《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》これが俺たちの事務所!!
起業を決めた日から數日経った週末。
全員の予定を合わせ、俺たちは悟さんが昔使っていたという離れに集まることに。
「ここを本當に使っていいのか?」
「そう聞いてるけど……」
そんな誠二の疑問に答える俺。ただその返事に対して俺自も疑ってしまう。
というもの奈々の実家の敷地はかなり広い。
広すぎて県から道路拡張の依頼が來るほどに。
しかも敷地のど真ん中に。
結果、母屋と離れは道路で隔てられ、いつの間にか誠二さんの自遊空間となっていると聞いてはいたが……。
「広いというか、お灑落というか」
離れは庭木で覆われ、奈々の家に來るときもその姿を見たことはなかった。
俺たちの事務所になる部屋はどんなものだろうか。
急に決まった起業。急に決まった事務所。
舞い上がった俺たちは、集まる前にどんな場所か、これからどうしようか、あれこれと話をしていた。
そして各々が期待していたイメージでは、離れの一室を貸して貰える。
そう思っていた。
だが。
「ただの倉庫でごめんね」
そう奈々は言う。
『倉庫』それはモノを保管、保存する建造。
一般的には機能を重視し、シンプルな建で、その大きさは大中小と様々。
だがしかし。
奈々が倉庫と呼ぶそれは、自分たちが思い浮かべるようなものではなく、目の前に現れた建の外裝は古き良き喫茶店にしか見えない。
「ここはもう兄さんが使わなくなったものを適當に置いているだけだから」
中にると更に凄い。
「読み終わった本に、家、オーディオ、食。昔は友達と家飲みとかで使っていたけれど、今はもう全然だし」
奈々だけがいつもと変わらない様子で話す。
用意してもらった事務所は丸々一軒。
元々娯楽用として使っていただけあって
空調はもちろん。トイレ、シャワールーム、対面式キッチン+カウンター完備。
様々な本が並ぶ本棚の傍にはソファーとローテーブル。
部屋の中央奧にはミーティングテーブルと椅子。
全的にらかいオレンジなどの暖で統一されていて、ここにいると心穏やかな気持ちになってくる。
目線と上げると部屋の端にスピーカーとプロジェクターまである。
スクリーンは天井に自で巻き上げるタイプと、一般家庭では考えられない環境が整っている。
「なんか俺がんでいるものが全部あるんだけど」
嬉しさと悔しさがないぜになったような、良く分からない表を見せる誠二。
この前まで作業用スペースが借りられるようになったら、あれがしいとか、これは絶対だとか、そんな話で盛り上がっていたのに、持っている人間はいくらでも持っているのだと現実を見せつけられた形になってしまった。
「……なにか足りないものとかある? 必要なら兄さんに聞いてみるけど?」
「いや、大丈夫。十分すぎるぐらいだから」
「そう?」
奈々よ。そのよく分かっていないじ結構刺さるって。
「追い打ちをかけるようで悪いんだけど、そのんでいたもの全部使って問題ないとのこと」
現実をけ止められていない誠二たちにそう告げると、秋が手を挙げる。
「使っていいって……これも?」
この部屋に溶け込んでいた立派なオルガンを指さす。
「何度も確認したけれど『全部』だって」
「うひゃ~~~~~~~~~~~~~」
良いリアクションありがとう。悟さんが見たらさぞ喜ぶことでしょう。
因みに俺は本人の前でやった。
「だから壊したりなんてことがあったら、必ず報告すること。一応、ある程度なら目をつむってくれるという神のようなお言葉を頂いている」
「マジか……」
悟さんの寛大さ全員ドン引く。
「でも熱費は自分たちで準備しないといけないから、そこは考えて行してね、とのこと。そこで、ひとまずは會費という名目で月三千円は集金して、オーバーしたらその都度割り勘する形式を考えている。馬鹿みたいにエアコン使ったり、水出しっぱなしにするのは、自分と仲間の首を絞めることになるので気を付けること……ってじでどうでしょう?」
全員、異議なしと首を縦に振る。
「それとお金の管理は……誰がいいかな?」
別に直ぐ経理係を決めようという訳ではなく、あくまで暫くの間の熱費を管理する人についてだ。
「お金の管理かぁ」
「まず人の金を預かるってことをしたことがないよね」
「確かに」
子三人が揃って渋い顔をする。
利益が出るようになったら、熱費も経費で落とせるようになる。
だがしばらくの間は難しいだろう。ここはきちんと管理が出來る人が回すのが理想だが……。
「そこら辺はみんなが慣れ始めてからでもいいんじゃないか?」
そこで誠二が前に出る。
「まだ役割分擔も曖昧だし、それぞれのモチベーションの差もあるだろうし」
「そうだよね。じゃあそれまでの間は」
取り合えずは俺がやり繰りして……。
「だからさ。俺がやるよ」
こちらよりも先に手を挙げる誠二。
「え、いいの?」
凜も自で引きけようとしていたのか、目を丸くする。
「何やかんやで最初は俺が見ていた方が都合いいでしょ」
あまり誠二に負擔をかけたくはないが、勝手を知っているというのは強い。
「他にやりたい人は?」
今度は誠二以外の全員の首が橫に振られる。
「………………みたいだから、ごめんだけど誠二、よろしくお願いします」
「はい、引きけました!」
そう言って、微妙なポジションを軽く引きけてくれた。
「新しい口座を作ったり、月々の支払方法については後で話をするとして、忘れる前に伝えておくけれど、悟さんの話では私の持ち込みもある程度オッケーらしい。家・家電も問題なし。ただしペットは駄目。まあ持ち込むものがあるようには見えないけど、みんなの希とかあったりする?」
結構大きめの冷蔵庫もあるし、ほかに何か必要なものがあるのだろうか。
考えてみる。
「そうだなぁ……それこそ商品を保管できる棚は必要だと思う」
今ある棚は既に本やCDなどで埋まっている。
それに、ある程度大きなものまで扱う可能があると考えれば必要かもしれない。
幸いスペースはいくらでもある。
「なるほど……となれば、カッターとかテープみたいな文も用意しないとね」
凜が続けて意見を出す。
「はいはい! プリンターとかどうする? 領収書とか書類出すときに必要だと思うんだけど!」
秋がならばと手を挙げる。
「それなら私のやつ、あまり使わないから持ってこようか!」
「奈々助かる!」
「うん! じゃあ直ぐ用意するよ!」
こうなれば俺が回さなくても會議は一人歩きし始める。
「あとはホワイトボードとかしいかなぁ。どう思う?」
「しい!」
「有りよりの有り!」
「ちょっと調べてみる!」
凜が自前のタブレットで通販サイトを開く。
「會議っぽくていいなあ」
「だよね~~~」
思わずにんまりとしてしまう。
「腳付きのやつ13,000円。壁掛けのやつ9,000円。あ、壁掛けはワンサイズ小さいね」
手慣れているのか直ぐにリスト化される。
「うーん。一萬ちょっとかぁ……」
この中で一番お金に自由が利きそうな誠二が渋る。
「今後を考えると、ぽんと出せる金額じゃあないかなぁ……」
それに秋が賛同する。
俺も同じ意見。
出せなくもないが、ホワイトボードよりも必要なものがまだある気がする。
「え? じゃあ私がっ」
意気揚々とを乗り出す。
「はいストップ!」
そんな奈々を片手でステイ。
「悟さんからもう一つ言付けがある」
それはとてもとても大事な話。
「奈々は何でもかんでもお金で解決しようとしないこと」
「「「あ~~」」」
みんな揃って納得する。
優しさ先行で行するのはいいが、誰かの役に立とうとするあまり、変に勘違いさせるのは止めていた方がいい。とのこと。
「まあ、そうだよね。急に筆頭株主になられても困るし」
「まあ既にパワーバランス壊れてるからねぇ。これ以上はちょっと……」
誠二と凜が苦笑い。
「?」
「はいそこ、クエスチョンマーク飛ばさないの!」
「何故分かった!?」
「分かるに決まってるでしょ」
「とにかく奈々はATM狀態になるのは避けること! 分かった?」
「ATMっ!?」
「暴走したら止まらないでしょ」
「止まらないっ!?」
なにやらボケるタイミングを見つけたのか、変なところに反応している。
それを察した秋が止めにっている。
ありがたい。
「確か近くにリサイクルショップあったよね」
「あーそういえば」
歩くと20分。車なら5分の距離。
凜の提案で、普段は看板しか見ていないリサイクルショップがあることを思い出す。
「もしかしたら置いていたりしないかな?」
「なるほど!」
良案である。
「でもホワイトボードの中古って、なんか染みとか殘ってそう」
しかし半分不貞腐れ気味な奈々が、茶々をれる。
「染み抜きぐらいなら、ネットで調べたらすぐ出てくると思う。前に調べたことあるし」
だが負けじと過去に興味本位で調べた知識で対抗。
奈々の癖で自分の意見がけれられないと、しばらくの間拗ねるのだ。
こういった時は冷靜に対応するのが一番。
「私は染みというか表面の劣化が気になるけど」
そこで救済処置も含め、凜が奈々の意見を拾い上げる。
「うん。確かに劣化は気になる。でもこれはいい勉強になるかな」
「勉強?」
誠二の言葉に秋が首をかしげる。
「仕れる商品の狀態をチェックするのは基本だからね」
「なるほど」
「同じジャンルを提供し続けるような力はまだ無いし、手當たり次第に売れそうな商品を見つける形になるから、ちゃんと見る力をつけないと」
こういった考えは誠二の獨壇場である。
「それなら後で見に行く?」
それならと皆に提案してみると、誠二が待ったをかける。
「それって誰が車出すんだ?」
おっふ……。
「そりゃ……」
「ねぇ……」
「うん?」
子三人がそれぞれ顔を合わせ、催促をするか相談を始める。若干一名、よく分かっていない人もいますが。
「いや、俺は歩いていくのもありだと思うけど……」
その場合は多のヘイト管理が必要ですが。
「……あーもう、分かったっ! どうせこれから先しばらくは運転手役だろうし、當分は我がまま聞くけど、いつか免許取れよな……特に禮夢」
「うっ……頑張りまーす」
生返事をする。
「あとガソリン代も」
「「「「はーーい」」」」
とんとん拍子で話が進んでいく。
まだ分からないことばかりだけれど、こうやって積み上げていくのはなんだろう。
なんだか青春ってじでいい。
うん青春ってじ……。
でも、ピッタリじゃない。
ジャストじゃない。
楽しいだけじゃなくて、ちょっとした責任とか
額だけど、自分たちで用意したお金がいているところとか
これはまだママゴトの範疇かもしれないけれど
今まさに大人になろうとしているこのじ。
青春であって青春よりもちょっと先に進もうとしている特別な瞬間。
きっとこのメンバーなら凄いことが出來るかもし……。
「あ、時間空いた時でいいから、ここでアニメ見てもいい?」
「はい?」
「アニメ見ていい?」
「奈々さんや。 一応ここって起業する為に借りてるんですが」
人が気分良くなろうとしている時になんてことを。
「いいんじゃない?」
「え?」
軽く返事する誠二に戸う。
「あ、私も見たい」
ちょっ! 秋!
「私は映畫が見たいかな~」
凜まで!!
段々と賛票が集まる。
「ちょっとみんな待てって! 一応ここは仕事場だぞ? いくらなんでもそれは……」
「別にいいじゃないかな? 息抜きも大事だと思うし」
「むしろこんないい場所を、作業するだけっていうのも勿ないじゃない?」
秋凜コンビまで賛同。これはいけない。
「そうかもしれないけれど。でも奈々がアニメを見るってことは!」
高校時代のある祝日を思い出し震いする。
「まあ大丈夫だって。奈々も時間空いた時って言ってるんだし、それに現狀筆頭株主的なポジションなわけで、ある程度の要は聞くしかないでしょ」
そう言われてしまうと言い返せない。
だがしかし。だがしかし。
「みんなで鑑賞會しようね~~~~!!!!」
結局押し切られてしまい、俺は部屋の隅でガタガタと震えて待つことになる。
……………因みに。
奈々にとっての鑑賞會とは、実質アニメマラソンと同義であり
ワンクール分(13話×24分)はもちろん。オーディオコメンタリーで再走した後、OVA・劇場版まで完走しないと止まらない。
更にはネットから出來るだけの映像を引っ張り、時には二次創作まで見る羽目になる。
つまりは…………。
…………………………死んじゃう(泣)
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