《【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。》第二一九話 神を欺く者(トリックスター)

「でまあ、元のが破壊される寸前に出を……おい、新居は何故そんなに不満そうな顔をしている」

「普通怒るでしょ、あんなの……本気で心配したのに……」

不満気に頬を膨らませている私を見て、竜牙兵(スパルトイ)のっているリヒターは何が不満なのだ、と言わんばかりに頭をかしげる。

いや、フツー怒るだろ! あの後先輩や八王子さんが必死に止めたおかげで、壁にかかってた絵畫が真っ二つになったくらいで収まっているけどさ。

暴れたのは私が悪いとしてもだ、あんな茶化した言い方をすることはないだろう?! ムキー!

「まあ、今からどうして私が生きているのかを説明してやる大人しく聞くように」

「うん、僕も気になりますよ。だって一回は魔王に倒されたわけですよね?」

先輩の言葉に心葉ちゃんも頷く、まあ皆が聞きたいなら今は大人しくしておくか……目の前に置かれたカップからコーヒーを飲みながら私はリヒターが話し始めるのを待つ。

私が大人しく聞く勢になったのを見てから、リヒターは口を開く……どうでもいいけど、竜牙兵(スパルトイ)が白を著ているという図はちょっと斬新だな。

「まず不死者(アンデッド)になるには、一度死ぬ必要がある……は死ぬが魂はそのままの中へと封じられた狀態、それが不死者(アンデッド)と考えて良い。だがその魂はに縛られ続けるのか? というのが私の最初の疑問だ」

不死者(アンデッド)の大半は魂が縛り付けられたまま、死んだかしている狀態……これは前世のノエルも知っている知識だ。だが、その枠にとらわれない不死者(アンデッド)も存在している。

幽鬼(レイス)や亡霊(ファントム)と呼ばれるを持たない者達……魂だけの存在として視認もできるし、ある程度の知と意識を持って行できる特殊な不死者(アンデッド)でもある。

ちなみに魂だけの存在であるが故に、理で毆っても死なないと言われるが一応実化しているときは理攻撃も當たる。當たるんだけど理攻撃で魂へ打撃を與えるのは至難の業なので効果が薄いだけだ。

「幽鬼(レイス)のようにに縛られずに魂だけを切り離すことができれば、永遠に偽りの生を生きることができるのでは? というのが発端だ。一度が滅びても代わりのへと移することで何度でも復活できる……」

「つまり、リヒターはその竜牙兵(スパルトイ)に魂をうつしたことで死を免れている、と?」

リヒターはその言葉に頷く……ゲームの殘機システムみたいな話だな。でもそれだとリヒターはいくらでも殘機がある時點で死なないし、復活できるというのはちょっと狡い気がするなあ。

そんな私の顔を見て、リヒターはカタカタといつものように笑いを表現すると、白骨化した指を左右にふる。

「理論的にはそうなのだが、このやり方には々問題があるのだ。例えば他人のに魂を移した場合、元のとの差異、魂ののサイズの違いが顕著に影響を與える」

うーん、だんだん混してきたぞ……のデカい人は小さな人をれることはできるけど、逆は難しい。魂のサイズなんてことは考えたことはないのだけど、そういう解釈であってるかな。

つまりはリヒターはの小さなやつってことでいいのかな? 私が碌なことを考えていないと理解しているのか、突然額にその白骨化した指をぐい、と突きつけると彼はカタカタと揺れる。

う、こういう時だけやたら反応がいいし、相手の心を読んでるんじゃないかと思うくらいの反応速度で困るな……。

「新居は今こう思ってるな、が小さいリヒターだからどうにかなってるんじゃないか? と。それは間違いだ……」

「燈ちゃんそんなこと考えてたの? リヒターに失禮だよ」

「う……すいません……」

なぜか先輩に責められてしまい、しょげて小さくなっている私を見ると、リヒターはふふん、と再び笑う。うう、なんで私が先輩に責められにゃいかんのだ。

リヒターは大人しくなっている私をみて、満足そうな顔をすると先輩に懐から袋にった飴玉を取り出すと手渡す……餌付けか!

「続けるぞ、魂の適合との相などにもよるので一概に大きさだけで話が終わらん。それ故に移できる先は限られてくるし、生きている人間への移はモラル的にもご法度だ。で、今回は急避難として私が特別に改造している竜牙兵(スパルトイ)を使用したが、それの弊害が出ている」

弊害……つまり完全には適合できていないということなのだろうか? リヒターは軽く何かをつぶやくと、目の前に小さな火霊(サラマンダー)を召喚する。

火に包まれた蜥蜴のような外見をした火霊(サラマンダー)は前世の世界では案外メジャーな存在で、使役もしやすいことから冒険者の間でもお手軽に使われていた霊(スピリット)の一つだ。

竈門に火をつけたり、焚き火を維持したりと使い勝手が良くて、ると火傷するけどちょっと仕草が可いのだよね。だがその小さな火霊(サラマンダー)を見るとリヒターは殘念そうに頭を左右に振る。

「……この竜牙兵(スパルトイ)のでは私の魂を収め続けるには小さすぎる……無理やりに詰め込んでいるから不安定で能力の半分も出すことができない、今私はこんな小さな火霊(サラマンダー)を呼び出すつもりでを使ったわけではないのだからな」

「でも、こうやって実際に移したのですから何度も功してるんですよね?」

先輩がリヒターを心配したのか、し不安そうな顔で疑問を伝えるが、リヒターは顎に手をやって……不気味に眼窩の中で赤くる目を瞬かせる。

が大きい……そしてそれは単純なの大きさではない、というのも問題だよな。何かしらの適合條件というのがあるのだろう、それは現代醫學で行われる臓移植などとも似たようなものなのだろう。

「まあ、倒されてから移功したのはこれが初めてだ……理論としてはわかっているし、を殘して短時間の移は異世界で経験済みだったが、元のが無くなってしまったからな。八王子、は修復可能だろうか?」

「ん? 初めて? もしかしてぶっつけ本番でそれやったの?」

「何かおかしいか? 私だって死ぬのは怖い、失敗したら死んじゃうんだぞ? もう死んでるけど」

なんて奴だ……こいつ本當にブッチギリに頭おかしいよ。私は頭痛がしてきて思わず頭を抱える……死ぬかもしれないって時に短時間の実験だけ功した行をやってのけるか?

下手すると消滅の危機すらあったのに……咄嗟にその選択肢を取ることができるなんて、英雄の素質があるのではないか? とすら思う。

まあ、実際のところリヒターは恐ろしく強いし、不死の王(ノーライフキング)としては前世では比類するものがいないかもしれないな……リヒターの能力や探究心を考えると、ノエルが戦ったディーレットってめちゃくちゃ弱かったんじゃないかと疑いたくなる気分だ。

『……ああ、あの不死の王(ノーライフキング)のことか……別に弱くはなかったと思うぞ、彼の専門分野は死霊魔(ネクロマンシー)で、相當なレベルだったと思う……』

それまで黙っていた全て破壊するもの(グランブレイカー)が急に話しかけてきたので思わずビクッ! とを震わせてしまう……びっくりした。

でもリヒターみたいな奇想天外な発想はなかったと思うんだよね、ディーレットって。記憶では魔法使って正面決戦を挑んできていたわけだし、殺した後に復活はしていなかったんだよね。

私の想に全て破壊するもの(グランブレイカー)も同じように心したかのような言葉を伝えてきた。

『まあ、殺した後に復活してくるなんて、それこそ化けの範疇だからな……しかし、驚いたリヒターは死すら欺くことができるのだからな……まさに賢者にして愚者とはよく言ったものだ』

「確かにリヒターは殺した……だがあれはしぶといからな……死を欺くことなど容易いだろう。それ故に彼は異世界最高の不死の王(ノーライフキング)だ。ただ戦闘能力は封じていると判斷する」

リムジンの後部座席に座っているアンブロシオは、目の前に座るエツィオの顔を見ながら薄く笑う……もたらすもの(ライトブリンガー)を使っても、リヒターを殺すことは難しい。

友人であったが故に、彼が死の神すら欺きそして死そのものを裏切ることを考えているのは理解していた……だからこそ自ら戦いに挑んだのだが、結果的には戦闘能力を大幅に奪うことには功している。

「リヒターは殺せないってことかい? そんなの無敵じゃないか」

「それもまた違うな……彼は確かに殺すことは難しいが、一時的にでも能力を制限することは可能だ。永遠の時を生きる存在ではあるが、の能力に大きく左右される。おそらく今のやつはなんとか魂を維持するだけで一杯、戦うことは難しいだろう」

エツィオが困ったように眉を顰めるが……アンブロシオは黙って首を左右に振ると、彼の問いに答える。アンブロシオもまた長い時を生きている存在ではあるが、それは魔王(ハイロード)として目覚めたことによる権能が関係している。

呪いと言っても良い……それに不死ではないため、を滅ぼされれば死ぬしかない。いや、死ぬという概念自が正しいのか、それすらもわからない。

「……魔王様は死ぬってことはあるのかい?」

「愚問だな、組織は人と変わらない。魔王(ハイロード)とは何か? それは魔を極める存在であるだけだ。古い時代の魔王(ハイロード)は老いて死ぬこともあったそうだ。むしろエリーゼこそあの仲間の間で最もそういった事に拘りそうな気がしたがな……」

アンブロシオはあくまでも表を変えずにエツィオの疑問に淡々と答える……そう、魔王(ハイロード)も老いて死ぬ事がある、彼自が生き続けている理由はまた別にありそれは別に答える必要のないものだ。

アンブロシオからしたら、エリーゼが苦しみながらも死をれた、という事実の方が驚くべき事なのだ……ノエルを生き返らせるためであれば、普通の生を簡単に投げ捨てるくらいはしてのけただろうから。

エツィオの記憶にあるエリーゼが、ノエルを復活させようと躍起になっている時に、不死者(アンデッド)への道を歩まなかったのは、もし生き返らせる事ができたとして、ノエルと不死者(アンデッド)となった自分……醜い姿で會いたくない、という乙心であったが今ではそれを謝するしかない。

「……ま、そのおかげで僕は新居 燈を手中に収める事ができるかもしれないからね、その點死んでくれて謝しているよ、前世のエリーゼ・ストローヴがね」

_(:3 」∠)_ 広義の意味では死んでるけど死んでいない=神の定めた法を欺くもしくは破る、のでリヒターはトリックスター的な立ち位置です

「面白かった」

「続きが気になる」

「今後どうなるの?」

と思っていただけたなら

下にある☆☆☆☆☆から作品へのご評価をお願いいたします。

面白かったら星五つ、つまらなかったら星一つで、正直な想で大丈夫です。

ブックマークもいただけると本當に嬉しいです。

何卒応援の程よろしくお願いします。

    人が読んでいる<【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください