《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》夢で逢えたらほら……

……。

…………。

……………………。

時々、子供のころの夢を見る。

それは、失くしてしまった記憶のかけら。

奈々と出會う前の自分との邂逅。

思い出す瞬間、懐かしい匂いを鼻の奧でじる。

それは甘く、優しく、包み込んでくれる。

懐かしい……懐かしい記憶。

懐かしく思う風景が、スライドショーのように映し出される。

でも……その場所が何処なのか、今の俺には分からない。

ただ流れていく記憶を眺めるだけ。

そして目を覚ませば、直ぐに褪せ消えていく。

日常の中で思い出すこともない。

この夢の間だけ、俺がここではないどこかにいたことを思い出させる。

更に意識が深く落ちていく。

風景が混じり合い、黒一になる。

「この世界の神様は、ほんと面倒くさい存在だ」

すると今度は聲が聞こえる。の聲の聲だ。

「ほんと、何でこんなことしているのだろうか…」

それはいつかの邂逅。薄く、細く、それでも確かにそれはあった。

「君は知っている?」

知っている?そう言われても……。俺は知らない。知るはずもない。

目を覚ませば消える記憶。無いものを知りようがない。そう切り捨てている。それはもうずっと前に……。

それでもの聲は続く。

「知っている………? この世界が本じゃないって…」

世界……?

それは、この夢ではなく………?

「正……しくは…………」

段々とノイズがっていく。良く聞こえない。

「本…………は……ッ!」

――――。

――――――――。

ここは……白、部屋……それだけ……。

瞬間、世界が真っ白に染まったかと思うと、間を開けずに目の前が暗転し俺は落ちていく。

どんどんと落ちていく。永遠に落ちていく。というが全て失われ、音もなく、覚すら奪われ、まるで無へと帰るような……そんな恐怖。

だれか……助けて……。

バッ!

が急に落下していくような覚で目が覚める。

顔を上げると見慣れた景が目にる。

事務所……じゃあさっきのは夢? でも今のは……。

「はい、おはよう。良い夢見られた?」

「へ?」

「へ? じゃないよ。一番乗りと思ったのに…」

そこにはし不機嫌な凜がいた。カタカタとキーボードを鳴らしているところを見ると、昨日の作業をまとめているのだろう。

じゃあ、そんな中で何故俺は寢ていたんだ?

……分からない。頭の中がこんがらがっている。俺………どうして…。

「…どうしたの? もしかして寢ぼけてる?」

「………………多分」

「正直、何故ここにいるのか理解できてない」

「ほうほう………」

「………………なら、自分の名前覚えてる?」

俺の名前?

馬鹿にしないでしい。それぐらい覚えているに決まってる。

「えーと、……………………ジェームズ・本堂?」

「どこの腕利きスパイのつもりよ」

「うーん…………………異世界の」

「設定が謎過ぎる…………」

「確かに」

素晴らしい指摘に俺も頷く。本當になんだよそれ。

「それでどんな夢見てたの? ちょいちょい、寢言言ってたよ?」

「寢言!? 俺が?」

「うん」

凜は大きく頷く。

「この世界がどうとか……々」

「お、おう………」

一瞬、痛々しいセリフを想像してしまう。いやいや奈々や誠二ではあるまいし……。

でもやっぱり…。

むむむぅ。

どんな夢だったのか振り返ってみる。確かに夢は見ていた気がする。でも……。

「……………やばい。全然思い出せない」

「本當に~? めっちゃ痛いじの容で、恥ずかしいだけじゃないの~? もしくは~くくくっ……」

「なんだよ……」

「いや~~奈々とのイチャイチャだったりするのかなぁ~?」

「う、うっさい! 俺はジェームズ・本堂だ! 奈々なんては知らんッ!!」

俺は逃げるように冷蔵庫へ向かう。朝からいじられるのは勘弁願いたい。それに、凜の言い方だと芋づる式で、昔の件まで思い出してしまう。多分わざとだ。ちくしょう。

「あ、そうだ」

凜が聲を張って聞いてくる。

「なに、まだ何かある?」

「冷蔵庫の中に午後ティーってる?」

「午後ティー?」

確かに。一本だけ紅茶のペットボトルが、サイドポケットに刺さっている。

「それ、飲んでいいよ~!」

「え、いいの! ありがとう……あ、でも」

「いいんだよ~一本くらい~♪」

カウンターの向こう側で右手を軽く上げていた。

そんなことで機嫌を直す自分が恨めしい。いや、本當に嬉しいんだけどさ。

「それじゃあ」

頂きます。

俺はボトルのキャップを外し、一気に煽る。結構のどが渇いていたようだ。

ごくっ……ごくっ……ごくっ……とのどが鳴る。

「そういえば知ってる?」

飲んでいる最中に、再び凜が聲をかけてくる。

なんだろうか。

「世界で一番有名なスパイは大の紅茶嫌いで、紅茶のこと『泥水』って言っているらしいね~…………ね、ジェームズ・本堂さん?」

「ブハアアッッッッ!!!」

ああ。目の前がパソコンじゃなくてよかった。

* * *

で、結局朝っぱらか事務所で寢ていたかと言うと

ただの寢不足だったという…………

いやいや!

寢坊する可能があったから、誰よりも事務所に來ていただけで、むしろ自己管理が出來ている方だと、俺は思う………よ?

そ、それに、今回も悟さんから新しく借りた、ゲームが面白過ぎるの悪いんだって!

え? それでも今月二度目の寢不足は駄目?

…………ううぅ、すみません。

…………。

それにしても、今日は変な夢を見ていたような……。

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