《スキルリッチ・ワールド・オンライン~レアというよりマイナーなスキルに振り回される僕~》第八章 ナンの町 6.クラス會?
ケインさんたちと話し込んでいると、ピピッという電子音が鳴って、ウィスパーチャットが屆いた事を知らせた。相手は……タクマか。ケインさんたちに一言斷ってチャットを繋ぐ。
『タクマ?』
『シュウ、今いいか?』
『うん。何?』
『いや、やっと仕事を終えてナンの町に戻って來たんだ。で、會えないかと思ってな』
『あ~……ちょっと待って』
ケインさんに今後の予定について聞いてみないと。
「ケインさん。友人が今から會えないかって聞いているんですけど?」
「ん? いいんじゃないか? この後は特に用事もないし」
「フレンド登録はしてあるから、いつでも連絡はつくしね」
「シュウは今後どうすんだ? またトンの町に戻んのか?」
「あ~……まだ決めてませんけど、多分……」
「僕たちもナンの町を拠點にするかどうか決めかねているんだよ。まぁ、決まったら連絡するから」
「自分たちは今夜は『酔いどれ兎亭』に泊まるつもりだから、何かあったら尋ねてきてくれ」
「はい。ありがとうございます」
ケインさんたちの許可を得たので、タクマとのチャットに戻る。
『タクマ? 會うのはいいけど、どこで?』
『おっ、大丈夫か。じゃあ、「紫の息(い)吹(ぶき)亭」に來てくれるか』
『……凄そうな名前だけど……ソコって、大丈夫な店?』
『あぁ、心配いらねぇから早く來い。んじゃ』
相変わらず唐突に切るなぁ……。
「あの、『紫の息(い)吹(ぶき)亭』ってどこかご存じですか?」
「ん? あぁ、この店の前の道をず~っと左に行くと、まず見落としっこない看板があるから判る筈だ」
「あの……その店、大丈夫なんですか?」
「ふふっ、凄い名前だけど大丈夫。真っ當な居酒屋兼宿屋だから、安心して行ってらっしゃい」
「はい。それじゃ、失禮します」
お世話になったケインさんたちにお禮を言って別れる。きっとまた會えるだろうしね。
・・・・・・・・
「紫の息(い)吹(ぶき)亭」は、確かに見落としっこない看板が掛かっていたため、すぐに見つける事ができた。ショッキングピンクの地に紫で描かれた、薔薇(ばら)をくわえた骸骨の絵なんて、見落としっこないよね……。
「シュウ、こっちだ」
店を見回していると、店の片隅にあるテーブルから黒ずくめのタクマが手を振っていた。テーブルに著いているのはタクマの他に子二人。多分茜(あかね)ちゃんと要(かなめ)ちゃんだろう。三人とも、他のパーティメンバーはどうしたのかな?
「始めたばかりのリアフレにゲームの説明するって言って、遠慮してもらったの」
「癇(かん)癪(しゃく)持ちでキレ易いっていったら、誰も來なかったんだよな」
「何て事言うのさ!」
「まぁまぁ、冗談だ。で、解ると思うが、こっちが……」
「センだよ。で、こっちがカナちゃん」
「こっちでははじめまして、だね。シュウイ君」
「二人とも同じパーティだっけ」
「うん。シュウ君が名前を付けてくれたワイルドフラワー」
二人のパーティ名は、βテスト時代に僕が提案した名前なんだよね。給仕のおねーさんに食事と飲みを注文して、SRO(スロウ)での食事會が始まる。全員分の料理が揃ったところで、僕は懐からシルを出してやる。
「あれ? シュウ君、その子は?」
「シルっていうんだ。僕の従魔」
「え? ……って! それじゃあ、運営が言ってた……」
口許(くちもと)に人差し指を當てて、息を呑むカナちゃんを黙らせる。
「……うん、ご免ね、シュウイ君」
「まさかと思ったけど、やっぱりシュウかよ。何やったんだ?」
「あ~……ここじゃ何だから、詳しくは明日にでも」
「了解。んで、晝にチャットしてくれた件な。詳しく話してもらえるか?」
「うん。今日のうちにケインさんたちと様子を見てきた。凄いよ~、SランクとAランクのツインヘッドグリフォンの群れ。Bランク以下なんてゴロゴロいた」
「ツイン……っ!? そんな大なのかよ?」
「うん。素直に回れ右したよ。で、帰りにこの子を見つけたんだ」
「その子の事は明日聞くとして、シュウ君、その話、どうするつもり?」
「あ、うん。ケインさんたちとも話したんだけど、皆に任せるよ。ケインさんたちは心當たりの何パーティかに話すって言ってたけど……二つや三つのパーティじゃ屆かないだろうって」
功名目當てで抜け駆けしようとする淺はかなパーティが出るんじゃないかって、心配してたんだけどね、ケインさんたちは。僕としては、馬鹿を選別するいいテストなんじゃないかって思ってるけど。
「……一応俺の仲間にも話してみるけど……シュウ、場合によっちゃケインさんたちに話を通してくれるか? あの人たちがレイドを組むんなら參加したいからな」
「いいよ~。そっちの話が決まったらチャットしてくれたらいいから」
「あ、思い出した。シュウ君、フレンド登録しとこ?」
「あ、だったら私も」
「うん、いいよ~。ていうか、二人の連絡先知らなかったから、タクマに言伝(ことづて)を頼むしかなかったんだよね」
という訳(わけ)で、滯(とどこお)りなく二人とフレンド登録する事ができた。
「じゃぁ、この件はこれで片付いたとして……シュウは今晩どこに泊まんだ?」
「あ……決めてないや。ケインさんたちは『酔いどれ兎亭』に泊まるって言ってたけど……皆は?」
「當然ここに泊まるぜ?」
「部屋、まだ空いてるかな?」
「さぁ、聞いてみるか?」
通りがかった給のおねーさんに話を聞くと、まだ空いてるという事なので、早速一部屋を頼んでおく。これで今夜の宿は確保できたっと。
「シュウイ君は明日以降はどうするの?」
「う~ん。未だ決めてないんだよね。まともなスキルを持ってないから、トンの町の方が安全かなって思うんだけど……」
「確かにモンスターとかは弱いな」
「でも、シュウ君なら何とかなるんじゃない?」
「いやいや、あか……センちゃん、人間相手の技はには通じにくいからね」
「あ~……やっぱりそんなモンか」
「タクマだって野良犬に噛まれてたじゃん」
「あれは小學校の時だろ。……まだ覚えてんのかよ」
「他にも々覚えてるよ。タライに乗って流された事とか……」
「解った、解ったからもう黙れ」
こんなじで和やかに談笑していたんだけど……そうだ。
「あ、そうだ。半日分の護衛ってどんなの? 聞いておこうと思ったんだ」
「あ~……あれか」
「う~ん……護衛って言うか……」
「要するに牧羊犬の真似ね」
「……どういう事さ?」
聞いてみると、要はナンの町で買った家畜を自分の牧場に連れて行く時に、家畜が迷子になったり逃げ出したりしないように、群れの周りを囲んでおくという仕事だった。
「家畜の數が多いから、人數だけは必要なのよ」
「楽は楽なんだけど、その代わり依頼料が安くて半日拘束されるから、いつも集まりが悪いんだって」
「まぁ、半分は人助けみたいなもんだな」
へぇ~……冒険者もんな仕事があるんだね。
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《シュウイのスキル/アーツ一覧》
レベル:種族レベル3
スキル:【しゃっくり Lv1】【地味 Lv3】【迷子 Lv0】【腹話 Lv2+】【解 Lv5】【落とし Lv6】【べとべとさん Lv2】【蟲の知らせ Lv2】【嗅覚強化 Lv1+】【気配察知 Lv1+】【土転び Lv1】【お座り Lv0】【掏(すり) Lv0】【イカサマ破り Lv0】【反復橫跳び Lv0】【日曜大工 Lv0】【通(つう)臂(ひ) Lv1】【腋臭(わきが) Lv1】【デュエット Lv5】【般若心経(はんにゃしんぎょう) LvMax】
アーツ:【従魔(仮免許)】【召喚(仮免許)】
ユニークスキル:【スキルコレクター Lv4】
稱號:『神に見込まれし者』
従魔:シル(従魔)
次回更新は金曜日の予定です。
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