《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》家族がいない弊害

幸い三人以外誰もいない。傷つけないようゆっくりと降りる、がしかし。

「ちゅうや~ゆう~はまみそ~ちゃんゃ~」

真下から聲をかけられる。

「ひっ! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! もうこんなことはしません! お酒飲んでたわけでも インスタ映えを狙ったわけでもなくて……って、あれ?」

しかし聲のする方に人影はなく。

「めんそーれーサイ」

それでも聲だけが聞こえてくる。

「ちゅうんあちさいび~さや~ふぃじゅるじゅーすぬまーにりふれっしゅさびら(方言でセールストーク)」

「――――――――はい。一本……いや四本頂きます……」

ちゃりんちゃりーん。

販売機で四本ジュースを買い一禮、そして再び頭を下げながら奈々たちにお詫びの品を手渡す。

「はい……おかえり~……」

「今回も酷かった……」

「次は畫とってSNSにでも上げようかな? いいじで燃えると思うんだけど?」

三人からの視線が痛い。

「それだけは勘弁してください……」

それだと一生涯ネット上でおもちゃにされてしまう。オフ會ゼロ人じゃなくて公演(公園)ゼロ人の人だ。

「分かった。今日で全部食べるのは止めておく」

「賢明な判斷」

「本當に反省してるのかな……」

「さあ?」

そこで一歩、二歩。子たちから距離をとる。

「だがしかし」

「……ぷっ。駄菓子だけに?」

「いや秋、ここ笑いどころじゃないから」

をかけてはいけない。それは分かっている。ならば公園の奧だったらどうだ?

そこには大きな広場がある。周りは林で囲まれていて、更に住宅地まで十分に距離がある。

そこでなら……。

「もう一つだけ……公園の奧でなら迷かからないから……だめ?」

せめてあと一つ。誰もいない、誰も見ていない場所なら。

「沒収」

そんな懇願も許されず、目にもとまらぬ早さで奈々に袋を奪われる。

酷い! 酷すぎる!

し、しだけ、人目につかない場所で、一口だけだから……」

そう必死に頼み込む。

「そういうことじゃないんだよ……むーくん」

だが先ほどの菜々と凜のように、僕と奈々の間でも考えが食い違っているようで。

「じゃあどういうこと?」

ならばと聞き返してみると、奈々がわざとらしくため息をついてみせた。

「奈々?」

それを心配そうに見つめる秋。何か知っているのだろうか。

「大丈夫だよ。秋ちゃん……」

そして奈々の目線が秋から僕へと移ると、絞り出すように次の言葉を口にする。

「…………99回」

何の數字だろうか。

99回。それはなくはない回數だと思う。わざわざカウントするようなこと。

心當たりは……ない……。あ、奈々の事だからもしかしてゲームの……。

「それ……私がむーくんから『告白』された回數……」

「はいっ!?」

僕の耳がおかしくなったのか? いま聞き捨てならないこと……。

「私はなくとも10回超えてる……」

そして凜が。

「多分私は15回ぐらいかなぁ~」

秋が。

「えっ! な、なにを言って……」

訳がわからない。僕が、告白………………だって?

心臓がバクバクと波打つ。

三人は至って真面目そうで、今から冗談を言うように見えない。

「うーん…………そこだよ」

「…………っ!?」

「そこが一番…………『駄目』…なんだよ」

「それってどういう………」

唐突過ぎて思考が追いつかない。

「待って待って……ちょっとだけ落ち著いて聞いてね」

何かを察してか、秋が事の顛末を話し始める。それはずっと前。何年も前。

僕たちが出會い、分かれる間の話。

「――――つまり。禮夢は昔からこのチョコカステラを食べると、何故か一定時間『悪酔い』したみたいな狀態になる。その自覚は……ある?」

「え、いや……全然」

そんな馬鹿な話聴いた事がない。普通の人間はそんな狀態になるはずが……あ、もしかしてアルコールはがっているとか?

けれどそれもすぐさま否定される。

「別にアルコールとかがっているわけじゃない。何故か禮夢だけがそうなるの。不思議なことに。もう昔の話で、たまたま見つけたから冗談半分で買ってみたけれどまさかここまでとは……」

子どもの頃の記憶はおぼろげで、斷片的にふわふわとした心地の良い覚だけは覚えている。

「で、そこで小學生の頃……よくね『好きだ! 結婚してくれ』『僕のお嫁さんになってほしい……って告白してきたのよ。こっちはシラフだから初めはガチだと思っちゃって」

更に秋は話を続ける。

「まあ小學生が酔ってるいか酔ってないかなんて、判斷するのって難しかった。たまたま大人の人を見て『あ、これって噂の酔ってるってやつだ』って気づいてからは馬鹿らしくなってさ……まあ禮夢には當時家族もいなかったし、そういうものだって割り切って付き合うようになった。あ、そっちに付き合うじゃないよ? ただね…………」

秋と凜がチラリと目を向ける先……。

「……………」

「だから……なにやってるのかなぁって、六年ってのは……ちょっと」

「…………っ!」

「六年?…………………あ、なるほど、それで秋はさっき変な話のそらし方を……」

「凜、そこはなるほど。じゃなくて………て!? 禮夢!?」

走っていた。気づいたら林のほうに向けて走っていた。

唐突にカッコ悪い自分を突き付けられ、更には好きな人に対して無意識とは言え、軽薄な事を繰り返していた自分が恥ずかしい。

「~~~~っ」

聲にならない聲で過去の自分を呪う。

急なシリアスは嫌いだ。

のほほんと笑って、喋って、楽しく暮らせればそれで……。

それだけでいいのに。

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