《兄と妹とVRMMOゲームと》第一話 憧憬① ☆
VRMMOゲームものの新作になります。
下のイラストは、ヒロインの一人、梨です。
「君の魂分配(ソウル・シェア)のスキルを、『椎音(しいね)梨(あいり)』に使ってほしい」
それは風(みつかぜ)(のぞむ)にとって、全く予想だにしない言葉だった。
店商の青年から思いもよらない言葉を告げられて、はただただぽかんと口を開けるよりほかなかった。
全ては、その騒から始まった。
が初めてそのゲームを知ったのは、中學生の時だった。
それは、デジタルで構された仮想世界。
四季の折々に彩られた果てなき平原と流転海域。
様々なギルドやお店が點在する街や村。
夕闇の空が終わると同時に、闇夜に輝き始める星々の煌めき。
ゲームの逸話に纏わる跡やダンジョンの數々。
巨大な竜やモンスターの集団との戦い。
現実ではあり得ない世界を創世したVRMMOゲーム。
≪創世のアクリア≫
今やその名を聞かない日はないというほど、有名な剣と魔法の幻想世界ーーいわゆる異世界を舞臺にしたVRMMORPGだ。
そして、スキルはその世界で用いられる技能である。
天賦のスキル。
自の武が持つ特を最大限に生かして、技を放つスキル。
魔のスキル。
火、水、風、、闇。
五大元素のうち、どれか、または複數をり、世界を変革するスキル。
召喚のスキル。
契約した幻獣や霊、モンスターを呼び出すスキル。
アイテム生のスキル。
不完全な質を、完全な質へと錬するスキル。
様々な道を作り出す力で、錬金に近いスキルとして用いられていた。
VRMMOゲーム『創世のアクリア』には、アバターそれぞれに固定スキルというものが存在する。
スキルを使用することによって、仲間であるギルドメンバーとともに、爽快溢れるバトルと臨場のあるゲーム世界とシステムを楽しむことができた。
だが、のスキルは、それら固定スキルとは異なっていた。
魂分配(ソウル・シェア)のスキル。
現狀の四つのスキルには、當てはまらない特殊スキルの一つだ。
特殊スキルは、この仮想世界『創世のアクリア』のみならず、現実世界をも干渉する力と言われている。
「まあ、使い道のないスキルだけどな」
は、自のスキルを持て余していた。
魂分配(ソウル・シェア)のスキルは、その名のとおり、自の魂を他に分け與えるスキルだ。
だが、のスキルは一度きりしか使えない力であり、使うタイミングをはかる必要がある。
そういう意味では、一度行った契約を解消することが出來ない召喚のスキルと同じ制約が課せられていた。
使い勝手の悪いスキル。
それでもギルドの仲間達のスキルを駆使して、この世界を生き抜いていく。
それが、を取り巻く仮想世界越しの現実だった。
その生活が一変したのは、ある警告メッセージが響いた時だ。
『ログアウトできません!』
「なっーー!」
その日、突如、達は何の前れもなく、『創世のアクリア』からログアウト出來なくなった。
原因不明の帰還不能狀態。
和気藹々な雰囲気から一転、が所屬するギルドは張りつめたような混と靜寂に支配される。
迫した空気の中、ダンジョンから帰還したギルドマスターである友人ーー西村(にしむら)有(ゆう)は興気味にこう告げた。
「ログアウト出來なくなった? ならば、ギルドのみんなで協力して、『ログアウト出來るようになるアイテム』を生すればいい。出來なくとも、これは『ログアウト出來るアイテム』だと偽って売り出せば、ギルドの運営費は潤うし、一石二鳥だ!」
「すごーい! さすが、ギルドマスターのお兄ちゃんだね!」
有の大膽発言に、その妹ーー西村(にしむら)花音(かのん)は両手を広げて歓喜の聲を上げた。
有はと同じように、白を基調とした軽裝をに纏っている。
には、ギルドマスターの証である銀のラペルピンが輝いていた。
花音は、紫のローブに無骨なガントレットとアンクレットにを包んでいる。
彼の赤みを帯びて見える髪は、桜のリボンで左右のおさげに結われて、ふわふわと弾んでいた。
「はあっ…………。そんなに上手くいくのか」
そう息巻く有と花音とともに、は目的のアイテムを生するための素材の一つを手にれるため、ダンジョンに赴いていた。
周囲には、これから中にるために準備を整えているプレイヤーや、休憩を挾んでいるプレイヤーがひしめいていた。
いわゆる、初心者用ダンジョン。
練のプレイヤーである達なら、余裕で攻略できるダンジョンだ。
何の障害もなく、目的のものを採取できるはずだった。
そこで、が店商を営んでいた『彼』から不可解な願いを告げられなかったらーー。
「君の魂分配(ソウル・シェア)のスキルを、『椎音梨』に使ってほしい」
「意味が分からない。それに、勧なら間に合っている」
からすれば、それは會話の拒否でもあったし、斷るという態度表明でもあった。
だが、青年はまるで頓著せずに続ける。
「君は、自分のスキルを分かっていない。持てる力を振るわないのは罪だ」
のこもった言葉。
だけど、ただ事実を紡いだ言葉に、は視線を落とす。
「このスキルは使いどころが難しいだろう。それに何で、俺のスキルのことを知っているんだ?」
「特殊スキルは、現実世界をも干渉する」
答えになっていない返答に、はため息をつきたくなるのを堪える。
その時、花音の聲が聞こえた。
「くん! お兄ちゃんが、そろそろダンジョンにろうってー!」
「ああ」
が駆け寄ると、花音は悪戯っぽく目を細める。
花音と今後のことで話し合っていた有が、インターフェースで表示したダンジョンのマップを見つめていた。
「まだ、返事を聞いていない」
ダンジョンへ向かおうとする達に、すぐに青年が追いついてくる。
青年が取った行に、は緩やかに首を橫に振った。
「悪いけれど、意味が分からないし斷る」
の宣言に、青年は表を変えなかった。
青年は踵を返し、店にあった転送用のアイテムにれたところでふと思い出したように振り返った。
「君は必ず、梨に魂分配(ソウル・シェア)のスキルを使う」
風とともに翻る、青みがかかった銀髪。
鈴の音のような青年の聲。
そのとらえどころのない意味深な言葉が、青年の最後の行とともに、妙にの頭に殘った。
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