仕事が……仕事が終わらない！

祥子さんに頼まれたレポートの方は問題なく、とはいえず新たに舞い込んできた仕事が山積みになっている。

まずクライアントの要で化けオンの中で味しかった食べをピックアップして、味の評価を5段階で記。

ちなみにトップは英雄さんの。

次がゲリさんの鱗かしら……。

それを纏めたら今度は祥子さん経由できた伝子改良されてそうな存在一覧。

というかまだ確定じゃないけれど、人間含めて全部伝子改良されてるでしょあれ。

人間プレイヤーのやを口にしていないからよくわからないけれど……レベル１でも尋常じゃない力を持っている。

ゲームだからと言われてしまえばそれまでなんだけどね、この運営どうにもきな臭いからそういうところにも気を使っていると思う。

ただの直だからそれも含めてレポート作。

片手間にちょくちょくログインしているけど1時間もしないうちにログアウトという生活だわ。

あとは頭を使うからかすごくお腹が減る。

1日5食が8食に増えた。

料理を作る暇もないから祥子さんの部下とやらが毎日出前を用意してくれるけれど……この前近辺のお店味わいつくしたから飽きてきたのよね。

あー、気楽にゲームやれてた頃が懐かしいわ。

そろそろちゃんとした料理もしたいんだけどねぇ、レシピもいくつか手にれたんだし。

それにゲリさんから抜き取った骨髄のスープも作れていない。

マンドラゴラの調理法も確立したいし、そうでなくてももう一度食べたいわ。

なんだかんだやっているうちにレベル20を超えていたからデスペナをけるようになったのが痛いのよね……。

今までみたいに気楽にマンドラゴラ食べられないんだもの。

新鮮な果実のようなみずみずしさ、噛めば押し返すような歯ごたえ、その先にあるシャリシャリとした食は心地よく、味はピリリとした大の辛味とカブのような甘味を両立している。

さすがにプレイヤーや英雄さんほどではないけれど、単品でも五指にるくらいのおいしさだったわ。

後は意外だったのがマンドラゴラは毒扱いじゃないという事かしら。

うっかりレベル20になったことに気づかず食べてデスペナけたけれど、ドライアド特有のデスペナ増加の気配がなかった。

何度か検証したけどこれは確かな話。

強心作用に滋養強壯となるとこれも伝子改良されて作られた可能があるのよね……。

もう目に映るもの全部伝子単位で作られていると考えたほうが早いレベルだわ。

うん、それでいきましょう。

面倒だから祥子さんあてのレポートは推定でこのラインまでは伝子改良済み、この先は不明だけどたぶんほとんどが改良されているという事にすればヨシ！

そして最後のお仕事だけど……こればかりは祥子さんに聞かないとわからないのよね。

「剎那ちゃんいるー？」

そんなことを考えながら書類を読んでいると祥子さんがやってきた。

インターホンを鳴らすこともなく、ずかずかと勝手に家に上がり込んでくる。

まぁいつものことなのよね、鍵閉めていてもチェーンかけていてもどこにでもり込んでくる祥子さんは……何者なのかしらね。

國家公安局員というのは知っているけれど、理解しがたい存在であるのは確かだわ。

「祥子さん、インターホン鳴らしてくれたら鍵開けますよ？」

「自分でやった方が早いからね」

側から開けるよりも外から開けるほうが早いとはこれ如何に。

鍵がカギの役目をはたしていない……。

「でもまぁちょうどよかった。祥子さん、この仕事って……」

「うん、化けオン運営に公安の人間を置きたいという要を出したらフィリアこと剎那ちゃんならいいよって話になってね。逆にそれ以外の人はダメだって言われたの」

「なんで私？」

「さぁ？　運営側は面白いからと言っていたけど、気にられたんじゃない？」

「はぁ……」

気にられる要素あるかしら……結構ゲームをひっかきまわしていると思うんだけど。

想定外の、つまりバグとかを利用した遊び方はしていない。

健全そのものでありながらイベントをいくつか獨占したりしてるし、英雄さん関連もいろいろあったし……目をつけられるには十分かもしれないけれど所詮はその程度。

ずば抜けて目立つかと言われたらそうでもないのに、結構なやらかしはしていると思う。

英雄さん関連の畫とか特にね、大手畫サイトに転載されて視聴數集めているらしいし。

転載は腹立たしいけれど新參の私が乗り込んで勝てるような場所じゃないから致し方なしというのもあるから黙認しているけどね。

「というわけで、剎那ちゃん。引っ越しとか考えてない？」

「引っ越しですか？　んー、この辺りは味しいお店が多いから気にっているんですけどね」

ついでに水道水をそのまま飲める環境でもある。

聞いたところ地下水を使っているとかで、カルキの匂いとかがつかない程度の消毒で十分らしいから。

水質がいいのかお風呂のお湯もらかくて気持ちいいのよね。

なのに家賃は３LDKで月5萬というお得さ。

……まぁ瑕疵件だからというのもあるけれど、それでも困ることはない。

せいぜいインドのお土産でもらった木製の人形の位置が変わっているくらいだ。

食べられない幽霊は怖くない！

一番怖いのはナイフを持った人間だ！

あと國家権力！

「じゃあこの部屋の家賃も含めてうちで持つという條件ならどう？　引っ越しに必要なお金と、この部屋の家賃と、引っ越し先の家賃、新しく用意する家の代金全部。それをこの仕事、つまり化けオン運営の監視が終わるまで続けるという事で」

「ふむ……ちなみに聞きますが」

「引っ越し先は都だけど、大手ホテルが近くにあって有名店のチェーン店舗もたくさん、食べ放題焼やバイキングもあるわね。ちなみにこれは前金代わりのホテルレストランの優待券と近隣店舗の割引券に株主優待券」

「喜んで行きましょう」

ここまでされて斷る理由はない。

ようし、運営とやらに突撃かましてやりますか！

「あ、VOTは新型用意するけれどこれも持っていく方向でね。一応この部屋の管理にうちの人間が住まわせてもらうけれど、厄介な連中に來られても困るから。あ、住むのはだから安心してね」

「はぁ、まぁ男でも構いませんが……一つ助言しておくなら人形とかぬいぐるみは持ち込まないほうがいいですね」

「人形……？　まぁいいや、わかった。伝えておくね。それで引っ越しの日程だけど」

「いつでもいいですよ。クライアントから頼まれた仕事は大方片付いた……はずだったんですけどね」

PCを見るとメールが8件ほど、この短時間で屆いている。

容は読まなくてもわかる、報の追加を求める聲だ。

あと昔知り合った出版社とテレビ局の人から化けオンに関しての問い合わせ。

……まぁ、昨今のVRゲームは過激すぎるという意見が多いからその辺りでしょう。

「ははは、大変だねぇ人気者は。まぁ時間ができたら連絡頂戴。今月中には引っ越しを終えたいわね」

「それはクライアントに言ってください……」

「んー権力で握りつぶすこともできるけれど」

「やっぱいいです……」

ぐったりしながら返事を返すと祥子さんは笑いながら出ていった……そしてガチャンという鍵の閉まる音。

あの人の正が一番怖いかもしれないわね。

瑕疵件：何かしらの問題がある件のこと。

床が傾いているとかの理的な瑕疵、近所に稚園や反社會的勢力の事務所があるなどの環境的な瑕疵、そして幽霊がらみの心理的瑕疵があります。

主人公が住んでいるのは環境＆心理です。

航路の真下にあり、隣が小學校で晝間は子供の聲が響く、そして心霊現象が多発するというマンションです。