサラと風に揺れている。肩にかけたカバンとは別に、長い袋にった何かを擔いでいる。

剣道部のなのだろうか？　スカートやブレザーのデザインは見えないが彼のスカートから覗く足は白く、とてもらかな印象だ。

足に履いているのは、とてもではないが子高生が履くようなデザインに見えないブーツだが、何かの帰りなのかもしれないな。

まあいい、これが今夜の獲。

よく見ればらかそうな白いだ……で濡らせばもっとしくなるだろう。僕は剣を肩に擔ぐように構えると……哀れな犠牲者へと突進する。

殺す、殺す、殺す、殺す、をよこせ、だ！

獰猛に剣を振るい……哀れな犠牲者が飛沫をあげて倒れる……はずだったが、地面に転がったのは彼の切り裂かれた鞄のみ。

僕の一撃はたかだか普通の子高生によけられている？　どうして？

混する思考の中でふと見上げると、月明かりに照らされて塀の上に日本刀を構えた彼……僕の慕うあの神……黒髪を夜風に靡かせ、僕を驚いたように見つめる……青葉高等學園の制服を著た新居　燈が立っていた。

「甲斐さ……ん……殺人鬼は貴方だったんですか……」

私はなからず揺している。初撃を避けることができたのはかなり幸運だった……殺気をじて飛び退いたが、あまりの斬撃の鋭さに、完全に回避しきれず持っていた鞄が切り裂かれて地面に転がっている。

あの鞄、學校に持って行ってるものではないがそれなりにお気にりだったのにな……としがっかりした気分に包まれる。それと……鞄にれていたいくつかのポーチが地面に散しており、これもまた殘念な気分になる。

し離れた位置へ塀から飛び降り……私は油斷なく日本刀を構える。

目の前に立っている甲斐さんは両手で片手半剣(バスタードソード)を構え、邪悪すぎる笑みを浮かべて荒い息を吐いている。目は走り……は震えていてとてもではないが普通の狀態ではないことがわかる。

『悪魔憑き(ホーンテッド)』

……前世で何度か見た悪魔に取り憑かれた人間の狀態をそう呼んでいたはずだ。

日本では狐憑きと言われるが、前世の魔族達は人に取り憑いて大量殺人を行ったり、悪非道な行をさせることがあった。

おそらく甲斐さんは悪魔憑き(ホーンテッド)で魔族が取り憑いている狀態……この場合は本人の意識があるのだっけな、ちょっと覚えていないがとにかくを乗っ取られた狀態だ。

ＫｏＲでは降魔(デーモン)……つまり異世界の魔をそう稱しているが、私の前世では文字通り魔族のことをそう呼んでいた。

しややこしいが、これは世界が違うから起きている問題として、使い分けている。

しかし……剣を使う、と言うことは『剣の悪魔(ソードデーモン)』だろうか、誰が呼び出した？　誰が甲斐さんに取り憑かせたのだろうか？

「お前……ただの子高校生、とやらではないな？　きが鋭すぎる」

甲斐さんが口を開く……甲斐さん本來の聲だけでなく、もう一人の聲が被ったように二重の聲が響いている。私は日本刀を油斷なく突きつけたまま、彼に問う。

「あなたは『剣の悪魔(ソードデーモン)』……ですか？」

その言葉にし間を置いて、甲斐さんが笑い始める。

狂ったように、そして悲しい表だが、うちなる狂気をめた……そんな不気味な笑顔。

「あの荒野の魔(ウイッチ)とか名乗ったっぽいだけじゃなく、俺のことがわかる奴がいるとは……クハハ、これは面白い……」

甲斐さんは片手半剣(バスタードソード)を地面に軽く刺し、片手で支えながら顔を掌で覆って笑う。やはり……剣の悪魔(ソードデーモン)は魔族の中でもちょっと特殊で、剣自が本で人に使われないと行できない。知あ(インテリジェンス)る剣(ソード)に似ているが、分類としては全く違っていてれっきとした生命だ。

「誰が呼び出したのですか？　荒野の魔(ウイッチ)ですか？」

私は再び問う……荒野の魔(ウイッチ)はこの世界における最強の魔法使い……異世界から魔族を呼び出すこともお手のなのだろう。しかし剣の悪魔(ソードデーモン)とは……。

「あのが召喚したのは間違っていないぞ、……しかしこの世界はどうだ。戦いがない……俺は溢れている憎しみを辿ってこの小僧を見つけた」

甲斐さ……いや剣の悪魔(ソードデーモン)は自分のに手を當てて、とてもおしそうにでている。魔族は負のを好としているし、それに惹かれる。甲斐さんは負のによって剣の悪魔(ソードデーモン)を呼び寄せ、そして何らかの形でこの魔族と契約してしまったのだろう。

「この小僧はな……最初に殺した三人を心から憎んでいたよ……だから力を貸した。おや……お前を見て揺しているな」

剣の悪魔(ソードデーモン)はし私の顔をマジマジと見つめて……再びニヤリと咲う。

「ああ、こいつはお前のことがしいようだな……かなをじるよ、お前を傅かせて好きなようにしたい、とな」

剣の悪魔(ソードデーモン)は顎に手をやって、舐め回すように私のを下から上にのラインをなぞるように眺めると……舌なめずりする。

う……この舐め回すような目は嫌だ……ただでさえ普段から好奇の視線や、に満ちた視線をじて生きているだ。特に同じ高校生の外見をしている剣の悪魔(ソードデーモン)の視線に、背中がゾクリと冷えた気がして日本刀を構えたまま一歩後退する。

「こいつのを満たすために……お前をけなくして……泣きぶお前をたっぷり嬲ってやろう」

剣の悪魔(ソードデーモン)は片手半剣(バスタードソード)を振りかざし、一気に突進してくる。かなり速い……！　人間の限界を超えている速度でそれまで私がいた地面が抉れる。

私は空中にを躍らせてその斬撃を回避すると、し離れた地面へと著地する。そこへ間髪れず片手半剣(バスタードソード)の斬撃が繰り出される。

そのまま剣をけると、日本刀が折れるか曲がるかしてしまう可能を考え、私は刀をらせてけ流す。そのけ流しに、舌打ちをしながら暴風のような攻撃を繰り出す剣の悪魔(ソードデーモン)。

「ハハハッ！　お前は……お前の剣はどこかで見たなぁ！」

暴風のような斬撃を流れるように全てけ流していく私。それを見て不気味すぎる笑みを浮かべる剣の悪魔(ソードデーモン)。一撃一撃は非常に重いが、大丈夫私の技であれば十分全ての攻撃をけ流せる……が、防だけでは反撃のタイミングがない。

「くっ……この世界でここまでけるとは……」

「ハハハ！　依代があれば問題ないのさ！」

剣の悪魔(ソードデーモン)は間髪れずに雷のような突きを繰り出す……私は頬を掠める片手半剣(バスタードソード)をギリギリのタイミングでを回転させてその突きをわす。月に照らされて私の長い黒髪が翻り、勢を戻したと同時に私は、突きを繰り出したことで勢の崩れた剣の悪魔(ソードデーモン)へ斬撃を見舞う。

重い金屬音とともに私の日本刀は片手半剣(バスタードソード)の剣の腹にけ止められ、ギリギリと音を立てる。

「……お前は剣聖(ソードマスター)の技……ミカガミ流の使い手だな？」

剣の悪魔(ソードデーモン)が競り合いの最中に息がかかるくらいの距離に顔を近づけ、笑みを浮かべて問いかける……私は力負けしないように踏ん張りながら、口を開く。私の頬からうっすらとが滴る。

「なぜ……そんなことを聞くんですか？」

「我は剣の悪魔(ソードデーモン)……魔族にして剣(つるぎ)。剣聖(ソードマスター)の技を手にれ、我こそが至高の剣(つるぎ)となるのだ」

そして剣の悪魔(ソードデーモン)は私の日本刀を押し返し始める。まずい……私の腕力には限界がある。前世ならいざ知らずこののは基本的に力押しには向いていないのだ。

私は競り合いを諦めて、力を抜いて後ろへ倒れ込むように力を逃し、地面を蹴って飛びすさり迫ってきた片手半剣(バスタードソード)の追撃を避ける。

「いいねえ、力負けしたとわかったらすぐに距離を取る。クレバーで戦い慣れをしている。年相応ではないな」

剣の悪魔(ソードデーモン)はそれ以上の追撃を避けて、こちらの出方を伺っている。私の華奢な手がビリビリと痺れる……あの短い競り合いでも、完全に力負けしていて手に痛みをじる。手を何度か振って痺れをとる。

「甲斐さんもきちんと鍛えていたから……思っていたよりも腕力があるのね……」

ふと剣の悪魔(ソードデーモン)を見ると、目からポロポロと涙を流している……驚いた私が目を見開くと、剣の悪魔(ソードデーモン)は涙に気がついたように自らの頬に手を當てる。

「こいつ……泣いていやがる。人を殺した時にあれだけ興していたくせに、憧れたの前だとこうまで々しくなるのか」

涙を拭うと、剣の悪魔(ソードデーモン)は笑みを浮かべて……片手半剣(バスタードソード)を私に突きつける。

「支配完了……さあ、第二ラウンドだ。私を楽しませてくれ……」

僕は赤い視界と、かろうじて存続している意識の中で、新居さんがとてつもない能力で僕の攻撃を躱しているのを見ている。

日本刀を片手に戦う彼の顔は……しい。月明かりで黒髪が靡き、剣が掠めた頬の傷から軽くを流しているが……紛れもない焦がれた彼の姿だ。

しかし……彼とこのをかしている異の會話は全く分からない……荒野の魔(ウイッチ)？　剣の悪魔(ソードデーモン)？　これは……この人は何者だ？　僕の知っている、笑顔がとても可い新居　燈という人は単なる子高校生ではないのか？　そしてこのにいる異……深く暗い、どこまでもじる憎悪の持ち主はこう言った。

『剣聖(ソードマスター)の技……ミカガミ流の使い手』

それは一なんなのだろう？

僕はふと悪寒をじる……目の前に見えている新居さんの目に宿っているを見て……それが普段の彼にはない、とてつもない暗い何かであることをじて……恐怖を掻き立てられるが、そこで自分を支配する何かに自分の意識が塗り替えられていくことをじる。

最後に殘った意識で僕は疑問を……思い浮かべて闇の中へと溶け込んでいく。

『新居さん……君は一何者なんだ……僕の知っている君は……何者だったんだ……』

_(:3 」∠)_ そのうちインテリジェンスソードの話でも作ろうっかな

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