《骸骨魔師のプレイ日記》イベント準備開始

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【薬學】レベルが上昇しました。

【錬金】レベルが上昇しました。

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どんな迷宮を造り上げるかは橫に置いておき、私は【錬金】での生産に勵んでいた。と言うのも、先ほどのイーファ様の話の通りに仲間達にも私と同じ依頼が舞い込んでおり、その件について一度相談しておきたいと打診があったからだ。

私としても換は必要だと思っていたので問題は無い。他のメンバーはイーファ様とは異なる神から依頼されたはずで、そうなると私が聞いていない報があるかもしれない。同じ依頼をけるのだから、報の共有は重要なのだ。

「おう、戻ったぞ」

「ああ、お帰り…?」

最初に戻ったのはジゴロウだった。ジゴロウの、はずだ。何故自信を持てないのかと言うと、彼の背丈が大柄な人男並みにびているからだ。ひょっとして…

「進化したのか?」

「おうよ、雷獣狂鬼《サンダーベルセルクホブゴブリン》だとよ」

なんと、もう進化したのか!早いな!

「職業(ジョブ)も拳闘士って奴になった。自分で言うのもアレだがよ、メッチャ強くなったぜ」

「うう、一歩先に進まれたか…!」

私のレベルはまだ18。ジゴロウに2レベル差を付けられた事になる。リアルチートではない私はせめてレベルだけは抜かれまいとしていたのだが、外へ狩りに行きまくるジゴロウよりも先を進むのは土臺無理だったということか。

「そう落ち込むなって。それより神の依頼だけどよ、けたよな?」

「當然だ」

達の狙いである魔系プレイヤーを増やす事は、はっきりいってそこまで興味がない。いや、増えた方が面白いとは思うのだが、私は今の仲間と冒険しつつ悪役らしさを磨くことが出來ればそれでいいからな。

たった五人しか殘って居ないと言うのには驚いたが、それだけだ。私に直接関係が有るわけではない。第二陣で増えて助けを求められたら手を貸すくらいはして上げると思うがね。

それよりも、迷宮のボスという悪役が出來ることこそに魅力があるのだ。ジゴロウの場合は強いプレイヤーと戦えるからだろうが、方向の違いこそあれ魅力をじているのに違いはあるまいよ。

「くくく、んな奴と戦いてぇなぁ!」

「戦闘狂め、自重する気は頭無さそうだな」

「當ったり前ェよ!勇者パーティーやら馬に乗ったやら…楽しみで今から疼くぜ!」

本當に戦う事が楽しいのだろうな。私も戦いをそれなりに楽しんでいるが、彼ほどではない。この狂気とまで言えそうな求はどこから來るのだろうか?

「戻りましたぁ…」

「帰ったぞ」

「ただいま!」

っと、三人も帰って來たか。おや?アイリスはわからないがルビーは見覚えの無い短剣を、源十郎は見覚えの無い大剣を背負っているな。

「無事に試練は突破出來たようだな。おめでとう!」

「あ…ありがとう、ごじゃいましゅう~…」

何故かアイリスがかなり消耗しているのだが、何があったのだろうか?

「いやぁ、南の試練で兎ちゃんと戦ったのは良かったんだけどねぇ…」

「試練を終えて帰ろうと言う時に時に今から挑戦しようとするプレイヤーと出會しそうになっての」

「何とか見付からずに逃げられたが、疲労困憊になったわけか」

元々生産がメインのアイリスは戦闘が得意ではない。先日の窟でも普通の探索はともかく、ボス戦では火力に難があって妨害に専念するしか無かった。妨害出來るだけマシなのだろうが、私を含めた四人と比べれば遙かに劣るのも事実である。

そんな彼が『蒼月の試練』に挑戦するだけでもキツかっただろうに、その後で試練に挑もうと萬全の準備を整えたトッププレイヤーから逃げたのだ。隠れて移したりする事には結構なストレスをじるもの。グロッキーになるのも致し方無いな。

「お疲れ様」

「はいぃ…疲れましたぁ~…」

「報酬はやっぱり?」

「うん、長する裝備だったよ。ボクは短剣二本のセットだね」

「儂は背中の大太刀と首じゃな」

「私は、木槌と鉈でしたぁ~」

なるほど、ジゴロウよりも報酬が一つないのは単獨撃破報酬が無いからだな。私?初攻略者報酬含めて四つ有りますが何か?

「それは良かった。じゃあ早速例の件について換したいのだが、構わないな?」

◆◇◆◇◆◇

神達からの依頼、その報のり合わせは終わった。とはいえそれぞれが聞いた容は大差無く、むしろ私が一番詳しく聞いていたので私にとって何の収穫も無かったのだが。

「それで、皆はボス役をやるのか?私とジゴロウは引きけたんだが」

「儂もやるぞ」

「ボクも!ちょっと方向は違うけど、イベントに參加出來るなら參加したいしね!」

源十郎とルビーは參加、と。アイリスはどうだろう?

「あの、私、戦うのが苦手で…。それでも良いんですかね?」

アイリスが言いたい事はわかる。ここにいる五人以外は知らない事だが、次のイベントのボス戦は第二陣向けのPVに使われるのだ。戦うのが苦手なアイリスは、己の戦いがPVに使えるものになるとは思えないのだろう。だから五人の中で唯一、保留にしていたのだ。

「良いんじゃないか?絶対に勝てとは言われて無いのだから」

イーファ様は無理に負けてやる必要は無いと仰った。だがそれは何がなんでも勝て、と言っている訳ではない。それに何だかんだでボスの専用のアバターを使うのだから、彼の生産特化種族で戦う訳でもない。そんなに気負う必要は無いのだ。

「なら、頑張ってみます!」

そう言うと、アイリスは力強く頷いた。これで五人全員が參加だな。一緒に行出來ないが、各々が楽しめるといいな。

「んじゃあよ、明日と明後日は下水道の下を目指さねぇか?今の俺たちならあのネズミのボスも倒せるだろ?」

ジゴロウの提案に、私は思考を巡らせる。彼の言っているのは鼠男將軍(ラットマンジェネラル)のことだろう。奴は単のレベルが30と大であるだけでなく、鼠男騎士(ラットマンナイト)と言うレベルだけなら『蒼月の試練』のボスと互角の取り巻きを引き連れていた。

初めて見た時は戦闘狂のジゴロウですら勝ちの目は無いと素直に認め、撤退した相手だ。だが、今は違う。レベルも上がっているし、我々は全員が『蒼月の試練』の報酬の裝備を持っている。ポーションなどをしっかりと準備すれば、勝算は十二分にあるだろう。

それに強敵と戦い、勝利した経験は自信に繋がる。アイリスの不安を吹き飛ばすキッカケになるはずだ。

「よし。じゃあ明後日の土曜日にみんなで挑もう。私は午後からならログイン出來るけど、みんなはどうだい?」

「行けるぜ」

「儂もじゃ」

「ボクも!」

「私も大丈夫です」

「なら土曜日の午後に集まり次第、鼠男將軍(ラットマンジェネラル)とその部下達に挑戦しよう!」

方針が決まった所で、今回の話し合いはお開きとなった。さてさて、じゃあしでも勝算を上げるべくレベル上げと行きますかね。下水道の鼠男(ラットマン)を絶滅させる勢いで行くぞ!

◆◇◆◇◆◇

ログインしたときと同じような浮遊じたかと思えば、僕達は商都セカンから始まりの街ファースに転移していた。

「おお、これが都市間ワープか。便利だ…な」

僕達はファースから東に進んだ所にいた二目のフィールドボスを討伐して商都セカンにたどり著いた。そしてリスポーン地點を更新してから訪れた事のある街の間をワープする機能を使ってファースに戻ったのだ。

「掲示板関連は藍菜に任せるとして、それが終わったら打ち上げしましょうよ!」

「さんせー!」

「祝勝會、大事」

ローズやメグ達はボス討伐と初セカン到達のお祝いをどこでするのかで盛り上がっている。最近のVRゲームでは飲み食いが普通に可能だし、FSWには満腹度があるから食事は大切だ。まあ、現実の空腹をごまかす事は出來ないんだけどね。

「ルーク、どうした?浮かない顔をして」

「あ、ああ…」

無邪気に笑うローズ達には気付かれずとも、年上のであるキクノにはお見通しみたいだ。誤魔化そうか、とも思ったけど無理だな。正直に言うか。

「何だか、リスポーンした時と似た覚だったから、さ」

「…そう言う事か」

僕達のパーティーは自分で言うのもなんだけど、かなり強い。トッププレイヤーでも一、二を爭うと言ってもいいと思う。だから僕達がリスポーンする、即ち死んでしまう事は滅多に無い。

だからこそ、やられた時の事は嫌でもよく覚えている。ボス戦で失敗した時やモンスターの奇襲でやられた事もあった。

けれど、一番苦い敗北の記憶はやっぱり『北の山の悪夢』、そして『銀仮面』との戦いだ。

「ルーク、あの戦いは々と想定外だった。忘れろ、とは言わないけど気にし過ぎるな」

「頭ではわかってるんだけどね」

途中まで上手く行っていた『北の山の悪夢』と呼ばれる小鬼(ゴブリン)との戦い。その追い込みに掛かった所で突然現れた謎の『銀仮面』。奴のせいで討伐部隊の後衛は壊滅的打撃をけ、部隊全の敗北の一因になったのだ。

「遊びに本気になるなんて、子供っぽいよな」

確かに、これはゲーム。プレイヤーが死んだって多のペナルティをけるだけですぐに生き返る。実際、討伐部隊の面々はリスポーンした後で文句は言っても本気で悔しがってはいなかったように思う。

でも僕は凄く悔しかった。自分が一対一で負けた事もだが、何よりもパーティーの仲間を慘殺された事が、そしてその時に何も出來なかった事が何よりも悔しかったんだ。『銀仮面』にこの借りは絶対に返してやる。そう決めたんだ。

「確かに子供っぽいかもな。でも、それは私もさ」

キクノは苦笑しながら前を見る。視線の先には楽しそうに笑うメグの姿があった。

「メグが殺られた時、私は頭にが上って暴走した。ある意味、あれは討伐部隊が全滅した一番の原因だったよ」

「それは…」

その事をキクノは敗戦後の反省會でみんなに謝っていた。もっと冷靜になるべきだった、と。

「けどさ、沒型VRゲームって熱くなる位で丁度いいのさ」

「え?」

「沒型VRゲームの、それも今みたいな疑似人格AIが使用された奴の黎明期にどっかのプロゲーマーが言ってたんだよ。『この系統のゲームは外國か異世界で新生活を始めたって思った方がいい』ってね」

外國か異世界、か。確かにリアリティーがあり過ぎて、そう言われた方がしっくり來る。

「だから、私やルークみたいに熱くなれる方が上手くなる。本(・)気(・)になれる奴こそ、世界にりきる奴こそ沒型に向いてるのさ。他の四人だってそうだろ?」

言われてみればそうかもしれない。藍菜は攻略の合間にこの世界の文化や歴史の考察に沒頭しているし、ローズは現実にはない食材で料理を楽しみつつ現実で再現しようと日々研究している。

メグはNPCの子供たちと仲良くなって時間があれば一緒に遊んでいるし、蓮華は神殿に出りしてはご年配の方々と戯れている。方向こそ違うけれど、僕達は皆、この世界にどっぷりとれ込んでいたんだな。

「なんて言うか…本気になれるアンタは嫌いじゃないよ」

「そっか…ありがとう、めてくれて」

「はっ、そんなつもりじゃないさ」

キクノは聲を荒げると僕の背中を一発叩く。それが照れ隠しだと言うのは鈍だとよく言われる僕でも解る。

「ルーク!キクノ!何してんのさ!置いていくよ!?」

「ん?ああ、わかってる」

「ちょ、待ちなよ!」

そうだ、僕には仲間がいる。皆とこの世界を巡るのを楽しくじればじるほど、仲間が傷付いた時の悲しみや悔しさが増して行くのだろう。

それを格好悪いとか、馬鹿馬鹿しいとか思う事はないんだ。それがこの世界で生きる(をプレイする)ってことなんだから。今、この世界を全力で楽しもう。そのために、まずは祝勝會だ!

はい、という訳で最後に勇者君視點をれてみました。筆者的には普通に良い奴を書いたつもりなのですが、いかがでしょう?

最後のは完全に筆者の主観です。賛否両論あるでしょうが、『へ~、こいつこんなこと考えとるんやな~』位に思っておいて下さい。

次回から本格的にイベントに向けてきだします。

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