ぶわはははははは！見事に騙されたな、勇者共よ！卑怯？違うな。私がやったことのある數ないゲームでは、強かったボスが実は前座で二(・)連(・)戦(・)だったと言うことはザラだったぞ。

彼らがボスだと勘違いしていたのはユニークモンスター三と、それらに指揮させる配下だったのだ。いやあ、王族(ロイヤルゾンビ)の知能を上げるためのポイントを捻出するのにはかなり苦労したよ。本當はいれたかった謎解き要素を泣く泣く諦めたのだが、ボスだと勘違いさせらせたのだからこれで大正解だったな！

奇襲功！最後の最後で詰めが甘いのだよ、君たちは！さあ、最大の障害は死んだ！ここからが真のボス戦だぞぉ？リーダー無しでどこまでヤれるのかなぁ？

「や、やったな！」

「許さない！」

ようやくき出した達だが、怒りのままに振るう剣や短剣ならば私でも容易に回避可能だ。んでもって、鎌と言う特殊な武は背後に下がりながらでも使えるんだぜ？

「く、くそっ…！」

「キクノぉ！？」

私は鎌を振りつつバックステップを踏む。それによって鎌の刃は、キクノと呼ばれたプレイヤーの腹部をバッサリと切り裂く。もう死にかけだった彼は、それだけで陀仏だ。流石はボスの火力！いい一撃してんねぇ！

「このぉ！」

おっと、この娘は確かローズだったか。もう立ち直っているとは、中々豪膽なだな。

「私が盾役をやる！メグは死角に回り込んで攻撃！蓮華、魔力は？」

「まだ無理です！」

「なら、藍菜を庇って！藍菜はの魔を用意！」

「「「了解！」」」

ローズの指示で持ち直した辺り、彼がこのパーティーの副リーダーのようだ。やれやれ、このまま楽に勝たせては貰えないらしい。

「槍(ライトランス)…っな！」

藍菜、だったか？そのプレイヤーが放つ魔を私はわざとギリギリまで待ってから大きくサイドステップすることで躱す。その一點で彼達は驚愕している。それもその筈、不死(アンデッド)は基本的にノロマなのだ。しかも特殊な魔でもない限り、戦闘AIは余り賢くない。

しかし、今の私は違う。不死(アンデッド)の中でもかなり素早い種族(レイス)で、しかも中に元々は魔師だったプレイヤーがっているのだ。魔師にとって一番嫌なのは、當たるギリギリで大きくかれる事。【魔力制】によって導されているから、こうかれると中々當たらない。

『敵を知り、己を知らば百戦危うからず』という言葉があるが、敵(魔師)をこれ以上ない程知っている私に魔が當たる訳がないのさ！

「カタカタカタカタ！」

私はボス部屋を縦橫無盡に駆け回りながら鎌を振り、【闇魔】の闇玉(ダークボール)をローズとメグに向かって連する。ただし、これは単なる牽制と足止めに過ぎない。私の本命は魔師と神だ。

私は神目掛けて鎌を振り降ろす。上段からの一撃を神は小盾と棒を差させてガードしてみせた。咄嗟にける辺り、流石はトッププレイヤーの一角と言うべきか。

「うあぁっ！」

けきったか。だが、膂力は私の方が勝っているらしい。ジリジリとではあるが押し込んでいる覚があるからな。

「離れろ！」

まあ、足を止めれば來るわな。私は背後から斬りかかったローズを躱して四人から距離を取る。仕切り直し、だな。

「メグ、鑑定は！？」

「…骸骨処刑者《スケルトンエクセキューショナー》Lv30」

【鑑定】されたか。そうとも。私が選んだ種族(レイス)は骸骨処刑者《スケルトンエクセキューショナー》。く骸骨(スケルトン)から骸骨戦士(スケルトンウォリアー)、骸骨鎌士(スケルトンシックラー)から特殊な進化を遂げた魔だ。

進化する條件は二つ。一つ目は『【鎌】ともう一つ以上の武系能力(スキル)がレベル20以上である事』、二つ目は『防系または力増強系の能力(スキル)を持たない事』だな。ぶっちゃけ『攻撃特化型の鎌使い』がなれる種族(レイス)だ。

高火力高機紙裝甲と言う奴である。だからこそ、勇者の一撃を食らう訳にはいかなかった。下手すれば普通の骸骨戦士(スケルトンウォリアー)よりも力がないから、即死するボスなんて無様を曬しかねないからな。因みに能力構はこんなじ。

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種族(レイス)：骸骨処刑者《スケルトンエクセキューショナー》 Lv30

職業(ジョブ)：大鎌士 Lv0

能力(スキル)：【鎌】

【剣】

【投擲】

【二刀流】

【筋力強化】

【敏捷強化】

【土魔】

【闇魔】

【暗殺】

【暗視】

【狀態異常無効】

【打撃脆弱】

【屬脆弱】

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【暗殺】による奇襲で一人を確実に排除した後、時々魔で以て牽制しつつ、見た目に反したパワーとスピードで翻弄するガン攻め構だ。

鎌って凄く使い難い武なんだが、能力(スキル)のおで簡単に使いこなせる。ゲームの作補助システムによって何となくこうすればいいのが分かるからだな。

それでも難しいのに変わりは無いのだが、使っていて結構楽しくなってきたぞ？

「カタカタカタカタ！」

私は再度、突撃を敢行する。力こそないが、ボスはボス。ステータスは軒並み水増しされているので、私が本気で疾走すると誰も追い付くことはできない。

それを知ってか知らずか、ローズ達は集陣形をとっている。恐らくは魔師以外のメンバーで私の斬撃をけ止め、その瞬間に【魔】を撃つ算段だろう。を切らせて骨を斷つ、といった所か。

そもそも私には骨しかないのだから、何をしたって骨を斷つ形になる…って馬鹿な冗談は止めておこう。しかし、彼達の努力は無駄である。

私は間合いの外から思い切りを捻って力を溜める。もし私にがあれば、背筋がギチギチと音を立てていたかもしれない。そんなレベルで力をいれる。

「カタタッ！」

「なっ！」

そして十分な力が溜まった直後、手に持っていた大きな鎌を投擲した。鎌は回転しながら魔師目掛けて一直線に飛んでいく。あ、稲刈りをこうやって出來れば楽なんじゃ？いや、稲穂の回収が面倒だからダメか。

「な、めるなぁ！」

ローズは魔師に向かって飛んでいく鎌を剣で撃ち落とした。飛んでくる巨大な刃を打ち返すとは凄い膽力だ。

しかしまあ、そうするわな。當たれば運が良かった、程度のものよ。むしろ計算通りだ。

「カタカタ！」

「くはっ…！？」

私は握った両(・)手(・)剣(・)によって鎌の対処で隙だらけになったローズを切り裂く。彼達は知らないだろうが、進化の條件を満たすためにこのボス(私)は【剣】も持っているのだよ。

使うのは勿論、処刑剣。歐州で処刑の際、本當に使用されていた先端が平たい剣である。こういうモノを隠せる所もローブのいい點だな。

因みに、処刑剣は先端が平たいせいで突きが出せない代わりに首狙いの斬撃へ命中補正がかかるらしい。積極的に首刈りを狙って行くぞ？

私の速度と腕力がしっかりと乗った斬り上げによって、ローズは死亡、の粒子となった。更に剣から左手を離して落ちていた鎌を握り、ローズの左右にいた盜賊と神にそれぞれを振るう。

盜賊は鎌を回避したが、神は防を選択した。しかし盾を構えるのが一瞬、遅かったな。処刑剣はその用途通りに神の首を切斷する。殘りは二人！

「くっ、聖(ホーリーレイ)！」

魔師の杖から一條の閃が迸る。は、速い！流石は守りに特化しているが、數ない攻撃魔の速度は最も速い【魔】だな。この種族(レイス)でなければ當たっていただろうよ。

「このタイミングでもダメなの！？」

「私が、行く！」

盜賊は二本の短剣を逆手に持って私に向かって來る。おお？これは二刀流というやつか？左右の腕がまるで別の意思を持っているかのようにいている。私と一緒だな！

しかし、前衛としての年季の差は大きいらしい。防ぐので手一杯だ！使っている武が両方とも大きいのも一因だろうな。ならば、これでどうだ？

「カタカタ！」

私は自分の足元に石壁(ストーンウォール)を使う。するとどうなるか？石壁(ストーンウォール)がせりあがる速度で上を取ったことになるのだ。

「んあっ！？」

石壁(ストーンウォール)の上から盜賊の背後に跳躍した私は、防戦一方だった鬱憤を晴らすべく、鎌で彼を袈裟懸けに両斷した。これで、殘りは一人。

「カタカタタ！」

「ひっ！」

私は持ち前の速さで一気に距離を潰すと、右手の処刑剣と左手の大鎌で魔師を首とを両斷する。これにて戦闘終了、だ。

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イベントで勝利しました。

6SPを獲得しました。

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「よぉぉし！勝ったぞぉぉ！」

私は誰も居なくなったボス部屋で勝利の雄びを上げる。いやいや、疲れた。クタクタだよ。前衛って、こんなに疲れるのか。神経が磨り減っていくじがしたぞ。

私には刺激が強すぎる。格下をめるならまだしも、同格とチャンバラするのはゴメンだ。ジゴロウ達の前衛でギリギリの戦いを求める心はきっと一生涯理解出來ないだろうな。

それにしても、PVに使われるからと廚二心を擽る種族(レイス)を選んだのが功を奏すとは。あ、けど私のド汚い戦い方でPVに使えるのか？

ユニークモンスター三が率いる魔の群れで勘違いさせておいて、背後から急襲。それからも初見殺しな技で翻弄…ダメな気がする。まああの神様のことだ、きっと上手く編集してくれるさ。…してくれますよね？

気にするのは止めよう！うん！今頃勇者パーティーが我が迷宮の構造を掲示板に書き込んでいるだろう。それを読んだ連中が押し掛けてくるに違いない。そっちでは可能な限り派手に暴れるとしようか。

◆◇◆◇◆◇

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イベントで勝利しました。

23SPを獲得しました。

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5…4…3…2…1…0

はい、イベント終了！結局、勇者パーティー以外は誰もここまで來ませんでした。勇者パーティーは詳細な報を載せたのだが、罠はともかく量の前に敗れ去ったのだ。やはり、弱い魔とはいえ狹い通路で前後から挾まれたら推奨レベル帯でも厳しいのだろうな。

「おや？」

一人で想をまとめていると、頭の中で電子音が鳴った。これは何かの通知が來た時の合図だ。なんだろうか、とメニュー開くと、視界が真っ白に染め上げられた。

◆◇◆◇◆◇

「毎度の事ながら唐突ですな、イーファ様」

「うふふ、この方が楽しいでしょう？」

そりゃ、ビックリさせる側は楽しいでしょうよ。口には出さないけどさ。

「それで、ここに招いたと言うことは…もしや？」

「ええ。イザーム様に約束の報酬を差し上げようかと」

私は心の中でガッツポーズをとる。必死に頭を使って弱い魔を最大限に生かす方法を模索したり、注意が散漫になるタイミングを予測して罠を仕掛けたりした甲斐があったというものだ。

「楽しませて貰いましたよ？特に勇者が首を刈られた時の顔…今にも思い出し笑いをしてしまいそうですよ」

何気ない畜生発言ですねぇ。私も人の事は言えないのですが。

「勇者と言えば、プレイヤーのランキングはどうなったのです？今頃は結果発表なのでは？」

「あら、気になりますか？」

「ええ、勿論です」

一期一會で初見攻略を強要される無作為迷宮(ランダムダンジョン)を効率よく攻略出來る事は、どれだけ機転が利くのかに関する一種の指標となり得る。いつか敵対する可能鑑みれば、注目せずにはいられない。そう伝えるとイーファ様は微笑みつつ頷いた。

「ならば一番気になるのは最多迷宮攻略賞ですか。最も多くの迷宮を攻略したのは『白き』ですね。あの勇者率いるパーティーですよ」

ほぅ。彼らが一位なのか。というか彼らのパーティー名は『白き』だって初めて知ったぞ。中々格好いいじゃない。あと、我が迷宮の栄譽ある第一被害者であった『剛院枚植威(ゴーイングマイウェイ)』は最多迷宮攻略賞は逃したものの、それでも堂々の三位賞を果たした。おめでとう！

「因みに、彼らがクリア出來なかった迷宮はイザーム様の『呪いの墓塔』と源十郎様の『蟲の楽園』だけです」

「おや？ではジゴロウの迷宮は攻略されてしまったので？」

「いいえ。単に彼らは挑戦出來なかっただけですよ。我々が依頼したイザーム様達の中に、迷宮を攻略された方は居られませんので」

おおお！皆もやりとげたのか！それは目出度い。特に恐らく勇者パーティーとガチンコ勝負をして勝った源十郎は流石としか言い様が無いな。むしろ、最後の最後まで搦め手で行った私が異質なのか？

「さて、時間も有りませんし手早く報酬を差し上げましょう」

「時間？」

「ええ。ここがプレイヤーを易々と招いて良い場所ではないことは理解されておられるでしょう？」

「それはそうでしょうね」

當たり前だ。ここは神々の住まう領域、というヤツだろう。俗な言い方をすれば舞臺裏のようなもの。そんな場所へプレイヤー気安く通していい訳がない。

「余り長居されると我々に賛同しない神に気付かれる可能が高まるのですよ」

「なるほど、それは一大事ですな」

つまりイーファ様と不仲ないし敵対している神がいて、私達も連中に目を付けられる可能があるのか。さっさと退散せねば。

「ご理解頂けたようで何よりです。ではこれをおけ取り下さい」

――――――――――

ゴッドクエスト：『迷宮の主』をクリアしました！

報酬が贈られます。

隠し條件、『難攻不落』を達しました！

報酬が贈られます。

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アナウンスと同時にイーファ様の手から神々しいの玉が生まれ、私の方へと飛んでくる。ふよふよと頼りなく近付いてくるそれに思わず両手をばすと、そのは実となった。

「これは…卵？」

「ええ、その通りです」

私に與えられた報酬。それは人間の頭部程もある卵であった。一度テレビで観たダチョウの卵のようだな。しかし、ダチョウであるハズはないし…。一、何の卵だというのだ？

「何が孵るかは私にもわかりません。というのも、この卵はイザーム様の行によってイザーム様に相応しい相棒を産み出すからです」

「相応しい相棒、ですか。面白いですね」

ランダム、ではなく私の行で決まるのか。參照する行が何なのかは不明だが、私の行原理を元に産まれると言うことはある意味私の分のようなものだな。とても面白い。

「それは良かったです。では、あらゆる攻略者を退けたご褒はこちらです」

「鎌…？もしや？」

「ええ。お察しの通り、イザーム様がボスとして振るっていた大鎌です」

うひょお！それは粋な計らいじゃないか。刃溢れと錆びだらけの鎌は記念品なんだろうけど、とてもロマンがある。ならばこれで十分だ。

「見た目はみすぼらしいですけれど、強化して使って下さいね。きっとお似合いですよ」

「…わかりました」

ふむ、イーファ様が言うのなら強化してみよう。という事は単なる記念品ではないのか。なら大切に使ってみますかね。なら、ここからでたら【鎌】を取らねば。なぁに、このイベントでSPは腐るほど得たんだ。し散財してもいいさ。

「そろそろ限界です。イザーム様、この度のご協力には本當に謝しております」

「水臭いことをおっしゃいますな。私は単に祭りを楽しんだとしか認識しておりませんよ？」

これは私の噓偽り無い気持ちだ。彼達の思が何であれ、私はただ楽しかった。他の四人も同じだと思うぞ？

「ふふふ、そうでしたか。『夜行』の未來に幸有らんことを神域より祈っておりますよ」

それは心強い、という私の思考は言葉になる間もなく目の前が白く染まって行く。ああ、今回の謁見はこれで終わりか。視界が全て白く塗り潰されながら、私は暢気にそんなことを考えるのであった。

主人公の迷宮はダークソ○ルシリーズのフィールドみたいなもの。むしろボス部屋まで行けた彼らを譽めてやってしいです。

ボス戦が連戦だった時の絶は半端じゃありませんよね。ス○ウ&○ーンス○イン戦初見時には泣きそうになりました。

骸骨のキャラが持つ武と言えば、ボロボロの屑鉄か大きな鎌だと相場は決まってますよね！ですが、『死と混沌の神』がいるので、もし骸骨処刑人になってから進化を重ねても死神にはなれません。しかし特定の條件を満たすと…？

短いですが、第三章は次回で終わりです。

次の話と掲示板回と同時投稿します！