《【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。》第二二二話 樓(ウォッチタワー)の戦い 〇二
「……そろそろ上空です。どうやって近づきます? し離れた場所に著陸してから移した方が安全かなって思いますけど」
「あまり近づくと樓(ウォッチタワー)の防衛圏にってしまうだろうからな……ギリギリまで近づいて降下した方がいいだろう」
KoRJのチャーターした輸送用ヘリコプターの中で、私や心葉ちゃん、先輩に志狼さんが樓(ウォッチタワー)攻撃のための準備を進めている。
目の前にある小型のモニターにの中では、東京支部に殘っているリヒターと八王子さんがこちらをじっと見ている……リヒターは一緒に行きたがっていたが、戦闘能力が激減している狀態なので流石に出撃はできず支部で留守番となっている。
八王子さんも現場に……と話していたが、殘念ながら政府との連絡役として殘らざるを得なくなっており結果的にこの四人での行となっているのだ。
「……大阪支部にも応援を頼んでいるんだが、大阪市で大規模な降魔(デーモン)被害(インシデント)が起きているらしい、海外の支部からも似たような連絡がっている、どうやら魔王側の総攻撃が始まっているようだな……」
「……東京支部は大丈夫ですか?」
先輩が心配そうな顔でモニターに話しかけるが、八王子さんの肩越しにの顔がひょこっと姿を表す……最近全然顔を見てなかった稲城 雛……ヒナさんが笑顔でこちらに手を振っている。
ああ、ヒナさんと八王子さんなら問題ないか……ヒナさんの戦闘能力が十分高いし、八王子さんも部長になる前は現場で戦っていた人だって言うしな。
ちなみに現役時代の八王子さんのコードネームは勇士(ヘラクレス)、今のスーツ姿が微妙に似合っていないのもなんか納得するんだよな。
「私と雛君がいればこちらは対応可能だ、安心してたたか……おいこら、何してる!」
「みんな〜久しぶり〜、すーちゃんはもうし優しい顔してね、皆張しちゃうわよ」
「あ、こ、こら! 顔を引っ張るな!」
「……モニター切ります?」
「ま、まあいいんじゃない? そろそろ目的地だし……」
心葉ちゃんがモニターでイチャコラしてる八王子さんとヒナさんを指差して、呆れた顔で私に尋ねる……その時ヘリコプターがまるで気流にでも巻き込まれたかのように大きく左右に振られる。
それと同時に機を揺らす発音と強い衝撃で再びヘリコプターの機が大きく揺れ始める……攻撃をけている?
警報のアラームが鳴り響き、私たちは慌てて近くにある落下防止用のロープにしがみつく……すぐに機のバランスが元に戻るが、アラームはずっと鳴ったままで、スピーカーからパイロットの張した聲が響く。
「すいません、想定より早くあの樓(ウォッチタワー)って変なからの攻撃が始まってます、急で著陸勢にります。捕まってく……うあッ!」
「な、なに?!」
次の瞬間、機を震わせるような再び大きな振が加わる……そして輸送室の前にあるはずの縦室との壁がいきなり火を吹いて吹き飛ぶ! ま、まずい……私たちの視界が一気に開け、そこには黒い巨大な塔からまるで対空砲のように黒い球が吐き出されているのが見えている。
直撃?! まだ防衛圏外じゃなかった? 私たちが構える中ぐらり、と機が傾いていく……そりゃそうだ、縦室ごと吹き飛ばされているんだから落ちるに決まっている……変に冷靜な頭で視界の中に山の斜面、多くの木が立ち並ぶ景が見えている。
「……青梅君、新居さんを頼む。四條さんは僕に捕まって」
「了解です! 燈ちゃん!」
言うが早いか、志狼さんが一瞬で銀の狼獣人(ウェアウルフ)へと変化すると、心葉ちゃんをそっと抱き抱えて輸送室の床を思い切り蹴り飛ばす……獣人の凄まじい破壊力でヘリコプターのハッチが吹き飛ばすと、彼は心葉ちゃんを抱えてそこから飛び出していく。
私は先輩のばした手をしっかりと握る……彼はそのまま私を引き寄せると、しっかりと抱き抱える。あ、なんかこう言うの新鮮でいいなあ、彼の溫をじてあったかぁい……私がそんなこと考えている間に、私たちは志狼さんの後を追って破壊されたヘリコプターから空中へと飛び出した。
空中へと飛び出した私たちは次第に落下速度を上げていく……先輩の背中に回した手のから、私は彼がパラシュートっぽいものを全くにつけていないことに気がついて先輩へと尋ねる。
「先輩、パラシュートしてないですけど……どうやって降ります?」
「たまには僕にもいい格好させてよ、このくらいの高さなら空中浮遊(レビテーション)を使いながらで対応できると思う」
そんな便利な能力が……先輩がずっと強くなろうと努力をしているのは私も認めているところで、そう言うところがやっぱり私にとってずっと魅力的に寫ってるんだよなと思う。
私が不安そうな顔をしているのに気がついたのか、先輩は私に向かってニコッと気持ちのいい笑顔を浮かべる……ほんのし頬に朱が差しているのは私が抱きついているからか。
ここは、先輩を信じよう……そのまま彼の背に回した腕で彼のにぎゅっと著する……その行に先輩が息を呑む聲が聞こえたけど、今はこれでいい……せっかくだから今回は守ってもらおう。私は彼の耳元にを近づけてそっと囁く。
「わかりました、先輩に甘えさせてもらいますね……私のこと、ちゃんと守ってください、信じてます」
「おー、撃墜……なかなかいいじゃない、こいつ」
樓(ウォッチタワー)の麓で空中で発して炎上しながら落下するヘリコプターを見ながら、空を見上げているが一人……番人としてここに配置されている立川 藤乃が心したような聲をあげる。
番人とは言っても防衛側の人員はエツィオと立川の二人しかいない……魔王様は煉獄の花(ヴルトゥーム)の管理に手を取られており、人員不足も甚だしい狀態だ。だが、いくら信用できない連中を置いたところで戦力にはならないと判斷を下している。
「他の場所には雑魚しか配置していない……ただ樓(ウォッチタワー)の防衛能力と合わせればそれなりの戦闘能力は発揮するだろう、だから僕と君の守る二本が要になる」
「ふーん……他は囮ってことでいいですか?」
「まあ、そう言うことだな……KoRJの連中には知られていないがもう煉獄の花(ヴルトゥーム)育に必要な瘴気はほとんどない、あとは時間がかかるだけなんでね……タイムアウトまで粘れば僕らの勝ちさ」
立川の手元で通話中のスマートフォンからエツィオの聲が流れる……ヘリコプターは撃墜したけど、おそらくKoRJの戦闘員であれば出には功しているだろう。
降りてきてここまでくるのに遅くても三〇分程度だろう……立川は黙って騎兵刀(サーベル)の形狀に仕立て直された琶蘭(ベラン)の柄をそっとでる。
ここにくるのは誰か……できればあの四條 心葉が來てくれると意趣返しができるけどね……と考えつつ、ヘリコプターが墜落した方向を見ていると、夜の闇の中に発と炎上する音が響き渡る。
眼下の街並みに急に起こった発音で驚いたのか、一気に明かりをつけ始める家のが広がっていく……。
「了解、ところでエツィオさん……どのくらいで彼らがくると思う? 私一〇分もかからずにくると思ってるんだ」
「……そうだな、も(・)う(・)す(・)ぐ(・)來(・)る(・)と思うぞ」
その言葉と同時に、空気を切り裂くような音に気がついた立川が咄嗟に騎兵刀(サーベル)で、飛來してきた弾丸を超高速の斬撃で切り裂く。きたきたきたきたッ! 立川のテンションが一気に上がっていく、こんな正確無比な銃撃を加えられる相手は一人しかいない。通話を一方的に切ると、立川はスマートフォンを傍の鞄へと放り投げる。
その瞬間、に埋め込まれた仮初の心臓が大きく跳ねるように鼓を伝える……全に力が漲る……貞ちゃん……私に力を貸して、戦いに勝ちたい! 一度大きく騎兵刀(サーベル)を振るうと森より飛び出してきた銃を構えたままの四條 心葉に向かって一気に飛び出していく。
「四條さん! やっぱりあなたね! 勝負しましょうっ!」
「……立川さん?! なんで、なんであなた生きて……死んだんじゃ……!?」
全力で突進してくる立川を見た四條が驚愕に目を見開いて棒立ちになる……そりゃそうだろう、立川が生きているなんて誰も予想なんかしていないからだ。
おそらく新居 燈でも同じように呆然としたかもしれない……だがこの瞬間だけは立川生存のサプライズが彼に有利に働く。
驚きのあまり回避行の遅れた四條に向かって騎兵刀(サーベル)が真橫から振り抜かれる……四條が我に返った時には既に騎兵刀(サーベル)の刃が目の前に迫っている。
「殺ったッ! ……えっ?」
「……君一人か? 舐めてるな……」
まるで瞬間移したかのように、視界の端に銀の何かが見えたかと思うと、刀を振るう立川の腕を軽く跳ね上げるようにトン、と下から上に向かって優しく叩かれた。
必殺の斬撃は大きく軌道をずらして、四條の頭上を二〇センチメートル近くずれて振り抜かれる……予想をしていなかった立川はその勢いのまま勢を崩して前転しながら地面を転がってしまい……けをとって大きく跳躍をすると、その場から一気に離れる立川。
「だ、誰だ! せっかくのチャンスを……」
「四條さん、大丈夫かい? ……君は……立川さん? だっけ? おかしいな死んだって報告にあったぞ……」
四條 心葉を庇うように立ちはだかった銀の何か……それは銀の皮を月明かりに輝かせた狼獣人(ウェアウルフ)の狛江だった。
狛江の言葉に四條は黙って頷くが、目は立川を見つめたまま複雑な表を浮かべている……まるで泣き出しそうな、それでいて軽い恐怖と困のが浮かんでは消える。
立川は油斷なく騎兵刀(サーベル)を構えたまま距離を測る……KoRの中でも最高戦力の一人に銀の皮をした狼獣人(ウェアウルフ)がいるとエツィオから聞いている。
「……燈さんがとどめを刺したんです……私も確認しました……確実に死んでいたのに!」
「お節介な仲間がね、死んじゃだめだって生き返らせてくれたのよ」
「確かに君の死は回収されてないとは聞いているけど……死者の復活なんかできるのか? 四條さん、別の樓(ウォッチタワー)に向かってくれ、ここは僕がやる」
狛江は四條の肩をそっと叩いて、別の方向にある樓(ウォッチタワー)を軽く指差す……四條は何度か立川と狛江の顔を見直した後、黙って頷くと名殘惜しそうな表でその場から駆けていく。
改めて狛江が立川へと向き直ると、目の前の彼は薄く笑みを浮かべているのが見える……なんだ? 狛江の危機察知能力が目の前のから立ち上る不気味すぎる雰囲気に気圧されている。
僕がやる、と言った割には飲まれてしまっているな……軽く舌打ちをした後に改めて構え直すと、それを見た立川がそっと自分のに軽く手を當ててから話しかけてきた。
「……私のにある貞ちゃんの心がい立っている。あなたと戦いたいと、そして私に力を與えてくれている」
「貞ちゃん? 鬼貞さん?! 君の魂に鬼貞さんが?」
力勝負で狛江とほぼ互角に戦ったあの鬼……武士(もののふ)の心を持った心優しい鬼の魂と人間が同化したのか?! 狛江の顔が驚きで歪む……まさかそんなことが……?!
立川は騎兵刀(サーベル)を一度振るうと狛江に向かって刀を突きつけて宣言すると、彼の気持ちの昂りと同期したのか彼の全の筋がほんのし盛り上がったように見えた。
「いざ勝負! リュンクス流達人(アデプト)の魂を継ぐもの……立川 藤乃と鬼貞が參る!」
_(:3 」∠)_ 心葉ちゃんと藤乃戦だと思った方すいません、志狼戦なんですw
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