図書委員會の用事があるという要(かなめ)ちゃんを除いて、僕たち三人は教室に居殘って話し込んでいた。

「う～ん、やっぱり蒐(しゅう)君は、表向き従魔師(テイマー)か召喚師(サモナー)でやっていくしかないんじゃない？」

「そうなのかな……」

「微妙スキル研究家って看板でやっていくんなら、別に止めはしないけどな」

「うっ……」

「それから、変に追求されたくないんなら、あのチビを見つけた時の説明……っていうか、表向きのカバーストーリーを考えておけよ」

「カバーストーリー？」

「別に難しく考えなくてもいいんじゃない？　あるワンタイムクエストで手にれたけど、そのクエストの事は言えない、でいいと思う」

「まぁ……妥當かな？」

「幻獣って事さえ隠しておけば大丈夫よ」

「ううぅ～……面倒臭いよぅ……」

「ついでに言っておくと、しばらくの間はあの子を出しちゃだめだよ？　まだ従魔を獲得したプレイヤーはない筈だし、もうし経ってからじゃないと怪しまれるから」

「うぅ～……(泣)」

僕が力無く機に突っ伏していると、匠(たくみ)の聲が聞こえてきた。

「けど……アドバイスするにしても、門外漢の俺たちじゃ限界があるな」

「そうだね……蒐(しゅう)君は従魔師(テイマー)か召喚師(サモナー)の知り合いっていないの？」

「始めたばかりなのに無茶言わないでよ……茜(あかね)ちゃんたちのほうこそ、魔法職繋がりで伝手(つて)があるんじゃないの？」

「魔法職って言っても、従魔師(テイマー)と召喚師(サモナー)は特殊だから……」

「そうなの？」

「あぁ。このゲーム、従魔もパーティの人數にカウントされるから、従魔師(テイマー)や召喚師(サモナー)はパーティを組みにくいんだ」

「組むとしても、同じ職業同士で組むのが普通だね」

「……ぼっち職？」

「そういうんじゃないから」

「けど、まぁ、従魔師(テイマー)もしくは召喚師(サモナー)用の掲示板を覗くくらいしておけよ？」

「あの子のために頑張ろうね、蒐(しゅう)君♪」

茜(あかね)ちゃんの背後にコウモリの翼と黒い尾が見えた気がする……。

・・・・・・・・

何か疲れたのでもう帰るといったら、茜(あかね)ちゃんが疲れた頭には糖分だって言い出して、「幕(マク)戸(ド)」――正式名稱を「帳(とばり)と扉(とびら)」という喫茶店――に寄っていく事になった。茜(あかね)ちゃんはここのパフェがお気にりだから、何かと理由を付けては寄りたがるんだよね。

「う～ん、味♪　早くＳＲＯ(スロウ)でも甘味が食べられないかなぁ……」

「あれ？　無いの？」

「あぁ、【調理】持ちのプレイヤーが頑張ってるけど、どうやらデザートは別のスキルらしくてな」

「あ～……蒐(しゅう)君、【パティスリー】っていうスキルとか持ってないの？」

「そんなスキル、あるの？」

「判んない。あればいいなって思っただけ」

「でも、そのスキルなら捨てる人はいないんじゃない？　僕が拾えるのは、基本的に誰かが捨てたレアスキルだから……殺して奪う訳(わけ)にもいかないし？」

「……モンスターからも奪えるんじゃないの？」

「お菓子を作るモンスターっているの？」

「いるんならテイムしてしいかな～」

「いや……ＳＲＯ(スロウ)にいるかどうかは判らんが、確かシルキーって家事好きの妖がいなかったか？」

「蒐(しゅう)君！　その子をテイムすれば左(ひだり)団扇(うちわ)だよ！？」

「やだよ。引き籠もり決定じゃん」

「蒐(しゅう)は戦闘力の高い従魔を得る方が先だろ？」

「でも匠(たくみ)君？　トンの町の周辺だと、そんなに強いモンスターとは出會わないでしょ？」

「強い従魔が得られないからトンの町を出られない、トンの町を出られないから強い従魔が得られない。見事に完結したな」

「うぅぅ～……(泣)」

「とりあえずはシルちゃんのレベリングだね。シルちゃんが強くなってくれれば、蒐(しゅう)君もトンの町から出られる訳(わけ)だから」

茜(あかね)ちゃんの言うとおりにするしかないかぁ……。