翌日の晝休み、僕たち――いつもの三人に要(かなめ)ちゃんを加えた四人――は、恒例となった屋上での晝食會を開いていた。

「今日は要(かなめ)ちゃんも參加なんだね」

「うん。當番が終わったから、しばらくは大丈夫かな」

「あ～、當番だったんだね」

「でも、放課後は當分一緒できないみたい」

「図書委員も大変だね。で、何かめぼしい本は購できたの？」

「茜(あかね)ちゃん、一年生の分際(ぶんざい)で、そんな事できる訳(わけ)ないでしょ？　しばらくは大人しくしていなくちゃ。急(せ)いては事をし損じるのよ？」

うん、要(かなめ)ちゃんは相変わらずだね……。

「私の事より蒐(しゅう)君でしょ。あの子の事、話してもらうわよ？」

臺詞(せりふ)だけ聞いてると、なにか浮気を問い詰められているみたいだね。うん、まぁ違うけど……。

「昨日言ったとおりだよ？　偵察の帰りに貰ったんだよ」

「どこで？　誰から？　どういう合に！？　ちゃんと省略しないで話してよ！」

「え～？」

要(かなめ)ちゃんに怒られて、シルを貰うまでの事を、最初に【蟲の知らせ】をじた時から逐一話す羽目になった。話を聞いた要(かなめ)ちゃんの想がコレ。

「何というか……蒐(しゅう)君って、思った以上に変なスキル使ってるのね……」

「また、結構使いこなしてるのが何だかな～」

「何でそこまで言われなきゃなんないのさ。僕、不運にもめげず頑張ってるのに」

「スキルがどれもこれも斜めにチートっぽいだけに、悲壯が無いのがな……」

「チートって……うん、まぁ、意外と使えてるけど……でも、結局は不意を衝(つ)くとかデバフとかで、直接攻撃には使えないんだよ？」

「あ～……蒐(しゅう)君にとっての問題點はそこか～」

「でも、蒐(しゅう)君ならモンスターくらいどうにかできるんじゃない？」

「無理だって。人間以外の生きに、そうそうなんか通用する訳(わけ)ないじゃん」

「う～ん、そうなの？」

茜(あかね)ちゃんは疑わしげに匠(たくみ)の方視線を向けるけど……

「まぁ、確かにやり辛いな」

「野良犬に噛まれた匠(たくみ)君が言うと、重みがあるよね～」

これは要(かなめ)ちゃん。

「おう、経験者は語るってやつだ」

「蒐(しゅう)君、一応武は持ってるのよね？」

「うん。クロスボウに杖、あとは短剣、手裏剣、バグ・ナクに吹き矢」

「どんなラインナップよ……特に後半三つ」

「前にも言ったけど、ＰＫ殺(キル)して拾っただけだよ？」

「あぁ……そんな話もあったわね……」

「けど……こうしてみると、モンスターを相手取るには打撃力と火力に欠けるな」

祖父(じい)ちゃん直伝の歌枕(かつらぎ)流にも、さすがにドラゴン相手の闘い方なんかは伝えられてないからね。大、あんな怪獣サイズの生き、武でどうこうできる訳(わけ)無いじゃん。僕は「スキルコレクター」のせいで、対モンスター用の武スキルを取得するのは絶的だし……。

「あ～……それはあるね」

「だから、僕にはモンスターの相手なんか無理なんだってば」

そう言ったんだけど、ここで匠(たくみ)が余計な事を言いだした。

「あの従魔はどうなんだ？　なりはチビでも幻獣の子供なんだろ？」

「あ、そうだよ蒐(しゅう)君。従魔師(テイマー)なんだから、従魔を使役して闘えばいいんだよ」

「……言ってなかったっけ？　シルは防特化型だよ？」

「……攻撃スキル持ってないのに、何で防特化にするんだよ……お前は」

「だって、防スキルも持ってないもん。そもそもろくなスキルが取れないのに、モンスターに突っ込んで行くなんてあり得ないよ」

「そう言われれば、そうね……」

「けどな、蒐(しゅう)。お前この先もずっとトンの町に引き籠もってくつもりか？」

「う……それを言われると」

折角のゲームなんだから、僕だって冒険したいのは山々だ。けどなぁ……。

「攻撃手段の獲得は必須だぞ？」

「やっぱり【従魔(仮免許)】か【召喚(仮免許)】のアーツを使うしかないんじゃない？」

「……いや、待て。確か【従魔(仮免許)】も【召喚(仮免許)】も最初の従魔を手した後で獲得する筈だぞ？　あのチビはどっちの扱いなんだ？」

「蒐(しゅう)君、後でそれぞれのアーツを開いて確認してね。どっちかに従魔登録してある筈だから」

「チビが登録されてない方のアーツは非表示にしとけ。不自然だからな」

「待って。……逆に、幻獣が未登録の方のアーツで、攻撃能力のある従魔を獲得するっていうのもありじゃない？」

「あ～……それもありだね」

「でも、そうすると仮免許とはいえ【従魔】と【召喚】を両方持ってるのが判っちゃうよ？　それともシルを日者にするの？」

「う……それがあったわね」

「じゃあ、同じアーツで……って、従魔を二も持ってるのは不自然か」

「それにさ、従魔師(テイマー)も召喚師(サモナー)も魔法職でしょ？　魔法を全く使えない僕がプレイしたらおかしくない？」

「目立つのは目立つだろうな……」

「う～ん。でも蒐(しゅう)君、あの子をずっと隠しておく訳(わけ)にもいかないでしょ？」

「どっかのタイミングでカミングアウトしないと拙(まず)いだろうな」

僕が口を出す暇もなく、今後の方針が決められてゆく。

「うわ～……何て面倒臭いゲーム」

「いや、面倒臭いのはお前の立場の方だからな？」

「何であれ、あの子を表に出す以上、レベリングは必要よね」

「レベリング？」

「ええ。従魔もプレイヤーと一緒で、強敵と闘う事でレベルアップする筈よ、確か」

「あ～……紙裝甲なのに、とうとうモンスターデビューかぁ……」

「ま、紙裝甲を守ってくれる幻獣なんだから、レベルアップは必須だろ」

「トンの町の周辺なら、そう強いモンスターは出ない筈だよ。頑張ってね♪」

茜(あかね)ちゃんの無な笑顔に撃沈されてると予鈴が鳴ったので、それをきっかけに僕たちは教室に戻った。

この続きは金曜日の更新で。