《兄と妹とVRMMOゲームと》第三十七話 星空のプラネット②

「俺を、『アルティメット・ハーヴェスト』に加させる?」

予想外な紘の申し出に、をかけて揺した。

くんは渡さないよ! くんは、私達の大切な仲間だもの!」

紘のいを、花音は眥(まなじり)を吊り上げて強く強く否定する。

「ああ。は、俺達の大切な友人で仲間だ。他のギルドに渡すわけにはいかない」

梨を守ることが僕の役目だ」

強い言葉で遮った花音の言葉を追隨するように、有と奏良は毅然と言い切った。

「椎音紘くん、君の真意が見えてこない。それに、くんはもう『キャスケット』の一員だ」

くんのことは、風さん達から頼まれているからね」

有の父親と母親も、紘の提案を拒む。

はそんな有達に苦笑すると、ため息とともにこう切り出した。

「悪いけれど、俺はもう『キャスケット』の一員だし、辭めるつもりもない」

達の否定的な意見に、紘は靜かに目を伏せる。

「なら、これからも君を監視するまでだ。梨を守る。そのためなら、私は何でもする」

驚愕する達をよそに、紘はどうしようもなく期待に満ちた表で、ただ事実だけを口にした。

切羽詰まった表を浮かべる達をよそに、紘は先を見據えるように続ける。

「この城下町の冒険者ギルドに行けば、君達の新たな仲間に會えるはずだ」

「そのことまで知っているのか?」

紘の靜かな決意を込めた聲。

付け加えられた言葉に込められたに、達は戦慄した。

「冒険者ギルドに行くかは、君達で決めるといい」

いつの間にか、パレードの方まで移していた紘に、はすがるような思いで尋ねる。

「なら、俺達が冒険者ギルドに寄らずに、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドに向かった場合、どうなるんだ?」

「その場合、どうなるかは君達次第だ」

紘は去り際に意味深な臺詞を殘して、パレードの向こうへと消えていった。

どういうことなんだろう?

の脳裏に浮かぶのは、『強制同調(エーテリオン)』という非現実的な力のことだった。

梨の記憶では、先を見據え、未來へと導く力だという解釈になっている。

だが、それだけではないような気がした。

が思い悩んでいると、有は釈然としない態度で、パレードの方へと視線を向ける。

、奏良、父さん、母さん、妹よ。このまま、冒険者ギルドに寄らずに、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドに向かうぞ」

「冒険者ギルドには寄らないのか?」

探りをれるような有の言葉に、の顔が強張った。

「椎音紘の思い通りに、事が進むのは癪(しゃく)だからな」

「うん」

「そうだね」

梨のギルド兼任の要請もしていないからな」

有の方針に、花音と有の母親が頷き、奏良は渋い顔で承諾する。

目的地が定まった達は、王都にそびえる白亜の塔ーー『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドホームへと向かったのだった。

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