「ムカついちゃったな〜、絶対倒すわ。ちゃんと力を貸しなさいよ全て壊すもの(グランブレイカー)」

『……いつも貸してるじゃないか……それはカウントしないのか？』

「あ？　なんか言ったか？　いつでも海底に叩き込んでやってもいいのよ？」

『……なんでもないです……お好きにどうぞ……』

ブチ切れモードの私の思考は恐ろしくシンプルに、まるで自らが一本の剣になったかのようなそんな覚に包まれている……私はノーモーションからいきなり虹大蛇(レインボウサーペント)の背後へと現れる。

振り向く間も無く、私の斬撃が虹の鱗を切り裂く……だがし淺い、怪はをくねらせながら距離を取ると、魔法を発していく。

「「水よ凍れ、そして貫け！」」

虹大蛇(レインボウサーペント)の眼前に氷の槍(アイスジャベリン)が數発生み出される……こいつは氷系統の魔法の中でも攻撃力の高い魔法だったな。だいたい一メートルくらいの長さの氷でできた塊を飛ばすが、その速度は矢よりも早く、度も高いため人間のは簡単に貫くことができるし、頭にでも當たったら致命傷だ。

大気中の水分を凍結させることもできるけどちょっと手間で、手持ちの水などをに使って発させた方が効率がいい……それ故に海とか湖とか、水のある場所だと構築に魔素をそれほど消費しないから連ができる。

「ミカガミ流……螺旋(ラセン)」

氷の槍(アイスジャベリン)が私に向かって飛んでくるが、私はその飛來してくる魔法に向かって軽く刀を振るう……防に特化した技である螺旋(ラセン)だ。

この技で敵の咆哮(ハウリング)を防できるのは既に実証済み……特にこの氷の槍(アイスジャベリン)は氷で出來ているんだから、斬れるに決まってる。

甲高い音を立てて弾かれた後、勢いを失って私の周囲へと叩き落とされる氷の槍(アイスジャベリン)を見て、虹大蛇(レインボウサーペント)が驚きの表を見せる。

「「……！　魔法が！」」

「當たり前でしょ、これ、魔法って言ったって理攻撃に近いんだから防げるわよ、當たり前じゃない」

彼の疑問に答えた後、ゆらりとを揺らした私は一気に突進する……あの神攻撃(マインドアタック)を何度も叩きつけられてたまるか。

これだけでは効果がないと慌てた虹大蛇(レインボウサーペント)は複數の氷の槍(アイスジャベリン)を作って、速してくるがそんなもん當たるか！　しだけ足に力をこめて姿勢を下げたのち、私は一気に技を放つ……。

「ミカガミ流……朧月(オボロヅキ)」

「「うぎゃあああっ！」」

私の姿が一瞬で消えたことで見失った怪は左右を見る……だがそこには私はいない、私は死角から斜めに怪を袈裟懸けにする。

一瞬遅れて、切り裂かれた傷口からが噴き出す……私はるように別の場所へと著地すると刀を構え直し、虹大蛇(レインボウサーペント)の出方を伺う。

怪のが震え、怒りの表を浮かべたWor(ワー)様の顔が私を見ている……だが、違和がすごい、やっぱり彼は小顔じゃないとなー……。

「ちょっと聞きたいんだけど……Wor(ワー)様は元に戻せるの？」

「「……なんだ、お前僕を元に戻すって、何を言っているんだ……この人間は自分から依代になったんだぞ、繋がりを斬るまで離れるものか」」

虹大蛇(レインボウサーペント)の素の聲だなこれは、ならそのつながりってやつを斷ち切れば、元に戻って明日はライブで歌を聴ける、とそういうことでいいよな？

ならちょっと今まで使い所がなくて使ってなかった技を使わせてもらうとするか……ミカガミ流の剣は刀による理攻撃がメインなのだけど、け継がれてきた歴史を紐解いていくとやはり儀禮などで使う技も多數殘っている。私は一度刀を鞘へとれ直すとふわりと優しく、まるで凪いだ風のように抜刀し刀を振るう。

「ミカガミ流……絶技、黎明(レイメイ)」

「「……？　な、なんだ？　何も斬れていない……不発か？」」

斬られたはずの虹大蛇(レインボウサーペント)が自らのを確認するが、どこも斬れていない……そりゃそうだ、この技はなんか斬らないんだから。

この技が斬るのは繋がり……儀式などで刀を振るい対象に降りかかる悪意とか、憑き、そして呪いなどを斷ち切るために開発されたからだ。

ノエルから數えて十數代前の剣聖(ソードマスター)は、國家に使える神としての役割も擔っていた、その人は戦に赴く戦士たちのの安全を守るためにこの優しさすらじる黎明(レイメイ)を編み出した。

「いいえ、斬れてますよ、あなたとWor(ワー)様の繋がりがね」

その剣聖(ソードマスター)の加護は絶対的で、戦にでた戦士がふとした幸運で命を拾ったり、呪われた対象を救ったこともあったらしい……だが、この優しい技はその後あまり使用されることはなくなった。

やはり力こそ正義というか、代をぐごとにミカガミ流でも理的な強さを求める風が強く結果的に絶技であるにもかかわらず、この技は日の目を見ることがなくなっていった。

ノエルは何度か使ってたらしいけど、全て壊すもの(グランブレイカー)で殲滅する方が格的にあってたんだろう……それと、仲間にアナという希代の聖がいたことで、彼の領分に踏みるのも気が引けたのかあまり振るうことはなかったようだ。

「「……な、なに……が……」」

「この技は対象の繋がりを斷ち切る……どういうやり方か知らないけど、依代にしてるってんだからなんらかの繋がりを持ったんでしょ？」

虹大蛇(レインボウサーペント)の腹部に大きな裂傷が走る……だがその場所からはは噴き出さない、まるでその部分だけが別の空間に接続しているかのように眩いを放ち、そこから人の頭がぬるりと現れる。

Wor(ワー)様だ……彼がステージ裝のまま、その傷口からずるずると吐き出されていく……それと同時に怪の頭部が変形していく、それまでの顔ではなく大蛇の顔へと……鋭い牙と、黃金の瞳を持つ神の使い(セイクリッド)そのものへと変化していくのだ。

「「……維持できない……！　そんな馬鹿な！　このままでは……」」

『依代がなくなった神の使い(セイクリッド)はそのまま世界に殘ることはできない、持って數分だ』

「……待ってりゃ消滅するんでしょうけど……あんたムカつくわ」

「「……何を……ぐぎゃあっ！」」

私はそのまま虹大蛇(レインボウサーペント)のへと斬撃を叩き込む……鱗を斷ち切る覚と、が舞う……痛みで悲鳴をあげる怪にさらに私は斬撃を叩き込んでいく。

「私の頭にポンポンポンポン攻撃してくれちゃってさ、あんた一何様よ」

「「……ぎゃあっ！　や、やめ……」」

「うるせえな！　乙の怒りを思いしれ！　このクソ蛇が！」

「「や、やめ……やめろぉ……や、やめて……くださいぃ……！」」

逆手に持った刀で何度も何度も虹大蛇(レインボウサーペント)のを差し貫く……その度に化けの悲鳴が上がる……だが私はブチ切れたままクソ蛇の頭を毆りつけ、刀を突き刺し、そしてを膾切りにしていく。

だがさすがは神の使い(セイクリッド)……既に頭以外は切り裂かれて、まみれになっているがまだ生きている……これで當分こっちの世界に悪さなんかできないだろ。

痙攣しつつ、地面へと橫たわっている虹大蛇(レインボウサーペント)のがほのかに出す……そろそろ時間切れか。

「「……お、お前の顔は覚えたからな……次、次あったら絶対に殺してやるぅ……」」

「捨て臺詞言ってないでさっさと死ね！　二度とここにくるな！　クソ蛇！」

頭を思い切り蹴り飛ばした瞬間、虹大蛇(レインボウサーペント)が消滅する……いや正確に言うと依代を失って別の世界へと送還されたと言うことだ。

ったく……私は刀をくるりと回して鞘へと放り込むと、あたりで倒れている人たちの様子を見る……數人は既に息がない、おそらく最初に犠牲になったのだろう。

Ｗｏｒｄ　ｏｆ　ｔｈｅ　Ｕｎｄｅｒｗｏｒｌｄのメンバーはちゃんと息があるが、意識がない……床に倒れているWor(ワー)様は粘っぽいものに塗れているが、軽くに手をかざすと、息がある……よかった。

次第にあたりの空間から嫌なじが抜けていく……通常のライブハウスへと戻り始めているのだろう。

「……め……聞こえるか？　戦乙(ワルキューレ)、応答しろ」

「聞こえます、通信途絶してましたか？　もう原因は解消しました警察にってきてもらっていいと思います。それと數人犠牲者が出ています」

リヒターの冷靜そうな聲がインカムに聞こえる……私はWor(ワー)様の隣に膝をついて座りながらインカムに答える。そういやインカムでの連絡全然きてなかったな。

き聲が辺りからも聞こえてくる……さっさと退散しないと私顔見られちゃうかもな、そう思って立ちあがろうとした私の手を誰かがしっかりと摑む。

「……え？」

「……君は……神……それとも幻？」

聲の方向を見ると私の手を握っているのは、Wor(ワー)様だった……かなり辛そうで意識もし朦朧としているのかもしれない。

再び私は彼のそばへと座るとそっと微笑んで、彼の額に手を載せて軽くでる……うわっ、すっごいが綺麗……とても男とは思えないくらい手れしてるなあ。

「大丈夫です、もう助けがきます……それまで休んでいてください」

「……名前……教えて……お禮を言いたい……うっ……」

し辛そうな表でWor(ワー)様が私に問いかける……名前教えて、って言っても私の名前言うわけにいかないしなあ……でも今彼は朦朧とした意識で話しているから、今名前言っても覚えていない可能もあるしな。

うーん……私はし悩むが、彼が安心するならと私は彼の手をもう一度そっと握ると彼に答える。

「……燈です、今は休んでください、Wor(ワー)様……」

「ありが……と、燈……ちゃ」

そのまま彼は意識を失う……うう、Wor(ワー)様に私の名前読んでもらっちゃったー！　なんだか嬉しくなって私は彼の手をそっと離してから思わず恥ずかしくなってしまい、中途半端なスキップを刻んで歩き始める。

なんかミカちゃんにも自慢できない思い出ができたじで、しだけウキウキした気分になっちゃうな……目が覚めたら全部夢だった、と思うだろ現実味がないし。

扉を開けて外へ出ていくと私とれ替えで警察たちが中へとっていく……さ、これで今日の仕事は終わりだな……私は歩きながらインカムに話かける。

「任務完了、帰ってお風呂りたいです……送迎お願いできますかね？」

_(:3 」∠)_　お怒りだと男言葉になる、って設定をすっかり忘れていまさら頑張る

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