《スキルリッチ・ワールド・オンライン~レアというよりマイナーなスキルに振り回される僕~》第十一章 イーファンの宿場へ 1.乗合馬車の旅

SRO(スロウ)での翌朝、しばらくナンの町に留まるというタクマたちと別れて、僕はトンの町に戻る事にした。勿論乗合馬車を使うよ? 一人旅で野営って、徹夜確定じゃん。

早めにログインしたお蔭で朝一番の便に間に合い、トンの町へ向かう乗合馬車に乗る事ができた。朝早い便だというのに馬車には既に四人のお客さんがいた。二人はナンの町に仕れに來たという道屋の小父さんと小母さん。ナンの町には食を仕れに來たんだそうで、二人して大荷を抱えていた。後の二人は冒険者――プレイヤーだった――のの子で、何と従魔師(テイマー)と召喚師(サモナー)らしい。

「ナンの町でテイマースキルが解放されたんだけど、あの町の近くには良い子がいなかったから、トンの町に戻るの」

「……良い子って、従魔の事? でも、トンの町よりナンの町の方が強力なモンスターに出會い易いって聞いたけど?」

「可くないのは駄目!」

「あ~……玩派(そっち)の人なんだ」

「うん! モフモフ以外はしくない!」

「あはは……お隣さんもそうなのかな?」

「私は召喚師(サモナー)なんだけど、メイちゃんの意見には同意かな? やっぱりモフモフした子がしいし」

二人が口を揃えて言うには、SRO(スロウ)では並みの良いを思いっ切りモフれると聞いてこのゲームに參したそうだ。気合いがってるなぁ。

「けど、召喚師(サモナー)さんって、最初から召喚する魔獣を選べるんだ?」

「実際に見たり闘ったりしたモンスターから選ぶじらしくて。ナンの町の周りで見たのは鱗系のモンスターばかりだったから」

「あれ? コボルトがいなかった?」

「コボルト? いいえ、見なかったけど、どこにいたの?」

あ……余計な事言っちゃったかな? 適當に誤魔化しておくか。

「何か、北の方に向かう道で見たとか言ってたよ。僕も聞き流しただけだし」

「う~ん……でも、コボルトかぁ。……微妙かなぁ……」

「モフモフの範疇(はんちゅう)にはらないの?」

「可くないのは駄目!」

手を振ってくれてた姿は結構可かったけどな。……ホブゴブリンもだけど。

「自己紹介が遅れたわね。私はニア、召喚師(サモナー)よ。こっちの子はメイ、従魔師(テイマー)ね」

「あ、僕はシュウイ、なりたての冒険者だよ」

「で? 私たちがトンの町に戻る理由は言ったとおりだけど、シュウイ君は?」

「あ、僕は元々トンの町で活するつもりで。こっちには知り合いの人たちに連れて來てもらったんだよ。知り合いにも會いたかったし」

……噓は言ってないよね?

「シュウイ君の知り合いって、ナンの町にいるの?」

「うん。ワイルドフラワーってパーティにいる二人と、それから、(ヤバい、タクマのパーティって何だったっけ)……パーティ名は忘れたけどタクマってやつ」

「ワイルドフラワー……って、魔法職のの子ばかりのパーティだよね?」

「βテストのパーティよね?」

「うん、確かそうだったよ」

さすが、センちゃんとカナちゃんのパーティは有名らしいね。

「じゃあ、シュウイ君もβプレイヤーなの?」

「僕は違うよ。さっき言ったタクマってやつはβプレイヤーだけどね。僕の方は始めたばかりの新人」

「にしては……得は杖?」

「あ~、まだ何になるか決めかねてて……方針も決まらないのに武だけ先に買ってもアレだし、あまり高くない杖にしたんだ。あとは遠距離用に弓」

これも噓じゃないよね? クロスボウも弓には違いないし。

「弓って、不遇スキル扱いされてなかった?」

「そうなの? まぁ、どうせ主武にはしないつもりだけど、それでも遠距離攻撃の手段があれば安心じゃない?」

「あ~、サブウェポンとしてならいいのかなぁ……」

「弓ってそんなに不遇なの?」

ちょっと興味が出てきたな。クロスボウもそうなんだろうか。

「何かね、當たらない、刺さらない、金がないの三無武らしいよ」

「……最後のは何?」

「ほら、矢って消耗品だから」

「……僕も練習した方がいいのかな。サブウェポンだからって、練習してないんだけど……」

「やっといた方が良いんじゃないかな、多分」

……有益な報を貰えたのは一応収穫だよね。前向きに考えよう。うん。

「二人は戦闘の時はどうするの? 従魔?」

「ん~ん」

「そもそもまだいないし」

「あれ? ニアちゃ……さんもそうなの?」

「ニアでいいよ。うん、私もまだ従魔無し」

「二人とも戦闘は魔法頼みだよ」

「おお……憧れの魔法かぁ」

「シュウイ君は魔法スキル、取ってないの?」

「あ、うん。さっきも言ったけど、どういう生き方をするか模索している段階。モラトリアムってやつ? なので、まだスキルはほとんど取ってません」

……うん、間違ってないよね?

「へぇ~……そういう方針の人って、初めて見たかも」

「でも、そういうのもありかなって気もするわね」

そんな他のない事を話している間にも、僕たちを乗せた馬車はイーファンの宿場に向けて進んで行った。

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