《【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。》第四〇話 認識阻害(オブストラクション)
「お、これはこれは新居殿ではないですか。お元気ですか?」
エレベーターを降りると、目の前に馬鹿でかい炭酸飲料のペットボトルを抱えている男が立っていた。
この男はKoRJ技部の主任である臺東 博士(たいとう ひろし)。確か年齢は三〇代、スキンヘッドに分厚い眼鏡で首にはタオルをかけた小太りの男だ。
私はよく知らないが、し前のアニメの主人公をプリントしたTシャツの上に白を著用した……とても特徴的な外見の持ち主だ。背はそれほど高くなく、一六三センチメートルくらいしかないので……私はし見下ろすような格好になる。
「こんにちは、臺東さん。元気ですよ、臺東さんもお変わりなく」
「デュフフ、今日は八王子部長に用……おお、青梅殿も一緒ではないですか」
先輩を見つけると、珍しそうな顔で先輩にニチャリと笑いかける。先輩はし苦笑いを浮かべると頬を掻きながら、ど、どうも。と挨拶をしている。確か先輩は臺東さんが苦手なんだよな……。そんな中でも臺東さんは暑いのか、何度も首にかけたタオルで汗を拭い、手に持ったペットボトルから直接中を飲んでいる。
「グフゥ……ちょうど某(それがし)も八王子殿の部屋へ行こうと思っていました。ぜひご一緒しましょう」
臺東さんは見た目や言はちょっとアレだけど、設計技師、新技を使った品の開発では並ぶものがいない。私の使っている日本刀も彼が設計している……ということで私は彼のことを信用している。
細かいオーダーや、微調整なども文句も言わずに付き合ってくれて、意見をちゃんと聞いてくれる人なのだ。
ちなみに微調整のお禮にお菓子を差しれたことがあるのだが、その返禮としてが魔法となって活躍するアニメのブルーレイを貸してくれたのだが、殘念ながら私はそのアニメのストーリーがいまいち気にらず、全て視聴できなかったことを謝罪して返卻した記憶がある。
『趣味は人それぞれですからな……今度は新居殿が気にるようなアニメをご紹介しましょう、デュフ』
と嫌な顔一つせずに謝罪をけれてくれて、この人は案外優しいなと思っている。
とまあ、見た目よりも面はかなり紳士な臺東さんの案で八王子部長の部屋へと向かう。
「そういえば新居殿、エフエフはクリアしたのでござるか? 某(それがし)は先日クリアしましたぞ」
エフエフ……最新型ゲーム機で発売されている、ファンタジーファクトリーというとてもメジャーな人気ロールプレイングゲームを私と臺東さんは発売日に一緒に販売店で購して遊んでおり、進捗狀況をお互いで話したり攻略報をメッセンジャーアプリで換したりしている。
「あと一ステージでクリアだと思います、ロナウドさまがバイクでミーシャを追いかけていくシーンでしつまづいてまして……」
「オウフ、そこまで進んでいるならもう後しですぞ」
ファンタジーファクトリーの主人公金の髪をした大剣使いのソルジャー・ロナウドさまが、悪の魔王であるテスタロッサに攫われてしまうヒロインを高速道路上をバイクで追いかけるステージがあり、私はそこでうまく作ができずに進めなくなっている。
ってかなんで魔王はを攫うのか、これは前世今世問わず永遠の疑問ではあるのだけど。
ロールプレイングゲームだがアクション要素が強く、そもそもゲームがそこまで得意ではない私としては、なかなかに難しい難易度なのだ。
「でもあのバイクで高速道路上を走って剣を振り回すシーン、ちょっと憧れますね」
私はニコニコと笑いながら臺東さんに話しかける。そんな會話をしていることに多驚愕した顔の先輩が橫にいるが……あえてここでは突っ込まないことにしよう。
「そういえば、免許は取られたのですかな? ロナウドさまみたいに走ってみたいと仰られておりましたな」
「あ、先日取りましたよ。まだバイクはお父様が許してくれなくて買えないのですけど」
そうなのだ、実はバイトの合間にコツコツとバイクの免許を取得するために、教習所へと通っていたのだ。そして念願かなって……學校には緒なのだが、免許を取得している。
初めて通った教習所では教がとても優しく……多エロい目を向けられたりもしたが、ほぼストレートで卒業しているのだ。
「新居さんがバイク?!」
先輩がし驚いたような顔をしている……何かおかしなことを言ったのだろうか? 私はキョトンとした顔で先輩の質問に答える。何がおかしいのだろうか。
「はい、エフエフみてたらロナウドさまみたいにバイクで走ってみたくなりまして……何か変だったでしょうか?」
私が全く先輩の言葉が理解できないという顔をしていると、先輩はとても頭が痛そうな……とても悩み事を抱えたかのような渋い表で、頭を左右に振って口を開く。
「い、いや……バイク乗るように見えないので……驚いただけだよ」
バイクに乗るように見えない? というのはなんでだろうか? 私としては現世における馬……騎乗した騎士みたいだな、と思った。
ノエルの記憶にある馬で走る爽快……まあ飛竜(ワイバーン)ほどではないのだがその覚に近いかな、と考えたわけで……教習所で軽く乗ったじだと、似て非なるものだが風を切って走る覚がとても心地良かったため、頑張って通ったのだった。
「お父様がバイクは危ないって、購を許してくれないんですよねえ……せっかく中型免許でも乗れる可いSS(スーパースポーツ)を見つけたんですけどねえ……」
「SS(スーパースポーツ)を可いというのは新居殿だけですぞ、グボォ」
臺東さんは再び汗をタオルで拭いながら、手に持ったペットボトルから炭酸飲料を飲んでいく。そして何を話しているんだろう、と私の顔を何か得の知れないものを見ているかのような顔で見ている先輩が呟いた。
「ぼ、僕の知らない新居さんがいる……いったい僕は何を見ているんだ……僕の見てきた清楚で可憐な新居さんはどこへ……」
私はちょっとだけ、その先輩のセリフを聞いて思った。そんなもん、最初からいませんねぇ……。
「そうだな……畫の件はこちらでも認識している。しかし報告上では任務中に人の立ちりや、生命反応などは観測できていない」
八王子さんは私たちの話を聞いて……し困ったような顔で私たちに狀況を告げる。KoRJでは構員が任務にあたる場合に現場から半徑一〜二キロメートル以の範囲を隔離封鎖している。その際に職員の一部が生命探知などの機材やドローンなどを使って人の出りや殘留を調査している。
そのおかげで私たちは安心して現場で暴れることができているのだが……あの畫の撮影自も、どうやっているのかさっぱり判らないのだそうだ。
「困りましたね……僕や新居さんは高校生なので……バレすると生活が脅かされる可能もあります。このままだと活自ができなくなってしまう恐れが……」
先輩が八王子さんの話を聞いて顎に手を當てて……考え込んでいる。私も同じ想だ。高校生でしかない私の私生活が脅かされるのだけはとても避けたい事態で……第一気楽にパフェやお菓子を買いに行けなくなるなんて想像するだけで恐ろしい事態なのだから。
「そうですな……そこで某(それがし)達技部門では、こんなものを考えてみましたぞ」
臺東さんが端末を作して……モニター上に小さなペンダントや、髪飾りのようなものを表示させる。これは……隨分とファンシーなアイテムに見えるが……。訝しげな私たちの顔を見て臺東さんが笑いながら説明を始める。
「これはですな、我々技部門が開発中の『認識阻害(オブストラクション)』フィールドを発生させる裝置ですぞ。見た目はテスト用なのでにつけやすいものをベースに設計しておるのですが」
スペックをモニター上に表示していく臺東さん。裝著者を中心に半徑數メートル以で裝著者を視認した相手の視覚報を誤魔化すのだと表示されている。
「人間の視覚報は神経を伝達して脳へ報の電気信號を送っている、と考えられております。この認識阻害(オブストラクション)裝置はその視覚報に影響を與えて、間違った視覚報へと差し替える技です」
臺東さんの説明が延々と続くが、まとめると以下のような話だった。
認識阻害(オブストラクション)フィールドに包まれた狀態の対象を一般人が視認すると、視覚報に全く別の報を割り込ませて違う姿として記憶させることができる。
今のところ実験では職員同士で使用した際に男が直立する黒い影のような姿に見えたり、がアニメキャラクターの男に見えたりすることがあったという。
この相手に見えている姿、というのはコントロールできないためどのような姿に見えるのかは人によって違う。ただ、有効範囲から離れると真の姿は見えてしまうし、聲なども誤魔化すことはできない、のだという。
「これがあるだけでかなり違うはずです。微弱な電波を広範囲にばら撒くため、電子機へのジャミング効果があります。多の遠距離からのスマホやカメラでの撮影などにも影響が出ますぞ」
これはかなり高能だ。先輩もかなり嬉しそうな顔をしている。八王子さんだけがあまり良い顔をしていない……なぜだろう? と思っていると八王子さんが臺東さんに質問を始めた。
「高能だが……我々の機にも影響が出るのではないか? それと今までこのような裝置を作るだけの技力がなかったと思ったが……」
臺東さんはペットボトルから炭酸飲料を軽く煽ると、口元を袖で拭いて笑いながら答える。白の袖に炭酸飲料を拭いた跡が著くが、本人はあまり気にした様子もない。
「そうですな、今開発中としているのは、KoRJの機にも影響が出るため、そのジャミング効果をクリアするための裝置開発を進めているのが一點。もう一つはこの技を立案、開発した責任者だった職員が……二日前から行方不明という狀況だからです。どうやら……何かしらの事件に巻き込まれたのだと推測できます」
それは……大問題だ。八王子さんは頭を振って……ため息をついている。すると彼の手元にある端末から警報音が鳴り響く。し端末の畫面を凝視していた八王子さんは、私と先輩に顔を向けると……頭を下げた。
「問題の解決まで裝置の支給は見送らせてしい、申し訳ない。それと降魔被害(デーモンインシデント)発生の報告が來ている……対応してもらえないだろうか?」
_(:3 」∠)_ バイクに乗るシーンをそのうち書きたいと思って免許取らせた(オイ
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