僕たち――いつもの三人に要(かなめ)ちゃんを加えた四人――は、「帳(とばり)と扉(とびら)」という行きつけの喫茶店で話し込んでいた。雰囲気のある名前なのに、僕たち常連の間では「幕(マク)戸(ド)」というも蓋もない略稱(?)で通っている。

「こうしてカナちゃんと喋るのも久しぶりだね～」

「このところゲームの中でしか會えなかったしね」

「あれ？　ひょっとして要(かなめ)ちゃんもＳＲＯ(スロウ)やってんの？」

「蒐(しゅう)君も始めたのよね。　早々と掲示板を賑(にぎ)わしてたわよ？」

「その話はもういいよ……あれ？　って事は、僕の悩みも知ってる？」

「あ、俺が話しといた。どうせ教えんだから、早い方がいいだろ？」

「匠(たくみ)、個人報って知ってるか？　……まぁ良いけど」

「あたしが聞いたのは、何か怪しげなスキルで盜賊団を皆殺しにしたってところまでだけど？」

「皆殺しじゃないよ！　僕が殺(キル)したのは二人だけ！　他はケインさんたちが殺(や)ったんだよ」

「盜賊団なのは否定しないんだ……何人いたの？」

「八人……で、僕たちが六人」

「ああ、『黙示録(アポカリプス)』なら問題にもしないでしょうね」

「うん。ほぼ瞬殺だったみたい」

「蒐(しゅう)は何で殺(や)ったんだ？」

「【腹話】で注意を逸(そ)らして、手裏剣で仕留めた」

「お？　【手裏剣】なんてスキル、手にったんだ？」

「何言ってんのさ？　手裏剣くらい匠(たくみ)も投げれるじゃん」

「あぁ……そっちのスキルか……」

「蒐(しゅう)君って、ほぼパーソナルスキルだけで闘ってるの？」

「だって……スキルが取れないから仕方ないんだ……」

「はいはい、誰も責めてないからね」

「『慘劇の貴公子』ならではだよな」

「やめろよ……その渾(あだ)名(な)で呼ぶの……」

注文していた軽食が屆いたので、それを食べながら話を続ける。ちなみに僕はシーフードスパ、匠(たくみ)はカツカレー、茜(あかね)ちゃんはチョコパフェ、要(かなめ)ちゃんはプリン・ア・ラ・モードだった。

「けど……何のスキルが來るか判らないんじゃ、アドバイスのしようもないわね」

「だよな～」

「持っておいた方が良いアイテムとかは？」

「野営の道は持ってるのよね？」

「うん。エレミヤさんに選んでもらった」

「武は？」

「杖とクロスボウと短剣、あとは手裏剣と吹き矢にバグ・ナクかな？」

「後半三つがおかしい」

「ＰＫの品だから」

「ねぇ、蒐(しゅう)君、剣はどうしたの？」

「あ、売っちゃった。現実でも西洋剣って使った事ないし、スキルも取れそうにないから」

「まぁ……蒐(しゅう)の場合はそうなるか」

「じゃぁ……中距離がクロスボウ、接近してからは杖、著したらとバグ・ナク……って事かしら」

「……意外と使えそうだな」

「理一択かぁ……」

「だって、魔法使えないもん」

「魔道は？」

「いや？　戦闘向きの魔道ってあったか？」

「効果付きの武かな？」

「僕、武スキルって持ってないよ……」

「あ、ええと、確か【鑑定】能力付きの眼鏡があったよ……高いけど」

「そうそう、ナンの町には魔道屋もあるし、何か掘り出しがあるかもな」

「魔道かぁ……」

探してみるのもいいかもね。

「蒐(しゅう)がナンの町に來たら、俺たちとも會えるかもな」

「みんなナンの町にいるの？」

「うん。あたしたちも昨日著いたところ」

「どっかで待ち合わせるか？」

「う～ん。ケインさんたちと一緒だし、予定がはっきりしないかな」

「蒐(しゅう)君だとイレギュラーな方向に進みそうよね」

「何でさ」

手裏剣で人一人仕留めるなんて普通はできませんが、シュウイの場合は比較的近距離から、後ろを向いた相手の延髄に命中させたため、クリティカル扱いになったようです。

次話は金曜日に投稿します。