それからしばらくは狼や猿の先導のもと野良モンスターを狩ってた。

皮とかはいらないけどおがたくさん手にったので満足、デスペナも殘り2時間くらいでやることがルーチン化してきたなぁと思っていたころだった。

森の一角で音が響いた。

「なに⁉」

を隠しながら音の現場に行くと森の中に心地のような広場が出來上がっていた。

近くではの粒子になっていくプレイヤーらしきものと、ちりちりと燃えるマンドラゴラの葉。

なぎ倒された木々の隙間から見えるは黃いドラゴン……奴がこの慘狀を作り上げたらしい。

ふふ……私の前で森を焼き、食材を無駄にしやがったな？

「ぶっ殺してやる！」

格上だろうと知ったことではない、翼を広げて飛び立ちドラゴンの目の前に立ちふさがる。

突然出てきた私に驚いた様子のドラゴンが口をパクパクとさせて目を見開いているがしったことではない。

「じゅるり……」

怒りと同時にこみ上げたのは食、どのゲームにおいてもドラゴンのというのは高級食材扱いだ。

プレイヤーかモンスターか知らないけれど、おを手にれる絶好のチャンスだ。

「おいドラゴンだろお前、置いてけ……なぁ、置いてけ！」

びながら突撃をかます。

狙いは眼球、今の私ではあの鱗を突き破れるか怪しいからのらかい部分を狙うのは定石だと判斷できる程度には冷靜だ。

狩猟というのはいつもそうだ、熱くなる心と冷靜な神の両方が必要になる。

むろん強靭なも必要だけれど、一番大切なのは委しないこと。

おびえても狩られる側にまわるだけだ。

ならば先手必勝と突き出した腕がドラゴンの眼孔に突き立てられる。

「おんぎゃああああああああああああああああ！　まってまって！　落ち著いてお姉さん！」

「プレイヤー？」

「そう！　俺プレイヤーだから！　だから落ち著いて話をしよう！」

「………………置いてけぇ！」

「話通じねえ！」

話し合うべきか、狩るべきか、考えた結果狩ることにした。

私の狙いはおなのだ。

眼孔に突き立てた手を握り、その眼球を抉り出す。

ドロップアイテムは基本的にランダムだけれど、特定の方法で相手を倒すとドロップ率の変化や生きたまま素材をはぎ取ることができる。

あくまでも仕様らしく、説明書に書いてあったことなのでどこまで本當なのかしらないけれど引き抜いた眼球がの粒子になると同時にインベントリにドラゴンの瞳というアイテムが加わったと視界の端に映った。

「人間を犬に食わせすぎだろ！」

ブレスを吐こうとしたのか、口を大きく開けたドラゴンさんの背に回って首にしがみつく。

これで攻撃できまい！

「くっそ、マジかよ！　こうなったら……燃え上がれ！」

「っ！」

とっさにその背中から飛びのく。

黃いドラゴンのが炎に包まれたからだ。

判斷が遅れていたら丸焦げになってペナルティをけていただろう。

うーん、どうしよう。

私は近距離戦闘しかできないし炎弱點だからあんな風に燃えられると手も足も手もだせない。

どうにかする手段は二つ三つあるけれど、確実に欠けるのよね。

と、なるとだ……できる事からやっていこう。

観察した限り炎は全、それこそ翼の先端や爪の先、口に至るまで包み込んでいる。

いや、口もとなると自ら燃えていると考えるべきかしら。

それは炎の霊、サラマンダーの特よね。

蜥蜴とドラゴン、確かに組み合わせ的には正しいのかしら。

だけど黃という事は炎屬だけというわけじゃなさそう。

他に屬を持っている可能が高いなら離れすぎても危ないから付かず離れず、相手の炎が途絶えるのを待つのが吉と見た。

持久戦になりそうね……やってやろうじゃない。

幸い日は傾いてあと30分もすれば夜が來る。

太ダメージを気にすることなく戦える時間が來るわけで、日傘を持つ必要はない。

きに支障が出ることもないわけだ。

「はっはぁ！　これで攻撃できまい！　だから話聞いて！」

「問答無用！」

両手の爪を立てる、そして左手は貫き手の形にして右手で肘から先を切り落とした。

吹き出すはすぐに止まるものの継続ダメージになるのはつらい。

初めてダメージらしいダメージをけた覚で頭がふらふらするけど、切り落とした左腕をキャッチして、貫き手形狀のままになっているそれを炎に包まれたドラゴンに投擲する。

「うっそぉ！」

「死にさらせおらぁ！」

左腕は炭化しながらも炎の壁を突き抜けてドラゴンのに突き刺さる。

すぐに燃え盡きてしまった左腕だがそれが功を奏した。

ドラゴンの傷口からあふれ出た、それが炎にれると鎮火されていくのだ。

たぶん水弱點でももっているのかしらね、それでが水扱いされているという事だとするとこれはラッキー。

「はっはぁ！　まずはじゃ！」

傷口に向かって突撃する。

あふれ出るを直飲みしながら、ついでにも食いちぎる。

踴り食い萬歳！

「うっそだろこの！」

何かんでるけど知ったことではない。

それよりもこの、この、実に味だ！

は墮ちた英雄のそれとは違いわずかな酸味を含んだ柑橘類を彷彿とさせるかおり、僅かに漂う香りはまるで樽のごとく、ピリピリとした覚は炭酸、のど越しも爽やかだ。

いうなればカシスソーダのようなカクテルによく似た味わいの。

それをソースのごとく保有したは上質な鴨に近い。

だが食は蛇やワニだろうか、弾力が強く歯を押し戻す覚がなんとも心地よい。

時折コリコリした食が混ざるのは管だろうか。

本來ならばしっかり処理しなければの味を損なうが、今の私にとってこれほどのごちそうもない。

管を噛みしめるたびに吹き出すがソースのようで、食と相まってアクセントとなっている。

実に味だ。

こうなってくると他の部位も気になるところ、切り落として燃え盡きた左腕はもはやどうでもいい。

右手で鱗をはがしては噛みつく。

私の知っている鱗は調理しなければ味もなく、食もサランラップを齧っているようなものだが、これは実に味だ。

サクサクという食は鱗の厚みと頑強から來るものだろうか、せんべいのようにバリバリとしているかと思えば思いのほか歯ごたえが軽い。

もしかしたら私の種族特が原因かもしれないけれどそんなことはどうでもいい。

片っ端からドラゴンの鱗をむしっては齧っていくが、どうにもこいつ暴れやがる……踴り食いの醍醐味とはいえここまで暴れられると食べにくい。

「こら暴れるな！　食べにくいだろうが！」

「暴れるわ！　つーか現在進行形で逃げているのに何でついてこれるんだ！」

「！」

実際相當HPを削って行しているから、以外の答えは出ないけどそれよりももも鱗もおいしいとなると食べるしかないじゃない！

他に食べてない部位……角は後回しとして、翼！

あのうっすらとして絹のように繊細に見える部位はどんな味わいなのだろうか、右手一本でよじ登って翼に噛みつく。

「ぎゃあああああああ！」

「うるさい！」

「いや、今までで一番痛い！　翼のダメージってこんなにつらいのかよ！」

「しらん！」

ぶちっと食いちぎって咀嚼、食としては……何かしらこれ、なんというかグミを嚙んでるようなじ。

味も薄いしそんなにおいしくない……ちょっとがっかりしながら角を齧る。

齧るけど……くて味がしない。

いや、まったくしないわけじゃないんだけどフライドチキンの骨を3時間しゃぶり続けた時と同じような……味のないガムを噛んでいるけど口の中はミントの香りみたいな、そんな覚だ。

これは、スープの出に使える！

「角よこせおらぁ！」

「ああああぁぁあぁあぁあぁあぁあああ！」

ドラゴンの悲鳴もお構いなしに角の本に貫き手、そのまま引っこ抜くとの粒子になってインベントリに収納される。

角でこれなら骨もうまいだろう。

特に脊髄の中は絶品に違いない、ならやることは決まっている……背骨に達するまでを食べる！

「いただきます！」

先ほどし広げた傷口から頭を突っ込んでドラゴンのを食べる。

悲鳴をBGMにがつがつと食べ進んでいく。

どれくらいそうしていただろうか、大きく口を開けて噛みついた瞬間がちんという覚が伝わってきた。

思わずニヤリと笑みを浮かべてしまう。

「骨よこせこらぁ！」

「そこはらめえええええ！」

ごりゅっ、と音をさせてドラゴンの首の骨、その境目を穿つ。

もう一度貫き手を決めて骨を摑むと同時に引き抜く。

このまま傷口から侵して臓も堪能してやる！　と思ったのもつかの間、ドラゴンがの粒子になって消え始めた。

今のが致命傷だったらしい……。

「まてこら！　臓食わせろ！」

「怖い……暴食さん怖い……」

「あ、どこでそのあだ名知ったお前！」

聞き捨てならない言葉を殘して消えていくドラゴンに詰め寄るけど頭部が消滅したせいか返事がない。

ならばせめてとはぎ取れる限りの鱗をはぎ取っていくが、數枚とったところでドラゴンは完全に消滅した。

……長く厳しい戦いだったとは言えないけど、味しい相手だったなぁ。

うん、また會えたら……今度は臓を堪能しよう。

角に眼球、背骨が取れたからいいスープができそうね。

それに鱗も何枚かゲット、ドロップアイテムは……お、尾だ。

これはテイルスープかな？

あるいはステーキでもいいけど……生での滴るの方が味しそうね。

あ、レベルも上がってる。

今のドラゴンさん結構レベル高かったのかな、一気に4レベルまで來たからデスペナ解除待つまでもなくほぼ規定ラインに來たじがする。

いやはや、いろんな意味で馳走様でした。

……というかなんで戦ってたんだっけ、味しくて忘れてたわ。