《兄と妹とVRMMOゲームと》第三十ニ話 魔天樓を見上げて④ ☆

紘と徹は、久しぶりに中學に通う梨を気遣って、一緒に並んで歩いていく。

梨の友人と待ち合わせしている駅に著いた紘達は、梨を連れ添って、足早に人込みの中を歩き、駅の電板の時刻に目をやった。

見れば、梨の友人が來る三分前だった。

「何とか間に合ったな」

ギリギリではあったが、とりあえず間に合ったことに、徹は安心する。

「すごい……」

久しぶりにれる朝方の駅の喧騒に、梨は息を呑み、驚きを滲ませた。

やがて、待ち合わせの時間を告げるアナウンスが辺りに聞こえる。

「そろそろ、來る頃合いだな」

梨!」

徹がそう言った矢先、不意にの聲が聞こえた。

聲がした方向に振り向くと、しばかり離れたコンビニで、ポニーテールの梨達の姿を見とめて何気なく手を振っている。

梨達の元へと駆けよってきたが、らかな笑顔で言った。

梨、おはよう」

「おはよう……」

が気兼ねなく挨拶すると、梨は戸いながらも応える。

梨の友人、木花(きはな)小鳥(ことり)だ。

梨、無理はするなよな。何かあったら、すぐに攜帯端末で知らせろよ」

「……うん」

徹の配慮に、梨は小さく頷いた。

「まあ、問題ないだろうけれどな」

徹はそう言って空笑いを響かせると、ほんの一瞬、複雑そうな表を浮かべる。

心細そうな梨のもとまで歩み寄ると、紘は優しく微笑んだ。

梨、大丈夫だ」

「……うん」

梨は寂しげにそう口を開いた後、何かを訴えかけるように自分のに手を當てる。

そのタイミングで、小鳥は誇らしげに言った。

梨のお兄さん、心配しないで下さい。梨は、私達が絶対に守りますから」

「どうして、そこまでしてくれるの……?」

「えっ? そ、それはーー」

梨の指摘に目を見張り、息を呑んだ小鳥は、明確に言葉に詰まらせた後ーー

梨を守る。それが、私達に課せられた使命だからだよ」

に手を當てて穏やかな表を浮かべる。

まるで、それが當たり前のことのように、小鳥は告げたーー。

「使命?」

梨は不思議そうに小首を傾げる。

「ああ。二度と、梨を死なせるわけにはいかない。そのためなら、私は何でもする」

「お兄ちゃん」

紘ののこもった言葉。

だけど、ただ事実を紡いだだけの言葉。

梨の心を読み、その先を推測するようなけ答えに、梨は強い懐かしさを覚える。

私が困っていた時、苦しんでいた時、いつもお兄ちゃんが助けてくれた。

『あの力』を使って、守ってくれた。

否応なしに思い出す記憶を支えに、梨は紘を見上げる。

梨のことは、先生やクラスメイト達に『守ってくれるように頼んでいる』』

曖昧だった紘の言葉に與えられる的な形。

違和じることに、違和があるようなメタ構造を持った疑問。

不可解で不自然な現象。

それは紘の特殊スキル、『強制同調(エーテリオン)』によってもたらされたものだった。

今回は梨の話だったので、最初の頃に描いた梨のイラストを掲載しています。

こちらのイラストから、徐々に第一話に掲載しているイラストのじになりました。

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