《VRMMOで妖さん》41:転移を試そう。
散らばった土を一か所にまとめて、魔力を流して平らにしておく。
へこみや出っ張りが出來たままだと危ないからね。
そういえば【座標指定】の説明に「目視出來ない場所の指定は発難度が急上昇する」ってあったけど、どんなじなんだろう。
これもやってみれば解る事か。せっかく平らにした地面を再度盛り上げて、高さ二メートル位の土の壁を作った。
反対側が見えない高さまで降りて行って、目の前の壁面から一メートル奧を意識して登録しようとしてみる。
あれ、すんなりできたぞ。
もしかして【妖】の特か高INTか、もしくはその両方のせいで高難易度と言っても大差無くなってるのか?
地面からちょっと土を取ってきてボールにして、【追放】で送ってみた。
あ、向こうで何かが落ちた音がした。壁を飛び越えて確認すると、ちゃんと功していたようだ。
でもこれ相対座標が指定できるって事は、私からし離れた前方を指定しておけば場所が変わる度に指定しなくていいんじゃないか?
難易度も上がらないし。まぁそれは私は関係ないけど。
私のお腹の辺りから三メートル前方の地點を【座標指定】する。
顔でもでも良かったけど、目からの高低差があった方が距離が認識し易かったので低めにした。
先ほどのボールを拾って壁の方を向き、【追放】をかける。
ん? なんか右側から音がした。
振り向いてみるとボールが落ちている。あれっ?
おかしいな、もう一回やってみよう。
今度は左後ろの方に落ちた。なんで失敗するんだ?
拾って壁の向こう側に行き、最初の座標に【追放】。 うん、ちゃんと飛んでる。
飛び越えてまた拾って、障害が無い方を向いて新しい方の座標へ【追放】。
あだっ。
失敗するにしても、頭の上に降ってこなくていいだろ…… コントじゃあるまいし。
うーん、相対座標を転移の目標には出來ないのかな?
試しに自分で【跳躍】してみる。うん、そうみたいだ。居た筈の場所から右後ろの上空に出現した。
このランダム転移、私は飛べるからいいけど普通の人だったら危ないんじゃ?
最悪の場合十メートルの高さに投げ出されるってことじゃないか。
即座に反応して地表に転移できなきゃ怪我しちゃうよ。
なんで相対座標は転移の対象に出來ないんだろ。
あー、壁抜けとかをやりたい放題になるからかな?
難易度が高い(らしい)見えない座標の指定をさせる事でハードルを上げてるのか。
隙間が有って見えさえすれば大丈夫だろうから、鉄格子みたいなのは簡単に抜けられそうだけどね。
さて、地面を元に戻してと。
そういえば一度死に戻りしてるから、HP満タンなんだよね。
最初に行きわたらなかった辺りに【施】して回ろう。
HPを半分くらいまで消費してばら撒いた。
やっぱり結構な疲労があるので、【魔力武】でコップを作って【採取】でおやつを生。
疲れたときには甘いだよね。
そうだ。試してなかったけど【魔力武】で作ったって、ボックスにれられるのかな?
が半分くらい殘ったコップに蓋をして、空間にねじ込んでみる。
あ、った。アイテム名は「妖」か。中が優先されるのかな?
っていうかやっぱり蜂ではないんだな。うん、私蜂じゃないしな。
……この狀態でを消したらどうなるんだろ? やってみよう。
問題なく消せたし、アイテム一覧にも変化は無いな。取り出してみるか。
うわっ、べとってした。
驚いて手を引いたら、そのきに引きずられるようにからがあふれてきた。
一個って表記だったし、その一部だけ取り出すのは出來ないって事だろうか?
ただ、空間の歪みからがドロドロと流れ出てくる絵面はなかなかに怖い。
咄嗟に手でけ止めちゃったから、最初にコップを作った意味が無くなったな。
いや、実験出來たから無駄ではなかったからそれは良いか。
飲み切って手を洗う。を一度に沢山飲むのは流石に辛いなぁ。
んー、この水飲めるのかな? 両手に溜めてし飲んでみる。
うん、問題はなさそうだ。お腹を壊したりもしないだろう。多分。
味しいけど流石に口の中が甘すぎるし、がヒリヒリするから洗い流す。
よし、さっぱり。
そういえば今何時だろ? と思ってメニューを開くとお晝過ぎだった。
空腹度は無いけどお晝休憩しようかな。
うん、初日に行った果の店に行ってみよう。
窓から屋に戻り、貓ベッドで寢ていた珠ちゃんをモフモフしてから送還する。
職員の皆さんは殘念そうな顔してもダメです。ちゃんと仕事してください。
表に出て、今度は代でポチを召喚する。 よーしよしよし。
堪能してからいざ出発。人通りのない道を通って東通りに出る。
上空を飛んでいると相変わらず見られているけど、最初の頃の珍獣を見る目が減った気がする。
代わりになんというか、玩を見る様な視線が増えた。
可いを見るのは好きだけど、見られる側になるのは複雑だわー。
たまに笑顔で手を振ってくる人とかいるし。もちろん知らない人だけど。
無視するのも悪いかなーと思って一応振り返しておく。
ん? 一緒に居た人とはしゃいでるぞ。何だそのコンサートでアイドルと目が合ったファンみたいな反応は。
私はただのプレイヤーの一人だぞ。
微妙に神力を削られながら飛んで、屋臺の人達の熱い客引きにも負けずに店へ到著。
客が居ないタイミングを見計らって、おばちゃんの正面で挨拶した。
「あらまぁ、いらっしゃい! 今日は何が良いんだい? 切ってあげるから好きなを選びな!」
むぅ、一昨日みたいにラズベリーを一つ貰おうかと思ってたら何でもいいとは。
せっかくだから有難くけ取ろうか。何にしようかな?
しかし季節とか関係ない品揃えだな。どこから仕れてるんだ? まぁいいか。
あ、スモモだ。甘味はさっき嫌って程飲んだし、すっぱいにしよう。
これー。とスモモをぺちぺちする。
「はいはい、ちょっと待っててね」
おばちゃんがスモモを手に取り、小さくカットして小皿で出してくれた。
殘りも小さく切って、近くに居た人たちに配るみたいだ。
うん、すっぱ味しい。たまに食べたくなるんだよなー。
完食してお禮を言い、銅貨を出そうとしたところで制止された。
「はいはいストップ。お代は一昨日に十分貰ってるからね。今日はけ取らないよ?」
む、先手を打たれた。はっきりと言われてしまってはしょうがない、今日は諦めよう。
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