《高校生男子による怪異探訪》2.雨と奇病
ちょっと短めです。
數日経つが未だ雨は振り続け気溫も低いままだ。春の気とは全くの無縁な日々が変わらず続いている。
日中はそうでもないのだが朝晩の冷え込みが酷く、朝方起きて息が白く煙った時なんかあれ四月じゃないの?って度肝抜かれたわ。
もうかれこれ二週間ほど晴れ間を臨んでないことになるのか。
長雨の影響か、最近は調を崩す人間もそこそこ増えてきているらしい。気溫が低く度も高いとなれば、それはの調子が悪くなる人間だって出て來ることだろう。
確か日に當たらないと製されない栄養素とかあったんじゃなかったか? こんな長く日のを浴びないなんてまるで地中で暮らしているようだとテレビで発言するタレントもいたらしいな。冗談じりの発言であったようだが、地元民からすれば笑えない話だ。長雨による不安や苛立ちも重なってプチ炎上したとかなんとか、これも晝寢スポット探索の合間に噂しているのを聞いて知った。
當然、そんな騒ぎが起きるほどに注目度が上がれば、我が街だけで話が留まるはずもない。
局地的な異常気象はついに全國で取り上げられるに至ってしまっている。朝のニュースで二、三局が古戸萩の名前を告げているのを見て思わず胡な目をした。なんとも嬉しくない全國デビューに、今頃は市長、果てはその上まで頭を抱えているかもしれないな。
まぁ、これで多數の専門家の注意を引き、原因解明への道が短くなるのなら悪いことでもないだろうなと思う。我が街は市にちょっとした小山も抱えているんだ、土砂崩れとか灑落にならんのだから早い所本當、雨が止んでしい。
世間で異常気象へ向けられる目が増える一方、校のざわめきは々落ち著きを見せ始めている。
學生という移り気な質の集合だ。流石に話題としてもそろそろ賞味期限が危うくなっているようで、皆明るく昨日のテレビや雑誌、部活の話など多岐に渡る話題が段々と割合を占め出している。
楽しそうに會話する姿は実に高校生っぽいな。クラスでもある程度グループなり連む相手なりが固まってくる頃合いか。小さな集まりが教室のそこかしこに見られるようになっている最中、當の俺はと言えばそう、當然ぼっちだ。
別に、分かっていたことだし。誰ともそう會話をわさずに一人で過ごすようにしていたから、この結果は簡単に想像出來た。
和気藹々と周囲が騒がしい中、俺の周りだけ靜かなんてのは當然のこととちゃんとけ止めている。分かってやったことだ。だからこの結果は順當。
べ、別に何とも思ってないし。どうせ天気が回復したら晝寢に勤しむんだ、友達がいた方が反対に都合が悪いんだよ。
まぁ、なんだかんだ元気がないよりは元気があった方が一緒の空気を吸う方も気兼ねしなくていい。
いつまでも暗い空見て溜め息はあはあ吐いているよりは、若者らしく今を謳歌している方が健康的というもの。
騒がしいのは嫌いだが、鬱な空気が辺りに漂うというのも遠慮したいのが本音だ。今のこの空気ぐらいが俺の考える學校暮らしらしい。
この調子で天候も回復してくれたらなぁ。そう思ったのがいけなかったのか、それから直ぐ事態は更に悪化の方向へと進んでいってしまった。
放課後、いつものように校探索へと勤しんだ訳だが、どうにも校の空気がおかしい。
朝には気な騒がしさが一年の界隈にはあったはずなのに、それが放課後の今、なんでだかざわざわと落ち著かない喧騒がそこらで上がっている。
なんだと思いそっと耳を澄ませれば、どうにもこの雨に関係すると思われる奇病が発見されたのだとか。
ええ?っと思い更に々と噂を拾っていくと、どうやら昨日だか一昨日だかに子生徒が雨の中、道路に倒れている所を警察に保護されたらしい。その子生徒は病院へと運ばれたが、意識が朦朧とし溫も低くそのまま強制院となったそうだ。始めは風邪かと思われたが、それにしては溫が低過ぎると現在も集中治療がなされているとのこと。
この子生徒は他校の人間で、しかしながらその知り合いが我が學校にいるらしく、二年當たりから広がって今では三年から一年までこの話題で持ち切りであるそうだ。
不審な長雨に原因不明の病気。両者を関連付けるのは至極當然な流れで行われ、それと共に不穏な気配が校には漂い出した。
まだ噂段階の話であり真実かどうかははっきりしない。それっぽく話されているだけなのでそんな奇病があるのだと信じている生徒も現狀はまだない。
あの雨に打たれたら誰でもそうなるんじゃないか? まっさかーと冗談で片付けられる程度の溫度しかないが、しかし尤もらしく広まるのも時間の問題ではないかと思う。
所詮はただの噂話だ、でもそれがさも真実かのように流布されるなんてままあることだろう。下手すりゃ大量の引き籠もりの発生にも繋がり兼ねない。
危ういな、と危機を抱く俺は果たして考え過ぎなのだろうか。どうにも騒ぎがする。
朝の和気藹々と、雑然とした気配が放課後の今では見る影もない。皆不安そうに窓から空を見上げ降り続く雨を眺める。
元よりあった雨に対する不信が加速しているような気配だ。落ち著きのないが俺にまで伝播してくるようだった。
奇病と長雨。なんだか考えれば考えるほど関連があるように思えてきて思考を止めるため頭を振る。
まさか。いやでも。拠など何もないのに都合のいい繋がりを見出してしまいそうで自分の思考が不快だ。
全ても葉もない噂でしかないというのに、さも真実であるかのように扱うことは非常に恐ろしいことだとこの年ならば理解もしている。他の生徒がどうかは知らない。思い込み、集団催眠の恐ろしさなんてちょっと調べれば簡単にネットでだって拾えるはずだが、さて。
宗教団の臺頭とか心配したこともあったが、ひょっとしたらその恐ろしさは極近に転がっているのかもしれない。不穏な気配漂う校から逃れるように、気持ち早足で階段を下りていった。
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