《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》『第二十九回オールタイム・オールジャンル會議』1
外には『Close』の看板。
既に閉店時間を過ぎ、いつもなら店に人っ子一人いない時間帯。
だが今夜は違う。
カウンター席には店に無いメニューの料理。
使い捨ての容に詰められた惣菜と、四人分の酒と缶ジュースが並んでいる。
中には半額シールを張られたものや、特売のお菓子の袋が大口を開け、お店の雰囲気を大きく崩しかねない、まるで男子學生の部屋のような、雑で、好き勝手で、後で掃除するのが面倒くさそうな、でも一部の誰かがむような宴の準備が完了していた。
「おっほん」
そして棚原先輩が喋り出す。
「皆様、大変お待たせ致しました! 明日は定休日ということで、久しぶりにこの場所をお借りしました。オーナーありがとうございます! 今日はエンターテイメントの境地を探し當てるべく、ジャンルの垣を越えた、朝まで生會議を行いたいと思います。皆様飲みの準備はよろしいですか?」
わーわー!パチパチ!
ドンドン! ぱふぱふ!
「いい返事ありがとうございます! 既に3本目を開けている人もいるようですが、大丈夫でしょうか」
「だいじょぶっ。だいじょ~~~ぶ!」
店長と悟さんが顔を真っ赤にさせて続きを促す。
「既に出來上がってる人が二名ほどいますね。これは僕も負けてられません」
一日の仕事が終わったバイト先の店。
悟さん・店長・棚原先輩と、プラス俺で親睦を深める(?)會が催されることになった。
明日は定休日であるからか、三人ともやけにテンションが高い。
まあいつもと同じような気もするが、ジャンクなお菓子と惣菜。そして酒が並べば、そうなるのも仕方がない。
「これより、第二十九回オールタイム・オールジャンル會議を開催します!ではっ」
「かんぱーーーーーーーーいっ!」
カンカンコンと、らかい金屬音が連続で響く。
ゴクゴクゴクッ…………………ぷはあ。
「タナ坊。司會お疲れ」
「いえいえ」
カンッ。
悟さんと棚原先輩がもう一度缶を合わせる。
「禮夢くんも準備手伝ってくれてありがとう」
まだ一口しかつけていない缶を合わせる。
カコンッ。
悟さんの缶よりも低い位置で合わせると、中のが小さく波打ち、手のひらの熱が溶けていく。
「いや、別に俺は何も……」
々俺が手伝ったのは惣菜選びと荷運びぐらいで、それ以外は棚原先輩が率先して行っていた。
「もう仕事の時間じゃないからね。そこまでかしこまらなくてもいいんだよ?」
「そうですか? でもまあ、これがいつもの俺ですので」
これは別に低姿勢というより、尊敬と言うか、なんというか。
「いや~もう十年以上もの仲なんだよ?」
「しぐらいフレンドリーしてくれてもいいと思うんだけどなぁ」
「いやいや別にそんな邪険にしてるわけでもないですって」
「ほんとに~? 奈々にはあんなに構うくせに~~」
むす~っと拗ねる悟さん。
酒がっているせいか、いつもまとっている『出來る人オーラ』が薄い。
だがそれはそれで面白いと思うので黙っておく。
今日は仕事終わりに急に聲をかけられ、明日の予定が空いている事をいいことに、飲み會するぞと強引にわれた。
因みに悟さん経由で既に両親には連絡がついていたりする。
俺の気づかない間に、だ。
連絡を取った悟さん曰く『もっと好きにしていいのよ』とのこと。
えーと、母さん。そう言われても今回、俺に選択権は無かったのです。
「それで今日は何をするんでしょう? いつもの雑談ではないですよね?」
わざわざ會議と言うのだから、それなりの『何か』があるはず。
「それは僕たちにも分からない」
「ええ……」
深読みしようとするも、初手から躓く。
「何故ならこの會議にゴールなど何処にも~~ないっ!」
いつの間にか缶ビールから島酒にチェンジした店長。グラスの中の氷をカラリと回しながら、キメ顔でそう言い放つ。
「ただただ話し続ける。話し続けることに意味があるのさ」
今度は棚原先輩。
言い終わると、半額になったフライドチキンをまんで挾み被りつく。
ワイルドすぎる……。
「禮夢くんもある程度サブカルに手を出してと思うから、今回はその掘り下げをしようと思うのだよ」
「掘り下げですか?」
「イエス掘り下げ、ノーわかりやすさ」
悟さんが恐ろしいことを言い出した。
「ずぶずぶのドロ〇ドロ」
「この世の常識を引き足し抜き足し」
更に棚原先輩と店長も続く。
「自分だけのを、他人と言う砥石で削り合うなんて、めったにできる事じゃない。慣れ合いなんて仕事中で十分。さあさあ、話し合おうじゃないか。オールタイム・オールジャンル。なんでもOK。どんとこいマインド!」
ああ、みんな壊れ始めてる。
「因みに前回はどんな話をしたんですか?」
「うん? そうだな~~確か前回は……」
「僕、メモってますよ。えーと」
取り出したスマホを見ながら、一つずつ上げていく。
「『やったか』というセリフで本當にやったことはあるのか問題と、潛作戦で誤魔化す際、貓の鳴き聲以外に何があるのか問題と、サブヒロイン=負け犬ヒロインこそが本當のヒロインである問題:パート10の、三つですね。あ、ほかにもあった気がしますが、そこはもう意識飛んでて殘ってません」
く、くだらない。
しかもパート10って、同じことを十回も話しているのか?
「あーーいま『くだらない』って顔したーーー!」
「間違っちゃいないけどさ。間違っちゃいないけどさぁ~」
悟さんと店長が頬を膨らませている。
「ならば我らの実力を見せつけてらろうぞ」
店長、ペース早すぎ。もう呂律回ってません……って。
「と、言ってるだけではただのカオスだから、取り合えずいつものヤツやりますか!」
スッとみんなの前に一臺のタブレット端末が差し出される。
畫面には六面ダイスが3つ映っている。
それにタッチすると、畫面でダイスが弾け回転し、コロコロとき回る。
悟さん13。店長10。棚原先輩4。
「ダイスの目が大きい人が話すテーマ決めていいから」
まじっすか。
話すテーマなんて言われても、全然思い浮かばない。
時々棚原先輩が『なんか面白話しある?』なんて無茶ぶりすることがあるが、それ以上に難易度が高い。
ええい!
やけくそで勢い良くダイスをスライドさせる。すると、その勢いのままダイスが畫面外へ飛んでいく。
「あら」
「なんと」
これはバグだろうか。
しかし、これはこれでありだ。ダイスがない=実質ゼロ! そう主張する……間もなく、補充するように別のダイスが畫面外から自で投された。
コロコロコロ…………。
そのまま畫面の中心で止まり。
6の目が三つ。計18……………トップである。
「それじゃあ一発目はレイちゃんで~!」
「まじっすか」
このメンツで酒のつまみになるような話題を振らなければならないだなんて。まずアニメ・ゲーム・漫畫は確実にこの三人の方が詳しい。それに店長は居合を嗜み。棚原先輩はモトクロスを、悟さんに至っては何でもござれ。それこそ何でもだ。
「うん? ネタ振りされたような?」
「まだ何も言ってませんって!」
「別にアニメとかゲームとか、そんなオタクっぽい話じゃなくてもいいんだよ」
迷っていると店長が一つ付け加える。
「え、いいんですか?」
「うん。サブカルの定義は広ければ広いほどいい。絶えず疑問を持ち続けるのが大事。疑問=可能。可能は無限大で、だからこそ心惹かれるのさ」
と、言われましてもよく分からない。
「た、例えば?」
聞いても謎が深まるばかりで、悪手なのは分かっているが、それでも聞かずにはいられない。
「そだね。『焼き芋は〈落ち葉で焼いて・新聞紙で包む〉やつが最高なのは何故?』とか、『最近のトップアイドルが、そこまでダンスや歌が上手くないのは何故?』とか、『戦爭と戦は同じなのに、歴史の授業では全然扱いが違うのは何故?』とか~とかとか!」
結構バラバラで余計に困る。
くぅ~~なら、起業について話すか? でも切り札は最後に取っておきたい。手札は此方の方が圧倒的にないし。それに起業の話は100パーセントいじられるから避けたい。というか、それを狙ってセッティングしたんじゃ…。あーーそうだ。そうに違いない。
なんてこった……。
うん? いや、待てよ。それなら一番手を取れたのはラッキーなんじゃないか? 流れはこっちで決められるし。やりようによっては回避できるかも。それなら、ここは様子見で、様子見で……よし!
「分かりました」
そう言って覚悟を決め、先輩たちに椅子を回しを向ける。
じいいい~~~~~~~。
こちらを見る三人の眼の據わったじがちょっと怖い。
「じゃあ……」
「じゃあ?」
「えーと」
「えーと?」
「最近流行りの…………………」
「最近流行りの~~~??????」
「…………」
「あ、いえ……」
なんか圧がすごい…………。
この雰囲気。きっと捨てカードでは駄目だ。
もっとインパクトがあるやつ。
めちゃくちゃアウトローで、普通の人が考えない話題じゃないと、この人たちを満足させられない。
くそ。なにか、何かいい案はないだろうか?
………………ううぅ。
いいアイデアが浮かばず、間を取るためにジュースを手に取りを煽る。
ぐびぐびぐび…………。
今日はやたらとのどが渇く気がする。
ぐびぐびぐびぐびぐびぐびぐびぐび。
うん?
なんかこれ変な味が……………いやいや、そんな事より何かアイデアを…。
……あ。
摑んだ藁に手ごたえをじる。
「…………そうですね」
俺の目線の先にあるのは黒板である。
「ほう。決まったか」
そしてタブレット端末を手に取り、検索をかける。
「俺が一番目に出すテーマは……これで」
「これは……海? というよりは、防波堤の……落書き?」
「ええ。今回、俺が出すテーマは」
「『ヤンキーが描くラクガキってなんか上手くない?』問題で、いかがでしょう?」
「ほおおおおお~~~~!!」
三人が同時に目を見開いた。
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