《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》『第一回會議_〈夢実現_頂を目指す者たち〉』1
全員の日程が揃った週末。
テーブルを囲み、初めての會議を行っている。
「プリンターよし、ホワイトボードよし、取り置き棚もOK」
「梱包材に、文一式と配送票もあるよ~」
凜が満足そうに腕を組み、その隣で秋がリストにチェックマークを付ける。
更にノートとデスクトップパソコンは一臺ずつ。これは誠二が持ってきたものだ。
こうなると平日のうちに買い出しを済まし、今日ので実務にりたいのだが……。
「空き時間用のお菓子よし! ジュースもよし! それとBD-BOXよし!」
皆が真面目にリストチェックしているのに、一人だけ別のリストを指さし確認しながら、よしよしと言っている。
「今日もご安全に!」
「奈々さんや。何故君だけ違うリスト持ってるんですかね?」
「そりゃ仕事ばかりだと疲れるから!!」
「まだ始まってもいないでしょ!!?」
みんなA4サイズの用紙一枚なのに、一人だけ別にフルカラーのパンフレットを持っている。
よく見るとそれは新作アニメの商品カタログ。
まさか追加するつもりじゃあないだろうな。
「実務もまだだっていうのに……」
「まあいいじゃないか。俺も堅苦しいのは苦手だし、この緩さが普通の就職とは違う良さなんだし」
俺がため息をつくと誠二がまあまあと間にる。
そうかもしれない。でも。
「そうだそうだー!」
誠二の背中越しに俺を睨む奈々。
これ以上調子づかせるとやっかいだ。それにここ最近、妙に奈々のテンションが高い。
よく突っかかってくるというか、自己主張が激しいというか。
以前に、それも含めて雰囲気づくり。なんて言ってはいたが……。
「誠二が庇ってくれるからって調子に乗るな!」
逆を言えばツッコミを誰かがれなければ、その雰囲気もり立たないわけで。
おかげで自分がツッコミ役として定著してしまっている。
「もう奈々も禮夢もイチャイチャしないの!」
そう言って凜が先に茶菓子を開け俺たちに差し出す。
「わーい! 私ルマ〇ド大好きーー!」
奈々が凜の聞き捨てならないセリフを完全にスルーして、焼き菓子に飛びつく。
全くの揺しないのが非常に悲しい。
ほら、華麗なスルーに凜もちょっと苦笑いしてるし……。
いや、まあル〇ンド味いけどさ。
「それで今日から買い出しするの?」
線した俺たちを秋が戻す。
「買い出しじゃなくて『仕れ』ね。それも出來ればやりたいけれど、まずはルール決めからかな。覚えることもまあまああるし」
「ほほう」
「という訳で、基本的な今後の方針と業務リストを作ってきた」
それこそまあまあな厚さのリストが配られる。
気合がっているなぁ。
一何ページあるんだこれ、って…………あっ。
表紙の字面に一瞬固まってしまう。
そこには大きくこう書いてある。
<<第一回會議_夢実現!_頂を目指す者たち>>
お、おう……。
橫目で見ると、子たちも同じように固まっているようだ。
えーと、これはガチなのか、ネタなのか……どっちだろうか。考えてみる。
これまでの発言を考えると、多分8対2で本気……だろう。
起業する人間としてこのスタンスが正しいのか? でもこれはどうなんだ?
初っ端から引いてしまった俺と、誠二には本気度に大きな差があるってことか?
更に一ページ目に目を通してみると……。
『今の時代の起業は、世界で戦うことに等しい・・・』
『そしてその戦いは歩兵戦でも、航空戦でもない――』
お?
『報と言う魔での戦いだ――』
おおお?
『そしてその魔は既に宇宙にまで屆いている!』
――――。
取り合えず一ページ目は読んだが正直何とも言いづらい……。
比喩だとは思うけど、なんか引っかかるよ。これ。
スピリチュアルまでは行かないものの、格好つけて語ろうとして、半分ファンタジーっているじ。
前回話す分には問題なかったが、こうやって文章にしてみると、何ともいたたまれない気持ちになってしまう。
いや、俺も同じなんだけどさ……。
ううぅ。読めば読むほど刺さるよこれ。
しかもじわじわ効いてくる毒効果付きである。
さてさて、何と言ったらいいのやら。
そこで奈々が一言。
「……………………中二病じゃん」
ぼそりと呟く。
「あ………しまった」
本人も意図していなかったのか、慌てて取り繕うとするも、時すでに遅し。
「あああああああああああああああああああ!!」
誠二が機に突っ伏しながら、悲鳴をあげる。
「ですよねー! やらかしてるよねーーーー! めっちゃ痛いですよねーーー!マジごめんなさい!!!!!」
この様子を見ると、きっと徹夜のテンションで準備。
今朝になって違和に気づくも修正する時間が無く、そのまま持ってきたといった所だろう。前に『誰にだって同じように言う』と話していたが、文章はまた別らしい。
創作は時に人を自由にし、時に人を地獄へ叩き落すことが証明されてしまった。
そこへ容赦なくぶっこむ奈々。
悪魔や。
「奈々は今日のおやつ抜き」
「これは仕方ないね」
「うん、これはアウト」
俺と子二人で奈々へ判決を言い渡す。
この口の軽さはほんと、どうにかした方がいいと思う。
そして恥ずかしさでこちらに向くことが出來ない誠二。
「まずは先に謝ろうか」
「ううぅ、誠二くん。ごめんなさい」
ペコリと奈々が頭を下げる。
「……別に謝らなくていいよ。ただ」
「ただ?」
「中二病って……そんなに酷かった? 意識高い系とかじゃなくて?」
「まあ」
「ぐはっ!」
「馬鹿! だからそんな正直に言うなって!」
「…………」
……ドサッ。
再び誠二が機に突っ伏す。
「禮夢、それフォローになってないから」
「というかこの景、前にも見た気が……」
「?」
「…………ああもおおおおお~~~!!」
こうやって俺たちの『第一回會議_〈夢実現_頂を目指す者たち〉』←誠二命名が始まったのであった。
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