《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》馴染はの子だけじゃない
「はぁ……はぁ……」
辺りを見渡す。暗く、木々の隙間かられるだけが足元を照らす。
僕は馬鹿だ。ほんと大馬鹿野郎だ……SNS?……炎上? そんなの……とっくの昔に燃えてカスになってる…………じゃないか。
そう自していると開けた場所へと出る。丸い月が一帯を照らし、そこだけ別の世界のようで、今の自分にお似合いだと自嘲する。
ブルルルルル。
スマートフォンが鳴っている。秋たちからだ。
けれど取れない。
もう前の告白とかそういったレベルじゃない。真面目な話をしていたのに逃げ出すだなんて……なんてことを……。
迷いが両肩にのしかかり、指先には後悔が絡みついている。
けない。多分これが謝罪する最後のチャンスかもしれないのに……。
ドサッ!
その場に倒れるようにして膝丈ほどの草むらの中で仰向けになる。沸騰した頭が冷えた地面にれると、真っ赤になっていた耳から先に熱が抜けていくようで心地いい。
著信は止まり代わりにメッセージが屆く。でも目は通せない。
何もかもがどうでもよくなり、畫面から目を離すと目の前には夜空が広がっていた。
それは自分が幻視していた宇宙ではなく、僕が知覚し、在るがままを脳にすっぽりと収めた宇宙だ。その飛んでくる何年先のすら余すことなく取り込んでしまう脳。
けれど自分から発した言葉を取り込んでくれない脳……。
ああ……可能ならば無能な僕を書き換えてしい。それが出來ないのなら……。
「……………死にたい」
小さく……呟く。小さく……く。
けれど強く、強く。誰に向けてではなく、ただただ願うように。救いを求めるように……。
がさり。
突然音がする。
「それなら起業でもしてみない?」
を起こしてみると、しばかし離れた場所で、僕と同じように寢転がっている男がいた。
顔は草の影で隠れていてよく見えない。しかし彼の目はこちらを捉えている。そうじる。
「起業……って、すみません。邪魔でしたよね……」
空でも眺めていたのだろうか。なら邪魔をしてしまったかもしれない。
立ち去ろうと腰を上げる。すると男は構わず話を続ける。
「いやいや、いきなり話しかけてごめんね。急に君がこっちのテリトリーにってきたからさ。一言『どうしたんだい?』って聲ぐらいかけても……いいよね?」
彼はくくくっと笑う。
「まあいきなり起業したら? って言うのもおかしな話だけど、こっちもしだけハイになっててさ…………飲みすぎたかなぁ」
ロング缶が一本、彼のそばで鎮座している。ラベルはよく見えない。チューハイだろうか。
「……まあ別に起業じゃなくてもいいけれど、辛いことがあるならお金がないより、あったほうが今よりは幾らかましになるかもしれない……そう思わない?」
お金……。
「……どうなんでしょう? 確かにお金はしいです。それは絶対に。でも……いま起業と言われると……」
『起業』……僕にはピンと來る話ではない。それに現狀就職すらしたこともないのだ。
起業なんてもっと先の人生。もしあるとしても、將來ちょろっと酒の席でしだけとかだろう。
それに今はお金ではなく。
「起業ってかなり難しいと思いますし、僕の場合はお金というよりは……」
「というよりは?」
「その……過去の過ちとでもいいますか。がらみといいますか……」
思ったように口が回らない。
「かぁ……」
「もしかして告白でもしたの?」
「うぐっ」
「ビンゴか! 青春だなぁ~」
男がうれしそうに笑う。
「むっ。聲を聞いている限りですけど、僕とあまり歳は変わらないですよね?」
「おっ。そうかもしれない」
「もしかして學生?」
「いいや。仕事してる。結構前から……ね」
「結構……?」
多分彼は二十歳そこそこ。もしかしたら同い年かもしれない……そう思っていた。ただもっと前と言うなら……。
「うーん。本格的に働き出したのは17になる前からかな。高校も途中でやめたし」
高校中退。それをあっけらかんと彼は答える。
「そうかぁ。青春かぁ…まだ……間に合うかなぁ」
「あの……」
「どうかなぁ……」
いつの間にか獨り言を始めた男がを起こす。
月の明かりに照らされた顔が白く浮かび上がる。目はうつろで、向こう側の世界とこちらを行ったりきたりしている。つぶやく容はもう列をしていない。
大丈夫なんだろうか……。
その顔をじっと見つめる。すると、すんと懐かしさが鼻の奧に屆く。の側から淡い記憶があふれ出そうとする。
確か……どこかで……。
思い出のアルバムを1ページずつ捲る。
ぺり……ぺり……ぺりぺり……。
あ……。
途中、開けないページが見つかる。
同時に濃い匂いがした気がした。
僕はこの男を知っている。
でも思い出せない。
まだ、思い出せない。
ただこの張り付いた思い出ページを開けば思い出せる。
「……………はっ!」
「やべっ……一瞬意識飛んでた?」
男は額に手を當てうめく。
「ううぅ。やっぱ馬鹿なことするんじゃあないな…………あれ?」
彼と僕との目線が重なる。気配ではなく僕が彼を、彼が僕を知覚する。
ぺりぺり……ぺりり。
張り付いていたページが開いていく。
「…………」
「…………」
「…………禮夢?」
「…………誠二?」
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