《兄と妹とVRMMOゲームと》第二十四話 星焔の共鳴④

「奏良よ、待たせたな」

「待たせすぎだ」

ボスモンスターと対峙した有が靜かに告げると、攻撃を何とか凌いでいた奏良は苛立たしげに睨みつけた。

そこに、花音と梨が申し訳なさそうに有達の元へ駆け寄ってくる。

「奏良くん、お待たせ!」

「その、待たせてごめんなさい」

花音と梨の言葉に、奏良は一転して和な笑みを浮かべた。

「問題ない。梨を守ることが、僕の使命だ」

「……えっ?」

奏良の即座の切り返しに、梨はきょとんとした顔で目を瞬かせる。

その様子をよそに、花音は周囲を窺うようにしてから、こそっと小聲で梨につぶやいた。

「巖波奏良くん、私達の仲間だよ」

「奏良くん……?」

「ーーっ!」

梨に名前を呼ばれて、奏良は不意を突かれたように顔を直させる。

「有、しばらく、ボスモンスターの相手をしていてくれないか。僕はもうし、梨と話をしたい」

「奏良よ。俺一人で、ボスモンスターの相手は無理だぞ」

押し殺すような奏良の聲に応えるように、杖を構えた有はやれやれと呆れたように眉を寄せた。

「お兄ちゃん、奏良くん、來るよ!」

「ああ」

「了解した」

花音のびと同時に、有と奏良は一斉に散開した。

梨ちゃん、行くよ!」

「うん」

花音は梨の手を取り、鞭をばして跡のへと導する。

その瞬間、飛び込んできたボスモンスターの拳が、先程まで有達がいた場所へと突き刺さる。

それと同時に、砕かれた床の破片が、壁まで吹き飛んだ。

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

「しつこい奴だ」

有達に避けられても、ボスモンスターはなおも奏良に襲いかかる。

奏良はそれを読んでいたように、後ろに跳躍してかわした。

そのタイミングで、有は深々とため息をついて言う。

梨よ、頼む。力を貸してほしい。梨の特殊スキルなら、あのボスモンスターを倒せるはずだ」

「ーーなっ!」

「……っ」

有の靜かな決意を込めた聲。

付け加えられた言葉に込められたに、奏良が戦慄して、梨は怯えたように花音の背後に隠れる。

梨ちゃん、大丈夫だよ」

「花音、さん」

「花音でいいよ。一緒に頑張ろう」

「……うん」

後ろを振り返った花音が勵ますように手を差しべると、梨は恐る恐るその手を取る。

「……あの、銃の弾、借りてもいい?」

「あ、ああ」

ぎこちなく近づいてきた梨の頼みに、奏良は上った聲で承諾した。

『……仮想概念(アポカリウス)』

梨は自の特殊スキルーー仮想概念(アポカリウス)のスキルを使い、弾に自のスキルの力を込めていった。

弾の外殻が次々と変していく。

「奏良くん。上手くいくか、分からないけれど、弾に力を込めてみた」

梨、ありがとう」

奏良は、梨からけ取った弾丸を素早くリロードする。

「奏良よ、頼む」

「言われるまでもない」

有の指示に、ボスモンスターから距離を取った奏良は銃を構えた。

発砲音とともに、奏良の放った弾丸がボスモンスターへと向かう。

『グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

梨の特殊スキルが込められた弾は、ボスモンスターを貫通する。

その弾は彗星の如く、虹を纏う芒と化す。

絶え間なく弾丸が放たれるその景は、まさに流星群のような輝きを見せる。

あれだけ減らなかったボスモンスターのHPが、目に見えて減っていく。

「何だ、この弾は……! すごい!」

奏良はボスモンスターに向かって、さらに何発もの銃弾を放つ。

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

奏良が放つ流星の弾を前に、ボスモンスターは為すもない。

やがて、闇を纏ったスケルトンの変異は、閃に塗り潰されて、斷末魔を上げながらこの世界から消えていった。

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